バイク屋の備忘録

リターンライダーS・Yさん その4 空冷ボンネビルT100

春爛漫の木曽路をCB400SS-TM3台で楽しむ予定だった27年ぶりのリターンライダーS・Yさんと飛騨のアツシは、長期予報によると天候不順のためせっかくのツーリングが悪天候ではと早々に仕切り直しを決めた。

しかし、当日の天候は雲ひとつ無い青空が広がる好天となった。

おっさんライダーは、当日が定休日だから曇りのち晴れとの天気だったのでCB400SS-TMからカブ110NWJCコンプリートType3に乗り換えて予定通り木曽路へ向かった。

当日は雲ひとつ無い好天に恵まれ、2年連続でカブNWJC-Type3を駆って春爛漫の木曽路を存分に楽しむ事ができた。

あんな好天になるとはと、後悔先に立たずとはこのことかと共に残念がられていた。近々CB400SS-TMを駆って仕切り直しツーリングを楽しみたいとのこと、日程は未定だが早朝から走り始めて木曽路を経由して、昼は飛騨方面でのんびりとDayキャンプを楽しむ欲張りツーリングはどうだろう。 

S・Yさんは、仕事もそろそろお役御免の時期を迎えて、バイクライフを存分に楽しみたくCB400SS-TMをメインに空白の時間を埋めるかのように、おっさんライダーと同じトライアンフ 空冷ボンネビルT100に乗りたいとのこと。その発端はKさんのスクランブラー900を試乗させてもらったことのようである。

いつものメンバーは、空冷スクランブラーに乗っている方が多く、長年乗り続けてよき相棒として走行距離が8万~10万キロ以上となっている。ボンネT100で走行距離が少ない車両でも3万~5万キロは越えていて、子育てや親の介護に仕事などなど、最近あまり乗れないが手放すつもりはまったく無いとのこと。

皆さん其々に事情がおありだが、よき相棒に愛着を持たれているのは何よりで嬉しい限りである。

初期のボンネビル800のT100に乗られている方々も20年を越えてよき相棒として乗り続けているから、走行距離の短い車両にはまずお目にかかることは無く、他もあたって一緒に探そうかと伝えた。

上手く見つかれば、その後の事は何なりとお任せあれである。

極上の空冷ボンネビルT100 走行距離は1,175Km

しばらくして、走行距離が1,175Kmの極上ボンネビルT100が見つかったとのことで「後の事は頼めるかな~?」と連絡が入り「いつでも どうぞ」と返した。走行距離も少なく900ccの排気量による走りは納得できるものであると思い込んでいるだろうなと想像すると、悪戯をしたくなるような笑いがこみ上げてくる。

それは、極上であるとした思い込みからGoodコンディションに整えるメンテナンスを施して本来の走りを実感したとき、そのギャップにどんな反応があるのかと思うと楽しみだが、まずは何から始まるのか。

最初の要望は、STDのステップではチェンジペダルやブレーキペダルの位置関係に違和感があり、何とかならないかなと相談があった。

NWJCオリジナルのステップは今現在欠品で近々出来上がるから少し待つよう伝えたのだが、歳を重ねても性格は昔のままだから、出来上がるまで旧型のオリジナルステップを組み込むことにした。ライダーならではの実体験による違和感は当然の事だが、バイクに乗らないバイクショップやスタッフには解らない事だが「こんなものです」ともっともらしい対応だけでは何ら解決しないのが現実である。

走行距離1,400Kmのコンディションは本当にGoodなのか?

とりあえずNWJCオリジナルのステップに変更したとき各部をチェックしてみると、案の定といえるエンジンコンディションのようだが、S・Yさんの「力もありGood!!」としたインプレには、悪ガキのいたずら心がむくむくと膨れ上がるようで思わず笑みが漏れる。

エンジンコンディションについて、「この感じは基準値外のエンジン音のようだが開けてみてからのお楽しみかな」と伝えると、年式は旧いが走行距離は1,400Kmとなり消耗しているはずの無い状態に問題があるとは思えない。このおっさんは何を云っているのかな、といった感じの思考停止状態は実に面白い。

まだ新しい状態のエンジンコンディションに問題があるはずが無いと思いたいのは判るが、新しいものがすべてに良い訳ではないと常々伝えている。新しいのに何故だろうと中々理解できないのも当然である。

実体験に基づく独自のメンテナンスにより、Goodコンディションへの深化を提案するか、「こんなものです」とした対応に終始するかは、「実」の価値か「虚」の価値観の違いでもあるように思う。

測定値を見れば一目瞭然だが、実体験がないと理解できないことでもあり、バルブクリアランスの調整など必要はなく、初回点検や乗り続けての車検ですべてGood!となるのも世間一般では当然のようだが、乗り始めて本来の良さを発揮させて楽しむためには不可欠のメンテナンスがあることを伝えておきたい。

でも、気づかず知らなければ何ら問題ではない。それは、全てにイメージが最優先される成果主義や台数至上主義の業界の姿のように思えるのは、おっさんライダーだけではないだろう。

高級ブランドとされる外国車でも旧い車両は現役で目にするが、それ以降の車両は目にする機会は激減して、最新型ばかりで中間がスッポリと抜け落ちているのは何故なのか、要考察で何が見えてくるか。

売るがための提灯記事では、何だかんだと褒めて所有欲を煽る事ばかりだが、個人的に所有することを想えば褒めることばかりではないはず。

しかし、借り物バイクによるインプレでは本当の事が言えず、次も借り物でインプレをするためにはやむを得ないのが現実のよう。そんなインプレに違和感を覚えるのは当然の事と思うのはごく少数派となっているが、拝金拝物主義では精神性が希薄になるのは自然の流れか。

