ボンネビルT100紀行
空冷ボンネビルT100をタンデムで楽しむ
朝晩は肌寒い季節となり、SL230TM仕様やカブCompなどへのジャストサイジングで、のんびりと紅葉の中を流して楽しむのも好し。と、おっさんライダーの遊び心がそわそわしている。
大型バイクも猛暑による体力的な負担も少なく心地よく楽しめる季節がやってきたから、空冷ボンネビルT100を駆り西日本の定番ルートで久々のタンデムツーリングを楽しんできた。
高速道でのタンデムが解禁になるまで一般道では700Km程度で、解禁後は1000Km以上の日帰りツーリングに出かけることもあり、Hondaゴールドウイングでもタンデムツーリングを長年楽しみ、振り返るとゴールドウイングはソロよりもタンデムで楽しむためのバイクだったように思う。
88年型の1500から始まり1800へと乗り続けて、日本各地をタンデムでも楽しんだつもりだったが、振り返ると単調な線を描いて移動するだけで、日本の道路事情とおっさんライダーのレベルでは操るより持て余す車格であることを悟り、すっかり乗る事を已めてすでに3年が経った。
同じ大型バイクでもコンパクトサイズの空冷ボンネビルT100 NWJC2014は、一般道や市街地では悠々と流れに乗り、高速道では移動距離を延ばし、ワインディングを軽快に走り抜けて、好奇心から脇道へ入り込むことは気負うことも無く厭わず、速さより心地よさで複雑な線を描くことも楽しめるから、その良さをタンデムでも発揮できる仕様に想いをめぐらせていた。
今回のツーリングでは、タンデムでもバイク旅を満喫するために深化させたNWJC2014TM(ツーリングマスター)仕様の最終チェックも兼ねて、濡れた路面のワインディングから高速道や脇道まで、おっさんライダーの想い描いたワガママを具体化した欲張り仕様の仕上がりには納得することができた。
空冷スクランブラーNWJC2014仕様と共に走る
今回のタンデムツーリングは、いつものメンバーの村田さんとR365の熊川宿で合流してから始まった。外観はパセンジャーのためにシートが変更されバックレストが取り付けられているボンネビルT100 NWJC2014TM仕様は、いつもと変わらないペースで走り始めた。
空冷スクランブラーNWJC2014仕様を長年に渡り楽しんでいる村田さんは、タンデムでもいつもと変わらないペースのボンネビルT100TMに違和感を持たれたようだ。
村田さんは大型バイクを複数台所有して、その中のトライアンフ空冷T100は発売と同時に乗り始め、空冷スクランブラー900の発売と同時に乗り換えて今日に至り、走行距離は8万キロを超えている。トライアンフ空冷モダンクラシックは乗り始めからやがて20年となり、バイク屋のおっさんライダーとほぼ同じである。
空冷モダンクラシックの違和感や問題点なども含むコンディションに関しては、バイクに乗らないバイクショップよりも経験が豊富だから「こんなものです」という対応や、ボルトオンパーツの組み付けや疑似体験によるコピーペースト的メンテナンスでは改善できないこともよくご存知である。
メーカー出荷の新車からNWJC2014仕様への深化の過程もライダーとしてつぶさに実体験されているから、リアシートに座っているパッセンジャーは周りを眺め気ままに写真を撮ったりしても、いつもと変わらないペースであれば違和感を持たれるのは当然の事だと察する。
→NWJC公式サイト『バイクは健康療具:スクランブラーでボンネと共に』
バイクに乗らないバイクショップや、メーカーご用達の相も変わらずの提灯記事を得意とする雑誌屋よりも、バイクのコンディションをはじめトレッキングごっこなど、バイク乗りとしての経験も豊富で、人とバイクの関わりについて精神科医の観点とバイク乗りとしての目線から、独自のバイクライフを楽しまれている。
空冷ボンネビルT100の素性の良さと多用性を引き出して楽しむ
おっさんライダーは、2001年から復刻したボンネビルに乗り始めて、その後発売されたスクランブラーにも乗り続けて、空冷モダンクラシックとの付き合いはやがて20年となる。電子制御が満載の水冷モデルと比べても、昔ながらの素朴な乗り味は人の関わる領域が広く、そのアナログ感は色あせることが無い。
長年楽しんできたボンネビルT100NWJC2014仕様をタンデムで楽しめるよう、パセンジャーの快適性の為のシート変更や耐荷重性を高めることなど、心地よい走りを楽しむ為のメンテナンスやモディファイに思いを巡らせるだけでもバイク屋のおっさんライダーには楽しいことである。
