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VTR-TMは相棒と言えるバイク

さらに深化したVTR -TM

VTRは乗り始めてから7年が経ち、工業製品から価値ある道具としてのVTR-TMへと深化する過程では、様々な経験ができてライダーとして少しはスキルアップできたように思います。

コロナ禍で思うように出かけることができずにいましたが、VTR-TMも徐々に深化を続けていました。以前に記事を寄せさせてもらった時と見た目にはさほど変わりはないのですが、積載してもしなくても程よい足回りを目指してセッティングを行ったり、一日中走っても疲れにくい姿勢になるようポジションを変更するなど、より楽しめるVTR-TMとして仕上がったなという実感を得られています。

NWJCの高田さんのボンネビルT100とツーリング

去年の秋には、NWJCの高田さんのタンデム仕様のボンネビルT100とVTR-TMでツーリングに行くことができました。日帰りですが、最近VTR-TMでは積載して走ることがなかったので、私はキャンプ道具をたっぷり積んで、高田さんは今回タンデムだったので二人分の荷物と、景色の良いところでコーヒータイムを楽しめるような道具を一式積んでのツーリングとなりました。

特に場所を決めずに方向だけ決めてのスタートでしたが、先行する高田さんは国道を逸れて、先があるのかなと思うような道へ・・・・。

車で通るなら細く感じるような道でしたが、バイクならぜんぜん問題なく、車両の通行が全くない道は紅葉の眺めも良く、観光地の人気スポットと違った自然の風景を楽しみながらの時間はちょっと他にないぜいたくな時間だと思いました。

遅めの出発だったので、一度広い道に抜けてどこかでお昼を食べようかと話をしていましたが、お店に着いてみると順番待ちで人混みができていて、その光景を見てすっかり非日常から日常へ戻ったような気分です。それなら、ということで道を引き返し、眺めの良い場所でテーブルや椅子を取り出し、紅葉を楽しみながらの昼食を楽しみました。

高田さんとパッセンジャーのI・Tさんはこんな風に長年ツーリングを楽しんで来られたようで、高田さんは「こういうのは僕のお決まりのパターンだね!」と笑って話していました。話題のスポットを訪れるという楽しみもあると思いますが、こんな「とっておき」の場所を見つけるのは自分だけの場所みたいな気分で大好きです。

SNSやツーリングマップなどでいろんなスポットが拡散されているので、それを目的地として走りに行くということも以前は多かったのですが、「人は何とも思わないかもしれないけど、私は好きだな」という景色をいくつも見つけていて、そんな場所はあんまり人に知られず静かに楽しみたいなと思いますね。

その後は来た道を引き返し、このまま戻ろうかと話して走っていましたが、行きの時と同じように脇道に入っていく高田さん。止まって写真でも撮るのかなと思って先を見るとその先は…林道。速度を上げて走っていくわけでもないので後ろを同じように着いていくと山の中の紅葉もきれいで、木々の間からスッと入ってくる光に透けた葉の鮮やかさは何とも言えません。

そうやって景色を楽しみながらも路面は少し大きな凸凹もあるオフロードで、バランスをとってバイクを操ることも目一杯楽しむことができました。高田さんも私もロードモデルのバイクですが、コンディションを整えたバイクと基本があればこんな感じで無理なく楽しめるんだよね、という、NWJCツーリングマスター(TM)に共通する「あいまいさ」と「おおらかさ」を改めて感じられるツーリングとなりました。

経験を生かして自分に合ったスタイルへ

以前のVTR-TMではこういった林道を何度か走るたびに扱いにくいと感じることもあり、ハンドルやタイヤなどを自分の使い方に合ったものへ変更しています。ノーマルのVTRはハンドルの位置が遠く、スペーサーを挟んでポジションを変更していましたが、それでもハンドルは若干遠く感じ、ぬかるんだ道などではコントロールしにくい印象でした。

間違って入ってしまった道を抜ける際、少し怖い思いをした経験や、長距離でもより快適に楽しめるよう肉厚のあるコンフォートシートへ変更したこともあり、よりアップに、より手前になるようハンドル自体を交換しています。

また、タイヤに関しては、以前は安定感とフィーリングの良いメッツラー製のロード向きタイヤを履いていましたが、タイヤの山がもう無くなったこともあり、CB250R TMと同様のブロックタイヤへ変更しています。

ロードモデルのバイクにブロックタイヤというのは見た目の奇抜さを狙ったものではなく、自分の使い方としてどんなバイクに乗っていても気になる道には入ってみたいという気持ちからのセレクトでした。

ブロックタイヤだと安定感がないんじゃないかとか、未舗装路以外ではいまいちなのでは?という心配もなく、CB250R TMをお借りして楽しんだ時と同様の軽快さと安定感がVTR-TMでも感じられて満足です