走行距離が延びて数万キロとなれば旧いから「こんなものです」が当然となり、新しいから何ら問題など無い、としたあり方は今も昔も何ら変わらない。
Goodコンディションを求めるライダーにとって「こんなものです」は、天敵の呪文のようである。

海外のメディア系では実際に購入した車両によるインプレが大半のようで、問題点は明確に公開している。空冷スクランブラー900に関して、海外メディア系のインプレが紹介されたときは、散々こき下ろした内容だったが、メーカー出荷状態の車両では正しい情報であり、的を射た内容として理解できた。

極上空冷ボンネビルT100のメンテナンス

S・Yさんから極上のT100にメンテナンスとは違和感を覚えるが、すべてお任せとのことで依頼を受けた。

まずはエンジンコンディションを整えることから始めることにした。走行距離が1,400Kmで消耗しているはずの無いエンジンではあるが、S・Yさんの期待を裏切るようで申し訳ないが、測定値はすべて基準外であった。

バルブクリアランスを整えて、キャブレターは長く眠っていた関係でJet類に腐食もあり新しいモノに交換して各部を調整して全体が大雑把に整い、また1台の空冷ボンネビルが蘇る事は嬉しい限りである。

空冷モダンクラシック系は大体1万キロを越えたあたりからエンジンが軽くなり本来のアタリが出てくる。何コレ何で?といような本来の良さを発揮させるNWJC2014仕様へのメンテナンスメニューにより、その変化と深化を織り交ぜて素敵なバイクライフを存分に楽しんでいただきたいと思う次第です。

S・Yさんからメンテナンス後のレポートが届きました

4月に予定していたCB400SS-TM3台での木曽路ツーリングは、天候不順の予報で仕切り直しとなった。

その当日、約1名はカブに乗ってしだれ桜を前に、わざわざ「朝ごはん」とタイトルをつけてパンにコーヒーをいれる準備している写真が送られてきた。してやられた感いっぱいですね。

暖かくなった3月、「春みっけ」と称し、単気筒空冷ビッグシングルCB400-TMで心地よい走りを楽しんで、知多半島を巡ってからはや2ヶ月が経とうとしている。

そんなことを思い出しながらノースウイングJCを訪問した際、車検で入庫していたトライアンフ・スクランブラー900を持ち主のKさんから試乗させていただく機会を得ました。

率直に感じたのは、「なんてスムーズ、扱いやすい」そのうえ本来のネイキッドバイク感、田舎道の似合う素朴なバイクって感じでした。ここで欲が出ました。(笑)

ほしい。乗りたい。それもインジェクションではなくキャブの空冷が。メーターもデジタルメーターではなくアナログメーターが。すぐさま、購入を検討。

ノースウイングJCに手持ちのトライアンフボンネビルがあるかを確認したが、あいにく現在は在庫無し。手放す人は皆無です。と言われた。

そもそも空冷が販売終了となってから10年以上経っており直ぐってわけにはいかないらしい。(>o<)

ノースウイングJCさんの協力、助言をもとに探してみました。

そしたらたまたま、2007年式、空冷ボンネビル、キャブ車でアナログメーター、走行距離なんと1,175キロ。購入して右側に転倒、それから倉庫に保管のままだったようです(右ミラーと右マフラーに少々キズ)。もちろん購入しました。即。(笑)

年式は古いが走行距離からいってメーカー出荷状態に近いほぼほぼ新車状態。走らせてみても当然トルク感もあるしグッドコンディションに感じた。でもステップには違和感があり道路状況、交通状況等に併せて頻繁に操作するギアチェンジ、リアブレーキのために早々に対策してもらった。ここで頭をよぎったことがある。 

CB400SSのことである。ノースウイングJC独自メンテナンスで劇的に深化しTM化した事実は現実である。経験値からボンネビル本来の良さを引き出すには各部の調整は必須のよう。エンジン、足回り等のコンディションを整えないと本来の良さは出せない。価値ある道具にはならないとも言われている。

そこで、乗った感じを伝えた。以前に試乗させてもらったスクランブラー900とは少し違いアイドリングに一定感がなくガチャガチャ感はあるが良く走る。それにスムーズなライディングには少し遠いハンドルポジション。ブレーキングの際に少し前にずれる感じのシート、等々も伝えたところ、すべてお見通しであった。

分ったよ、すべておまかせ~って笑顔がかえってきた。あの笑顔、なんかおかしい、なんかある・・・・。

距離的にはほぼ新車だし、エンジン音だけでバルブクリアランスは最大値を超えていると言われてもよく分からない。普通、ほぼ新車状態で調整なんて大半は不必要ってことにならないだろうか、なりますよね~。

でもCB400SSで激変した事実がある、激変した事実を体感しているだけに、どうなるか楽しみでもあった。と言うことですべてお任せして、ノースウイングJC独自のオリジナルメンテナンスをお願いした。

バイクを預けた翌日、ウキウキしてノースウイングJCに向かった。「出来上がってるから、まず乗ってみて」と。

CB400SSの時と同じだ、何これ、別物だ、排気音は太く、ガチャガチャ感が消えた心地よいエンジン音、むちゃくちゃスムーズになりアイドリングも安定し、排気量がUPしたようなパワーもあり、走る!走る!

ライディングポジションもすべては実体験から生まれたオリジナルパーツによって修正されてベストマッチに変わっている。すごい。ただただすごい。工業製品としては完成品でも道具として未完成とはこのことか。

どこまでも走れる感が楽しみで仕方が無い。ここからが始まりでさらに深化していくそうだ。

CB400-TMとはまた違った楽しみが増えました。本当にありがとうございました。(^_^)

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