バイク屋の備忘録

SR500ツーリングマスター(TM)で定番の西を楽しむ

3月と4月は、いつものメンバーからの要望もあり、エンジンのリフレッシュメンテナンスと積載力をUPしてトータルバランスを整えたSL230ツーリングマスター(TM)2024仕様の実走チェックも兼ねて定番の西を駆けてきた。

5月は、旧き良き時代の名残を持つ空冷ボンネビルT100-2014仕様で春爛漫の木曽路を悠々と駆けて、空冷ボンネビルT100ならではの心地よい走りで素敵なバイクライフを満喫する事が出来た。

6月は、バイク屋のおっさんライダー自らが自由気ままにフィールドを拡げてバイク旅を楽しむために企画したSR500をベースとしたSR500ツーリングマスター(以下TM)を深化させながら4年が過ぎて、SR500で定番の西を楽しむのは昨年の10月中旬以来である。

第2土曜日から2泊3日でSR500TMを楽しむために夜明けと共に走り始めた。
空冷単気筒のSR500は、一般道であれば2000回転も回っていればビッグシングルならではの蹴り出すような心地よい鼓動感と加速感で、まさに速さより心地よさで走り続けることが楽しめる。

空模様は快晴とドシャ降りの日替わりで、雨の日は300Km程度の距離で翌日に備えて早々と走るのを止め、定番ルートの走行距離は約1,700Kmとなり、SR500TMを人車一体で存分に愉しんできた。

4月にはSL230TMで定番の西を走ったときは春爛漫の景色であったが、同じポイントで全く別の景色となっているのも日本の四季の彩を楽しむ定番ルートならではの面白さでもあると走るたびに思う。

2日目のドシャ降りの雨の日は約300Kmを走り、ドラムブレーキもずぶ濡れになると少し早いペースでのブレーキングでは、まるで旧型のABSが装備されたかのようでジャダーが激しく、それはそれで面白かったが、ドシャ降りでは立ち止まって道草を楽しむ事もできず早々と走ることを止めた。

ドシャ降りの雨の中では、今回新たにサイズ変更したスクリーンは防風雨効果が高く、悪天候の中を走ることもあるバイク旅には必須である事を改めて実感できた。油温計は防水が甘く中は水滴がいっぱい。

バイク旅では日本神話ゆかりの地を訪ねるのも欠かせない楽しみであり、古事記ではイザナミノミコトが葬られたのは比婆山であり、その麓にある久米神社(熊野神社)へ田園風景を楽しむ道すがら立ち寄る事にした。2015年10月に村田さんと共にGold Wing 1800で訪ねたとき以来か。

日本書紀ではイザナミノミコトが葬られたのは熊野市にある花の窟神社となっているが、日本人のルーツである日本神話は神のみが知る神秘でもあり、唯物による実証よりも唯心による想像力を膨らませて楽しむのがオッサン流である。

SR500の魅力を引き出してバイク旅を楽しむ

ヤマハ・SR500(400)は時代に流されることなく、40数年守り続けた不変性はバイクと人の間に多くの電子制御装置などが介在することも無く、スペック云々よりも操る人の感性を第一としたYamaha Madeの素性の良さであったように思う。

SR500(400)は、ペースが上がると曲がらない、止まらないが直感的に判りやすく、物足りないところは人車一体で操る面白さと楽しさがライダーの感性を磨く。そんなバイク本来の面白さに気づかせてくれる素朴な乗り味が魅力のMade In Japanのよき時代の名車である。

SRのカスタムはカフェスタイルが一般的のようだが、普段使いからバイク旅まで気負うことなく自由気ままにフィールドを拡げて楽しむ為に「乗り続けないと判らないこと」「乗り続けてはじめて解かること」などをおっさんライダー自らが実体験することから旅バイクとしてのSR500ツーリングマスター(TM)企画が始まった。

SRによる旅仕様は一般的ではないように思われているようだが、生産が終了して20数年が経過したSR500の最終型を、バイク屋自らの実体験に基づいた独自の発想により、速さより心地よさ・何かに特化しない曖昧さ・和洋折衷のような大らかさをコンセプトとして、チョイ乗りから積載状態でも自由気ままにフィールドを拡げてバイク旅も楽しめる、素敵なバイクライフを満喫するためにSR500ツーリングマスター(TM)として蘇らせることができたのは嬉しい限りである。

SR500TMとしての使い勝手と実力は、元SRのカスタム屋だったRBRのオヤジがSR500TMを駆ってCB400ss-TMと共にキャンプに出かけて、キャンプ道具など満載状態での安定性や操縦性など、SRの懐の深さと旅バイクとしての実力は意外であり只々驚きであったとのこと。それも伝えておきたいと思う。

RBR公式サイト『 SR500TMとCB400SS-TMでキャンプツーリング

SR500でバイク旅を楽しむための理想と現実のギャップ

SR500(400)の積載に関する記事では積み込めば何とかなるようだが、積載のために着座スペースを犠牲にすることや、確実な固定ができない不安定な状態はとても危険な事であり、そんな状態のSRで日帰りは勿論のこと、何日も何百キロも走り続けるバイク旅を気負う事もなく本当に楽しめるだろうか。

