カブ110NWJCコンプリートの深化
カブ110NWJCコンプリートtype4の1号車の制作が始まったころ、高田さんから1本の電話が入った。
「Newタイプのノーマル風マフラーが入荷するけど、どうする?」二つ返事でお願いしますと!
皆さんエンデュランス製のマフラーを使われている方が多く、僕も同じマフラーをお願いしたところすでに生産終了となっていて、何か良いものがあればと気になっていたところでもあった。
音量、外観はノーマルのままのなんの変哲もないホンダ純正のスチールマフラーだが、マフラー交換後、石徹白から九頭竜へ抜け油坂峠を走ってみた。明らかに走りが違う。
全域でトルクが太くなり高速の伸びまで良くなっている。またまた欲張りなおっさん仕様だぞ~♫
一つ良くなると崩れるバランス
22,000kmを超えマフラーを交換するついでに、バルブクリアランスの調整も行ってもらえた。前回の調整から1万キロほど走っているが、高田さんから車両の状態を感覚的に把握するためにも、診ておいた方がいいとの提案だった。
調整前の走りの感じは、低速のトルクが少し薄くなったようだが、上は以前より回り最高速に伸びが出ていた。この状態を高田さんに話すと、確実にバルブクリアランスが広がっているねと指摘。
案の定、規定値内には収まってはいたものの1万キロで0.03mm広がっていた。バルブクリアランスは広がる傾向にあるため、最小値で調整してもらい再び低速のトルクがモリモリになった。
僕の好みはこっちだ!それは、アクセルに敏感に車両が反応し車両と会話しやすいからだ。
しかし、エンジンとマフラーが良い状態になり、気分よく九十九折れを走らせてみると、車両のバランスが崩れていることに気付かされた。明らかに良くなった走りにサスペンションとブレーキがついてきていないのだ。
動けばよしとするライダーならこれでも大満足であろうが、真の欲張りにはこれは頂けない。
そのことを高田さんに相談すると、同じJA10型のコンプリートType2に乗る高田さんの愛機に乗ってみたらと言われ試乗させてもらうと「なんだこれ?カブの領域をはるかに超えた乗り心地」
正にトータルバランスを整えるとはこのことかと思い知らされたが、とても良い経験をさせてもらった。
そうなるとお次は皆さんも想像のつく掛け合いになりますよね!「これと同じにしてください!」と
トータルバランスが整いいざキャンプへ
サスペンションとブレーキにメンテナンスを施して頂き早速キャンプへ。
カブコンプリートは最強のツアラーだと思っている僕は、過去最大の積載をして各部の慣らしがてら出発し変化を感じたいがための九十九折れの道ばかりを選択しつないだ。
重い荷物を背負った車両は取り回しではそれなりにずっしりと感じるが走りだすと軽く感じる。
手に持つと重く感じる革ジャンも着込むと体にフィットして重さを感じないのと同じように、ライダーとバイクが一体になって重量が分散されるのかな?
低速のツキが良くなったエンジンに全域でトルクアップしたマフラーとサスペンションがしっかりと路面を捉えることでタイヤの接地感が増し思いのまま走ってくれる。
荷物満載の車両でもしっかりブレーキが効きサスペンションとのバランスもとれている。これは楽しい。
思わずペースが上がる。天気も良好、この最高な場面を独り占めしている至福。ありがとう高田さん。
またまた高田マジックの劇薬に墜ちていく、もうやめられない(笑)
絶景を求め林道へ
帰路は少し遠回りをして高田さんから伺っていた海を眺められる林道へと足を延ばした。
林道を選択したのは、春にRBR乳深さんがカブ110NWJCコンプリートType2で四国を巡られ最高だったという記事が気になっていて僕も試してみたかったのだ。
林道はアスファルトとダートが交互に現れダートは全く荒れておらず走りやすいところでした。
絶景ポイントでパスタ&スープでランチを楽しんでいるとCB1300をタンデムした年配夫婦の方がみえた。高田さんのボンネビルT100でのタンデム林道といい、世の中バケモノのような人がいるのだなと思った。
この先、僕はどれだけの伸びしろがあるのか分からないが、NWJCでグッドコンディションに整えた車両でずーっと楽しみたい限りです。
ランチを終え10キロほど林道を走り景色の良いところで車両を停めたりUターンしてルートを確認したりとフラフラと走り回った。林道に入る前に燃料を満タンにしてきていたため不安要素は皆無で思いっきり林道を楽しんだ。楽しむというのはオフロードバイクでかっ飛ばす等のイメージではなくゆっくりと安全に林道を抜けるペースでロードタイヤに荷物がフル積載でかっ飛ばすなんて普通に考えても難しいですね!