じっくりと付き合ってみないと分からない

今でこそ長距離も楽々な、私のツーリングの相棒といえるようなVTR-TMですが、乗り始めた頃を思い出すと、路面の段差での衝撃が大きく感じて長く走るのがつらかったり、ハンドルが遠くて肩や腰に疲れを感じたりといった事が多く、ちょっと遠出すると疲れも大きかったように思います。それでも乗れていたのは初めてのバイクで新鮮な気持ちがあったからでしょうか。

その時の販売店では「VTRって結局エントリーモデルって位置づけですから」「バイクって疲れとかを耐えて乗らないと」という感じだったので、そのままだったら今のようにバイクを楽しんでいなかっただろうと思います。

私の場合はNWJCのHP記事でVTR、VTR-Fを長距離ツーリング、旅仕様として楽しんでいたり、エンジンコンディションを整えるメンテナンスについて書かれているのをみて、実際に試乗することができてその違いを感じ、もっと楽しめるんじゃないか?と感じることができたのが良いきっかけでした。

私は自分の車両のことを自分でも理解していきたいと思ったので、生意気にも足回りのセッティングなどについてはアドバイスを頂きつつも全部お任せにせずに何度も変更して試走を繰り返してきました。

おかげで写真を見返しても、この開田高原や能登半島の写真はいつのだったっけ?と思うくらい同じ場所で撮っていますね。

やり始めた頃は、変更してみて違いが出ることは分かっても、どんなのが良い設定なのか、どんなフィーリングになると心地よく走れるのかが掴めませんでしたが、NWJCでTM仕様のいろんなバイクをお借りして乗ってみることで相対的にVTRの特徴を感じられたり、NWJC独自のトレッキングごっこを経験したことで、路面の状態やスロットルを開けて駆動が掛かる瞬間の感覚、バイクの動きがどんなふうになるのかといった事がイメージできるようになってきて、段々と理解を高めて行くことができたように思います。

ようやく、自分の中でもいいフィーリングを見つけられたと思えるようになった頃、ツーリングやキャンプでご一緒することもある大阪のバイク屋さんRBRのチブカさんに私のVTR-TMを試乗して頂く機会があり、様々な路面でも不安なく楽しめるバイクに仕上がっている、と評価して頂けて、自分のバイクに対する感性に自信をもてるようにもなってきました。
ただ数値だけを聞いて変更しただけだったら、今ほど車両のことを感じ取れなかったかもしれません。

バイク屋RBR【VTR NWJCツーリングマスター試乗記】

しかしながら、楽しい時ばかりでもなくて、一時履いていたタイヤのフィーリングの悪さが違和感の原因と気づくことができず、走りに行くたび何か分からない心地悪さを感じて段々と楽しめなくなっていき、あきらめて手放そうとしたこともありました。

ある意味、これはダメだという決定的な欠点があったほうが原因に気づけたのかもしれないと思いますが、決定的じゃない違和感であっても、徐々に、走る度に、確実に愛着をなくしていく事があるのに気づけたのは良かったです。

楽しい時間も凹むようなことを何度も経験して、ようやくVTRってこんなバイクなんだ、というのが分かった気がしますが、高田さんが言うところの「実体験に基づいて」というのはこうした積み重ねなのかなと思います。

フィールドを広げてくれたよき相棒

趣味の道具の世界は、私の携わっている楽器の世界でもそうなんですが、「何を買うか迷ってる時が一番たのしいよね」と言われることも多いように思います。でも、じっくりと付き合っていく中で道具の扱い方を理解して、調整などを行い使い方にマッチさせていく事で、楽しく感じられる瞬間は増えていくように思います。

VTR は乗り出してからはもちろん、VTR-TM と言える仕様になってからはさらに楽しさが増して、走るほどにバイクに乗ってみて良かったと思います。

そんな風に楽しんできたVTR-TMはいろんな景色を見せてくれたり、インドア派だった自分の行動範囲を思いっきり広げてくれたり、自分自身の価値観や日々を豊かにしてくれた、まさによき相棒です。

もっと楽しみたいという気持ちがあったのですが、昨年カブ110 NWJCコンプリートを迎えることを決めたのを機に、楽しんでくれる方にお譲りすることに決めました。

カブに乗ってフィールドを広げてもっと楽しみたい気持ちが強いことと、維持するためだけに乗ることが増えるのはつらいという気持ちがあり、また、モノとして持っておくより使われる道具であるべきと考えているので、次のオーナーさんの元でまたたくさん楽しんでもらえたらと思っています。

感傷的なことも書いてしまいましたが、こんな一バイク好きのレポートでも、今VTRに乗っていたりこれから乗ろうとしている方の目に留まって、より楽しむことができるきっかけのひとつにでもなれたら幸いです。

このバイクに出会えてこんなに楽しんで来れた事と、バイクをより楽しむ提案とメンテナンスをして頂いたお店や、楽しむためのアドバイスをして下さる方々など、バイクライフを楽しめる環境に感謝しつつ、今年も目いっぱいバイクを楽しみたいと思います。

レポート S・O

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