コロナ特需によるバイクブームとアウトドアブームを掛け合わせて、キャンプ道具を積み込んでキャンプツーリングをイメージさせて所有欲をあおる提灯記事を多く見たが、適当な積載とキャンプ場でのテントの設営と本当に積んできたのかと思うような大型の焚き火台や装備の絵ばかりで、積載状態での道中の絵が無いのは何故だろう、積載状態での操縦性や安定性について触れた記事がほとんど無いのは何故か。

SR500によるバイク旅ではキャンプ等も楽しみ寒い季節には防寒の為の装備など、積載量が増えるのは当然のこととなり、積載状態では直進安定性は悪くコーナーリングも軽快な走りとは無縁となり、リアフェンダーあたりでグニャグニャとした違和感は剛性不足のようでもあり、バイク旅を楽しむためには未熟で未完成である事を実感することから始まった。

バイク旅に於ける積載状態での違和感や問題は、実体験などの裏づけがなければメンテナンスやモディファイによりトータルバランスを高めるよりも、今ある問題はボルトオンパーツに依存することで解決できるとした対応が多いようで、その結果は話の話となり「こんなものです」とか「基本設計が旧いから」とした煙に巻く対応となるのが実情のようである。

しかし、具体的な対策は可能であり、SR500ツーリングマスター(TM)は、メンテナンスやモディファイと共にバイク旅には必須の積載力を高める専用のマルチキャリアKitをはじめ防風雨効果の高い専用のスクリーン等の専用の機能パーツは、バイク屋自らがライダーとしての実体験に基づいた専用設計で、ハンドメイドによる受注生産と少ロット生産のMade In Japanである。

SRによるバイク旅では、エンジンコンディションが整っていることが前提で足回りも含めて耐荷重性を高めてトータルバランスを整えることは必須であり、ライダーの着座スペースを犠牲にすることなく70~100Lの積載量を確実に固定できて、操縦性と安定性が両立した心地よい走りを得ることが可能となる。

バイク屋自らの実体験に思う

乗って楽しむ事が大好きだったスタッフの明が鬼籍に入り6年が過ぎた。明とは理想と現実の隔たりを埋めるためのメンテナンスやモディファイ後の実走チェックや感覚的なこと等も二人で連携して行ってきたが、今ではそれもままならず業務の一環としてのチョイ乗り程度の試運転では用を足さないのが現実である。

乗り始めてから継続して愉しめることが前提の新たな企画や深化への提案はおっさんライダーが担当しているが、セッテイングやモディファイも含む仕様変更などについては、感覚的な事も含みいつものメンバーとの意見交換や、明と同様にバイクに乗る事が大好きなバイク屋RBRのオヤジによるライダー目線の実体験も貴重な意見として参考にしている。

バイクは人の関わる領域が広いほど操る悦びと充実感があるから、SR500TMは良き時代の素朴なアナログ感は色あせることもなく、大切に使い続けることで価値と価値観の違いにも気づき、時代の流れに埋もれることもなく輝いているのは何よりであると常々思うのである。

また、SR500TMを楽しむことで、持て余すこと無く使いこなせる排気量と車格のバイクにより、道具としての価値はスペック云々ではなく五感で知る事であると気づいた次第である。

バイクに乗らないバイク屋よりも、乗り続けているライダー諸兄の違和感や問題点などについての声は的を射ている場合も多く見受けられるのが実情であり、「こんなものです」とか「専門用語で煙に巻く」対応では理想と現実の隔たりを埋める事が出来ないのは当然のこと。

少子高齢化の日本ではライダーの平均年齢も55.5歳となり、メーカー出荷のSTDは工業製品としては完成品でも、道具としては未熟で未完成であり本来の良さを引き出す提案もなく、ライダーにそれらの情報を伝えることも無く、使い捨ての消費が主流の日本の二輪業界の台数至上主義や成果主義は相変わらずだが様々な問題が浮かび上がっているようでもある。

世の中は新しいモノがすべてに良しとした傾向にあるが、提灯記事により所有欲をあおり如何に売るかよりも、時代と共に夫々が歳を重ね価値観の変化や違いはもとより、流行り廃りに流されることも惑わされることも無く、自己顕示のための小道具でも無く、乗り始めてから如何に素敵なバイクライフを満喫できるかが最も求められていることのように思うのである。

SR500TM等のNWJCツーリングマスターシリーズで定番の西などを楽しむ事は年中行事であり、SL230TM・VTR-TM・セロー250TM・CB400ss-TM・CRF250-TM・CB250-TMなど、よき時代のバイクを駆って自由気ままにフィールドを拡げてバイク旅を楽しむために企画して深化させているNWJCツーリングマスターは、本当にフル積載でバイク旅が楽しめるのか?と、意外に思われる機種やツーリングモデルとして販売されたが積載状態になると安定感や操縦性に不安を覚える機種も含んでいますが、バイク屋のおっさんライダーからの素敵なバイクライフへの提案であり参考になればと思う次第である。

バイク屋自らの実体験に基づいたメンテナンスやモディファイにより、Goodコンディションに整えることが如何に楽しめるかであり、10数年前に新しいモノがすべてに良いとした提案を辞めた時代遅れのバイク屋のおっさんライダーからの提案が少しでも役立てばと思う次第である。

この記事の車輌・パッケージ(仕様が異なる場合があります)

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