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SL230TMを永く乗り続けるために 前編

昨年にVTR-TMを手放しSL230TM一台となりましたが、今年も変わらずバイクを楽しんでいます。

道にまだ雪の残っていているような路面でも無茶をしなければ走れる持て余すことのない車格や、2バルブエンジンの扱いやすい特性は、20年以上を経た旧い型のバイクであっても乗り続けたいと思えるものです。

今年は例年に比べ雪が多く降り、どこへ行っても長く雪が残っていたため、意図せずとも雪遊びになってしまう日も多かったですが、経験を重ね、扱い慣れてきたSL230TMであれば童心に帰ったような気持ちで楽しんで走ることができました。

永く楽しむためにエンジンOHを

そんな風に楽しんでいたSL230TMでしたが、「SL230も製造から20年以上経つから、部品も少なくなっているから今のうちにエンジンの上をオーバーホールして永く楽しめるようパリッと仕上げて」という高田さん自身が楽しむためのSL230TMはすでにパーツを確保しての提案であり、いわゆる「腰上オーバーホール」をすることにしました。

…いえ、そうは言っても、経験の浅い私には、腰上って?どこからどこまで?具体的に何をするのかはいまいちピンと来ていませんでした。

いざ作業当日となったら、車体からエンジンを下ろすのを眺めながら、なるほどーと写真を撮ったり、エンジンのヘッドカバーから着々と分解されていくのを見てこれは何ですか?これはどんな動きをするんですか?とお邪魔する役でしたが、その都度詳しく説明していただきました。

マニュアルやネット上の写真や動画などで見るのと違い、説明に沿って実際のエンジンの内部を見ると、いつも使っているバイクがどんな動きをしていてというのがイメージできるような気がしました。

もちろん私はメカニックではなくストリートで楽しむライダーですから、これで自分でもOH できるようになるといった事ではありませんが、これまでの整備でサスペンションやブレーキなど構造を知ることでよりバイクを楽しむことができた経験から、各部がどんなふうに動いているのかイメージできるということは走ることを楽しむ上でも大事なことだと思います。

エンジンの中は、おおむね奇麗だったようですが、よく見るとカムシャフト、ロッカーアームシャフトには段付きができるほどの摩耗があり、急遽このあたりの部品も交換となりました。

全体的に劣化している部品の交換や付着しているカーボン除去ほか、バルブシートカッターという車種専用の特殊工具を使ってのバルブシートの当たり面の研磨も行ってもらえました。

今回は多くの部品を交換していますが、各部品は純正の新品パーツで特殊なパーツを使った訳でもなく、ボアアップもしていませんが、部品を削って調整していくという不可逆的な調整は一歩間違えば台無しにしてしまう可能性もあると思います。

気に入らなければ外せるようなボルトオンパーツの取り付けとは異なり、作業の良し悪しを判断できるような経験がなければ難しい調整だと感じました。

バイクにも楽器にも通ずる部分がある

各部の清掃や調整が終わり、エンジン全体の組み上げを行っていき、最後にバルブクリアランスを調整して車体に組み込みました。こうしてエンジン全体で見るとバルブクリアランスの調整は最後の最後で、高田さんが普段から最低限の調整と言っていることも理解できます。

私が仕事で行っている楽器の調整などでもそうですが、アジャスターがついている部分というのは使っていくうちに狂いが出る部分で、定期的にチェックし調整が必要であることが大半です。

バルブクリアランスは燃料がどれだけ入って、どれだけ排気されるかの度合いを調整するわけですから、楽器で言えば基本の音の調律をしましょうというのに近いレベルの話なのでは?と感じました。

狂った音で音楽を楽しむのは難しいと思いますし、バイクにおいてもちゃんと楽しむためにはエンジンの「調律」は大事だと思います。

OH後のフィーリングの違い

いざエンジンをかけてみると、排気音はかなり太い音になっているのが分かりました。今まではエンジン内からもカシャカシャとした細かなノイズが鳴っていましたが、余計な音がしなくなり全体的には静かです。

少しスロットルを開けると歯切れの良い音で、エンジン内で一発一発点火し燃料が燃えてるんだなというのがよく分かります。

走らせてみると力強く、路面にしっかり駆動力が伝わっている感じがして、OH前は不調ではなかったものの経年と走行によるヘタリがある状態だったことを実感しました。

スロットルに対しての反応が良くなり、小さなカーブの切り返しはより軽快に曲がれること、安定感が増していてUターンなど低速時ではゆっくり回れるようになったのが印象的でした。

この段階ではバルブクリアランスの設定も1000kmの慣らしを行う前提で設定していて、まだ「とりあえず」の状態でこれだけ違うというのが驚きでしたし、ノーマルの状態できちんと基本性能を発揮させSL230TMの良さを引出せることが大事だというのが分かりました。

慣らしが終わってから感じたフィーリングの違い、こういった得難い経験から感じたことについてもまた書いてみたいと思います。

レポート S・O

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