セロー250NWJC-TMとSTDセローの乗り比べで分ったこと
バイクは、メーカー出荷状態では工業製品として完成車だが、良き時間を楽しむための価値ある道具であり良き相棒としては未完成であり未熟だから、乗り始めてからが始まりとなる。
日に日に寒さが増しておっさんライダーには寒さが骨身に染みる季節となったが、防寒対策を万全にして定番の西へ乗り納めを楽しみたいと思っていたが、日本海側では雪が舞う天候のようで断念か・・・。
ダートフリークさんとのコラボによるセロー250快適ロングツーリング仕様制作プロジェクトによりセロー250ツーリング仕様が具体化し始めて、実走行では皆さんの協力を得てバイク旅必須の積載力に操縦性と安定性を高めたセロー250NWJCツーリングマスターへと深化させることを目指してきました。
通勤快速としての使い勝手から積載状態でのロングツーリングまで、ビギナーからベテランライダーまで様々な観点から皆の声も参考として深化させてきました。
今回は若かりし頃エンデューロやMXを楽しみ、最近はSL230TMやトライアンフ空冷スクランブラーNWJC2014仕様などで、速さより心地よさのバイクライフを楽しんでいる、Tさん改め「寺山さん」によるセロー250NWJCツーリングマスターとノーマル・セロー250を比較したレポートを紹介します。
セロー250NWJCツーリングマスターに乗る
ダートフリークさんとのコラボによるセロー250NWJCツーリングマスター(以下セロー250TM)がほぼ仕上がったと高田さんから聞き、みんなの声も聞いてみたいから通勤快速から積載状態でのツーリングなど、色々な条件下で走らせて感想を聞かせてほしいと依頼があり、お借りして楽しんできました。
会社の後輩で2008年式のセロー乗りがいて、一緒に約430kmの日帰りツーリングに行き、途中でセロー250TMからSTDセロー250に乗り変えて驚いたことも綴ってみたいと思います。
後輩の彼は全国チェーンの赤男爵の常連さんで、空冷ボンネビルのインジェクション仕様→CBR600R→KLX125→セロー250と乗り継ぎセローは特にお気に入りで一生乗り続けると言っています。
空冷ボンネもとても調子が良かったと聞いており、高田さんからトライアンフは組付け精度が甘く、ほとんどが本来の良さを発揮できていないから再調整が必要と聞いていたけど、彼の空冷ボンネは当たりだったのかな?と思っていました。
セロー250TMには途中で汲んだ水を32ℓほど積み込み、椅子とテーブルと調理器具を積載した状態で峠道や林道を走り、積載状態でもフワフワ感もなくカチッとした安定感で楽しい!疲れない!いつまでも乗っていたい!
同じ250でもXR Baja250とは全く違うSL230にも似た2バルブエンジンの乗り味と、積載状態でも軽快に走り続けられる本当の意味でのツーリング・セローを楽しんできました。
セロー250を乗り比べる
飛騨河合から白川郷へ抜ける天生峠でお互いのセロー250を交換してその違いにはビックリでした。
彼の車両は、スタート直後からエンジンの回転が重く走らない、一つ二つとコーナーを抜けて曲がらない事に気付き状況を頭の中で整理しながら走った。
サスペンションは前後共クタクタで踏ん張らないからフロントタイヤも接地感がなく、コーナーでは外へ膨らんでいってしまう。
アクセルのつきも悪く開度を多めにしないと反応しないからギクシャクした走りになり、リズムが乱れだんだん気持ち悪くなり吐き気さえ感じるくらいで、早く自分の車両に交換したいくらいだった。
しかし、彼には同じバイクでもコンディションの違いによるその違いを気付く良いチャンスと思い、白川郷までは我慢しようと、そして「セロー250TMがとても乗りやすい」ときっと言うであろう予想に期待を膨らませ、峠を抜けて聞いた感想には驚いた。
彼はエンジンの回転が軽い事しか感じ取れなかった様で、コーナーでは車両がイン側に倒れ込む感じが怖かったと、汲んだ水を32ℓも積載した影響で倒れるものだと感じでいたようでした。
コンディションが整った車両はコーナーのクリッピングポイトが掴み易く、セルフステアで倒れる感じの所でコンディションの整った車両の場合、アクセルをジワッと開けると車両は反応し起きようとする。
積載状態でもそのように反応するコンディションの車両を走らせる面白さは疲れ知らずで、SL230NWJCツーリングマスターやトライアンフ空冷スクランブラーNWJC2014も同じように積載状態でも長距離を楽しめる。
再び車両を乗り換えてからは改めてNWJCの車両作りへの拘りは素晴らしく、バイクは売ることよりも乗り始めてから楽しめるように仕上げる事と高田さんからよく聞く話ですが、乗り手目線で企画され作りこまれているんだと、セロー250を乗り比べて改めて実感できました。
僕はよくバイク友達に「距離感がおかしい。たくさん走る」とか、「タフ」とか言われてきたが、世間のバイク乗りの多くは、排気量の大小に関わらずコンディションが悪いことに気づかない状態で「こんなもの」と思い込んで走っているからコーナー一つ曲がることでも疲れてしまうんだと、今回の乗り換えでその意味がはっきりとわかりました。
確かに僕も交換した彼の車両に乗っていたら遠くへは行きたくないし、次はどこへ行こうなんて気にもならないだろう。帰り道のやまびこロードを50~60キロで流しても彼はバックミラーから消えてしまうほど疲れきっていた。
僕も世間並みの50過ぎのおっさんです。NWJCで仕上げた車両に乗っていなかったら充実したバイクライフを送れていなかっただろうし、車両の変化に気付くセンサーやアンテナも張れない感度の低いライダーになっていただろう。
彼は赤男爵でフォークオイルの交換すら提案されたことはないそうだ。付き合っていくお店によってバイクライフは娯楽止まりで、趣味にはなり得ないことも分るよう気がする。
最後に彼が気付いたエンジンの軽さについてエンジンの調整をしてみれば?と聞くと、今のバイクに全く不満を感じていないからそのままでいいと返事が返ってきました。
空冷ボンネの調子が良かったというのもこの時点で怪しいのでは・・・と思った(笑)。
これ以上は価値観の違いのため追究することは詮無いことですが、今回の記事は彼に了承を得て書いており、バイクのコンディションや違和感に気づく事や、バイクをより楽しむためのヒントになればと思います。
レポート 寺山