より安全に他車からの視認性向上アイテム
今回車両の深化に伴い安全面も考慮して、黄色いフォグランプを増設してもらった。
コンプリートのヘッドライトはハンドルと連動していないためフレームと同じ方向にしか明かりを照らさない。
暗いコーナーで目線にライトの明かりがついていかずその部分を補うことも兼ねている様です。
フロントフォークにNWJCオリジナルのステイを付けフォグランプを装備。高田さんは2輪車の事故は側道から車両の割り込みや右折車の割り込みが多いためイエローバルブ等を使用し他車へのアピールをし存在感を示すのが大事だと。
トータルバランスだけではなく安全面に対しても抜かりない車両作りは、バイク屋のバイク乗りが実体験に基づいた仕様なのだ。走りに目を向けるだけではなく乗り手一人一人がオンリーワンの所有欲を満たす遊び心まで提案されており色々個性豊かなコンプリートが日本全国を走っている。
面識はないが敦賀ですれ違ったことのある金沢のコンプリート乗りの方も、次回お会いできたらすぐにどちらの方か判断がつくようになった。
こんな個性豊かな車両に僕も少し手を出してみようかなと思っている今日この頃。
深化とは
JA10はカブコンプリートではType2と型落ち車両となり最新のType4が制作に入った。
世間一般の考え方からすれば新しいものの方が性能も良く乗り続けるには交換部品が増えていく等を懸念するよう促し買い替えを推奨するのが普通だが、NWJCでは永く乗り続けている相棒とも呼べる車両をいつまでもグッドコンディションで乗り続けられる様な提案を惜しみなくして頂けます。
下取りで新車に乗り換えてもらうことで下取り車両の販売と新車の販売の2重利益がほとんどのお店なのに独自の経営方針で気に入った車両をとことん面倒をみてもらえる。
新しいものが全てに良しとするわけではなく、乗り手と相棒の思い出が詰まった内容を重視してもらえるのは非常に有難いことです。
NWJCでの深化とは、ボルトオンパーツ等のカスタムで変化を楽しむのではなく、車両の本来の性能を100%引き出し+αのレシピで車両を作り上げるから、見た目の外観はなんら変化しないが乗り手にはその差が確実に体感でき更なる相棒との距離が縮まるのだ。
だから手放せなくなるしツーリングや旅を終えた直後にすぐに次はどこへ行こうと思えてしまうのだ。
皆さんは走り終えた後、「今日もありがとな」って労いの言葉を相棒に掛けていますか?
僕は恥ずかしながらいつも掛けており、機械という認識はなく生き物として付き合っています。
余談
RBRの乳深さんが以前CT125の記事を書いており、とても面白く読ませてもらったが、昔のSR400の様に各部品メーカーがボルトオンパーツを提供し装飾品をいっぱい付けて品評会を行い、消費者をあおっているため、どんどん乗りにくくなり近場を走るだけのファッションバイクになっているという内容だったような。(違っていたら読解力のない僕を許してください。)
R.B.R公式サイト『 第31回 カブ110NWJCコンプリートTypeⅡを楽しんで改めて思うこと』
今回のキャンプ場で、オリーブのCT125が1台いてキャンプ場内を爆音マフラーで走行していた。
落ち着いたところでテントの横に車両を停め、まるで雑誌の一面のような絵になっていました。
キャンプ道具を乗せた車両の写真のお次は、いきなりテントと焚火の横に車両を停めて、走っている写真の掲載は一切なし。そんな雑誌の一面のようで、みんなこんな風に楽しめると想像力を搔き立てられている。
そのオーナーが夕食時にカブ乗りということで話しかけに来て、ナンバーを見て同郷ということがわかった。
僕は同郷と知ったときに「あれ?記事の内容とは違ってキャンプ道具満載で自走してきたんだ。走ってこれるんだ、立派なCT125乗りですね」と話したら、「違いますよ!トランポに積んでここまで来ましたから」
えっ!雑誌の提灯記事のまんまやん(笑)
これぞ真のCT125乗りやん!彼は自分の周りの友達に、カブは楽しいからカブ買えやとけしかけていると言っていた。それもカブの楽しみ方のひとつかもしれないですね。
僕は乗る事が楽しくて楽しくて、キャンプにしてもキャンプを楽しむことよりも行き帰りの道中を楽しむことにウェイトを置いてしまう。そしてその時その瞬間にしか見れない景色に出会ったら車両を停め気が済むまで眺める、そんな一期一会の楽しみ方は高田さんから教わった。
今後も高田さんに色々な提案をして頂き、いつものメンバーと共にお気に入りのバイク同様に僕のバイクライフも更に深化していけるように思うのです。
レポート 寺山