リターンライダー S・Yさんのバイクライフ その7 空冷ボンネビルT100の実力
空冷ボンネビルT100の実力に驚愕
ボンネビルは、エンジン調整を終えて、フロントの足回りを刷新したことで15年物の古くて硬化したタイヤでも、その良さというか潜在する実力が発揮されたことを体感出来てビックリというか驚愕の思いである。
コーナーへは何ら不安なく進入できるし、旋回中の安定感と操作性は意のままとなりまったくの別物となった。低速からストレスなく滑らかに加速するエンジンは立ち上がりも気持ちよく素晴らしい。
これが、エンジンのコンディションが整ったうえでの「タイヤより足回りによる接地率と剛性だよ」ってことか!
タイヤよりもタイヤを支えているサスペンションやステム周りの足回りなんて思いもしないし、また、普通はタイヤ交換のみで良くなった気がするだけで、本来の性能を発揮してないままにタイヤだよね。ってことになるのが一般的ですね。
タイヤを履き替えて
足回りの持つ機能と潜在する実力を発揮させるメンテナンスの重要性を実感したのち、タイヤを新しくするとどう変わるのか?タイヤ交換を終えて、早速その違いを体感する事と涼も求めて飛騨方面へ走らせた。
まずはR156で郡上方面へ北上した。夏休みもあってか4輪、2輪ともに多いが流れはスムーズ、60Km以上の速いペースで流れているが、アクセルはほとんど開けていない。
いや、ほんの少し開けるだけで流れにのって巡行して、絶好調のエンジンと究極の真円度と聞いたISA製のスプロケットによる滑らかさの相乗効果も実感することができた。
信号手前では低速ながら安定していてふらつくこともない。流れが途絶えたコーナーでは、軽快感が増してさらに路面状況に関係なく思うがままに曲がれて止まれる。
トライアンフ空冷ボンネビルT100は、クラシックな外観からは想像もできない、すごいバイクだったんだ。Kさんに試乗させて頂いたスクランブラーとはエンジンの鼓動感は違うが、それ以外は同じになったと確信した。
僕のおなじみ「せせらぎ街道」では、ストレート、コーナー共にピッタリ路面をとらえて、申し分のない安定感で通り抜けることができた。操作性のUPが半端ではなく、ボンネビルとの距離が一気に近づいて人車一体とはこのことかと、改めて実感できた。
ボルトオンパーツの交換だけでは得られない、NWJC独自のメンテナンスからくる安心感は、現象や症状への対処よりも根本原因を改善することで乗り手の満足度を最大限まで引き上げている。
疑似体験と実体験のギャップ
「ボンネビルがどんなバイクか、当時のレビューを参考にすると世間の一般常識が見えてくるから」と意味深な提案が高田さんからあり、空冷のボンネビルのレビューを探して読み漁ってみた。
すると雑誌のレビューのほとんどが、スタイル、デザイン、スペックから始まり、違和感のないポジション、高速でのスムーズなコーナリングなど感覚的な事へと、活字になるともっともらしく当たり障りのないことばかり。
最初に跨ったのがKさんのスクランブラー、確かに違和感のないポジションで高速もスムーズで何て扱いやすいバイクなんだろうと思った。これなら楽しめる。
車両を探してほしいと依頼すると、手放す人はまれで今は1台も無いと聞いて、色々と探して2007年式で走行距離1,200KmのボンネビルT100を運よく見つけた。車体としては、ほぼ新車状態で購入。
まずは跨って走らせて、最初にポジションには違和感を覚え、曲がっていかない事にも不安を感じてノースウイングJCさんに相談した。
ハンドルポジション、ステップ位置、シートポジションなど、ライダー目線で企画したNWJCオリジナルパーツで修正して、あっさりと違和感のないポジションを得ることができた。(笑)
その後、ほぼ新車状態の走行距離でありながらのエンジン調整に始まり、タイヤ交換よりも足回りの調整など、拘りのメンテナンスにより路面を滑るように走り、高速コーナーから九十九折れまで意のままに扱えることでストレスや気負うことも無くなり、まさに別物となり余裕が生まれて安心と安全を得ました。
低速の九十九折れではボンネビルT100が一回り小さく感じるほど扱いやすく変貌した。物から道具へと価値あるバイク、価値ある1台となり、多いに満足でありこれから大いに楽しめることを実感した。
空冷ボンネビルのレビューを読み漁ったことは良い意味で、従来の活字への思い込みによる疑似体験は、新しいからとか常識と思っていたことなど、目線や見方を変えてアプローチが違えば、そのバイク本来の良さを知らないままでいることが実感できた。
今回はそのことを痛感させられた思いでもあり、高田さんの昔から変わらない、いたずら好きの遊び心に救われた思いです。
価値観
今回、空冷ボンネビルT100のメンテナンスでは、新しいからすべてに良い訳ではないことを痛感して、そこで、ふっと思ったのですが、日本人には非常に長い年月をかけて築き上げてきた文化的ともいえる「価値観」があると思います。
例えば、簡単に捨ててもいい物にも、日本人にとっては単なる物ではなく、精神的に何かが宿っている物なのです。森羅万象には神が宿っている、八百万の神々という考え方ですね。また、「もの」という古語が意味するごとく「もの」は霊でもあり物でもあるという考え方もあるようです。
この表現は日本だけ?日本的?世界にも同様の考え方はあるのかな。でも、日常生活の中で使っているモノに何かが宿るという考えかたは日本特有だと思います。
日本では神道や仏教の建築や道具などが、非常に精巧な技術を用いて作られてきました。日常生活で使う物にも精巧な技術が使われて、そうしたモノづくりが日本の製造業の原点にもなっています。
「価値観」って出来上がるのに相当の時間がかかることと思います。
単に高額な物が、価格が高いという価値観もあるでしょうし、希少なものだから価値が高いという価値観もあるでしょう。また、特別な注意を払い気持ちを込めて工夫して作られた物にはそれだけの価値がある。
僕の1973年製ホンダ MT250エルシノアは30数年前にNWJC高田さんのメンテナンスと拘りで蘇り、現在もそのコンディションを保って新しさすら感じる。高田さんと共にMT250エルシノアを楽しんできた当時へも溯れるタイムマシーンであり、この喜びや満足感は「僕の価値観」なんです。
メンテナンスの過程に何らかの知恵と工夫を付加することで、ただの製品に特別な「品質」を与えることができれば、さらに良い物として価値のある道具となる瞬間です。
そうなんです。バイク屋としての経験と勘に何らかの知恵と工夫を加えたノースウイングJC独自のメンテナンスは単なる消耗品交換とは次元が違う。五感を通じてその価値を体感する喜びは満足感でもあります。
それぞれの流通の中で需要と供給により値段も決まってくるが、投機的にバイク、4輪を購入するのは、走って、曲がって、止まる、楽しさとは違うから、旧くても、新しくても、バイクと人車一体で満足いくまで楽しめる、バイクの価値を高めるって、この満足感ではないかな。
そんな自分なりの価値観とノースウイングJC独自のメンテナンスが相まって、価値ある道具であり良き相棒となったCB400ss-TMと空冷ボンネビルT100には大満足です。
何となく空を見上げて、この猛暑が過ぎたら色んな所へツーリングに行きたいなって思う今日この頃。
レポート S・Y
あとがき
S・Yさんの空冷ボンネビルT100もコンディションが整いその良さや魅力を実感されたことと思います。工業製品としては完成品でも道具としては未完成ですから、新しいだけではその良さを発揮できないことを目の当たりにされたことと思います。メンテナンスに関しては新しいのに何故かと一般的には違和感を覚えるような提案でも、無条件に受け入れて頂いたことは嬉しい限りです。
また、走行距離が延びた旧い車両の違和感や問題点は「こんなものです」ではなく、メンテナンスによりコンディションが整い心地よく楽しめる事もお伝えしたい事です。
売ることが最終目的であればバイク業界は消費の文化であり、提灯記事によるイメージだけでは新しいものがすべてに良しとした思考停止状態であり、疑似体験など仮想空間での自己満足はアバタもエクボと同様の情緒的な価値観であり、使いこなすことができないまま消費を繰り返すだけでは、素敵なバイクライフは夢のまた夢であると、バイク屋North Wing JCでは考えています。
バイクは、家電とは違うから乗り出してから機能的な価値を存分に発揮させるメンテナンスが必須ですが、売る事が最終目的の提灯記事は借り物でのレビューだからか、新しいから総てに良しとした当たり障りの無いことばかり。違和感には「こんなものです」とした対応が大半のようですが、バイクに乗るバイク屋は心地よく楽しむ為に違和感への対策や改善は当然のことです。
海外でのレビューでは借り物ではなくバイクを購入することにより、ありのままのレビューを公開しているからかユーザー側の捉え方には大きな違いがあるようで後悔なんてことは少ないのかも。
昔ながらのバイクらしいスタイルのT100・スクランブラー900・SR400.500・CB400ss・CB1100・W650等のモダンクラシックは、情緒的価値観と機能的価値を程よくバランスさせて、価値ある道具へと深化させ愛着を持てる1台に仕上げることが、素敵なバイクライフを提唱するバイク屋NWJCとしての役割であると常々思う次第です。
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