タンデムで楽しむ為に、シートはトライアンフ純正オプションのキング&クインのコンフォートシートに変更しているが、BMW R100RTでもタンデム用にコンフォートシートが純正オプションとして設定されていた。しかし、Hondaのシート群は足つき性ばかりで、VTR-TM仕様でもシートの問題を指摘したが、心地よいライディングを楽しむうえで重要な機能パーツとしてのシートがOP設定されないのは何故だろう。
ボンネビルT100の純正オプションは、スクリーン・タンクバック・サイドバック・バックレスト・リアキャリア・シートは数種類あり、その他にもOPパーツがあるが、カテゴリーが同じHonda CB1100の純正オプションは何があったかを比較すれば、乗り始めてからの楽しみ方は十人十色だが、メーカーの対応には大きな違いがあるように思う。
今年の3月から南店へ統合したバイク屋NorthWingJCは、その過去に於いてNWJC北店は岐阜県下唯一のHonda専門店のWing Prosで在り、NWJC南店は県下唯一のトライアンフとBMWの正規ディーラーとしての長年の経験により、スペックやチャンピオンマシン云々の技術力の誇示などとは次元が異なる2輪文化の違いに気づいた次第である。
バイクが良き相棒となる為に
長年楽しんできたトライアンフ空冷ボンネビルT100やBMW R100RTは、20年30年と時間が経過することによりその良さがはっきりと現れてきた。ツーリングで見かけるバイクも、旧いものかここ数年の新しいモノに分かれてその中間が姿を消し始めたたように思う。
その例として、BMWのR1100・1150系や縦置きのKシリーズ、トライアンフではタイガー800やストリートトリプル、Hondaのヒット作だったNC700系など、新型と旧型の中間に位置する多くのバイクが姿を消し始めたように思うが、BMW R100RSなどのOHV系は相変わらず健在で誰でもが見かけることだろう。
新型は旧型に比べて云々と、販売のための提灯記事やそれらに付随した情報が氾濫しているが、新製品効果が過ぎて賞味期限が切れると話題にも上らないバイクが多いのは何を物語っているのか、乗り始めてから本当に楽しめる価値ある道具となっているか要確認であろう。
国産の○○JPやインポーターの○○JPも同様の台数至上主義だから、乗り始めてからの事は二の次。新しいほど高性能で良いバイクであるような提灯記事による語感で、購買意欲を煽り立ててのナリフリ構わぬ青田刈りは、市場規模が縮小の一途をたどって十分の一以下に縮小しても何ら変わる事が無い。
月日が過ぎることにより、どんなバイクでもその良し悪しがはっきりと顕れるように思うが、台数至上主義で売ることが最優先の対応か、バイク屋自らの実体験に基づくメンテナンスや乗り始めてから楽しむ為の提案も含めた対応か、夫々のバイクライフに大きく影響しているのが実情ではないか。
満たされるのは所有欲や自己顕示欲などで時間と共に色褪せることばかりとならない為にも、バイク本来の良さや魅力は、バイク屋としての経験とバイク乗りとしての自らの実体験に基づいた提案やアドバイスが必要であると、おっさんライダーは感じている。
モダンクラシックというカテゴリーで復刻した空冷ボンネビルの旧車的デザインはファッションバイク扱いで、違和感や問題は「こんなものです」と素性の良さを見限った対応が大半であり、そのポテンシャルに気づいたのは自らの実体験をベースとするバイク屋か、「こんなものです」という対応が大半だが妥協することなくGoodコンディションを求めた僅かなライダーだけではないか。
Goodコンディションに整えた空冷ボンネビルT100のエンジン特性は、低速は各ギア1500rpm前後から実用域として使えてゆっくりも楽しく、高速ではDOHCらしくエンジン回転の延びと力強さを発揮するバランスが心地よく、HondaNC700系にも似たエンジン特性の水冷ボンネとは対照的である。
アクセルフィーリングの良さも水冷ボンネのフライバイワイヤーの鈍感さとは雲泥の差があり、バイクは新旧を問わずライダーの関わる範囲の広さが操る楽しさでもあり、スペックやデバイスのサポートよりも感性で楽しむモノだと改めて実感した次第である。
トライアンフ空冷モダンクラシック群をGoodコンディションに整えれば、和洋折衷のような大らかさと特化することのない曖昧さは多用性であり、十人十色の楽しみ方にも対応できる良さとなる。心地よい走りを満喫できるアナログ感は時を経ても色あせる事も無く、まさに良き相棒となる。
バイク屋のおっさんライダーは、その良さが引き出されていない空冷モダンクラシックを一台でも多く、Goodコンディションに整えて楽しめるよう応援したいと思う。また、バイク屋のバイク乗りとして、ライテク云々よりもGoodコンディションに整えることや、自らの実体験に基づく提案ができてこそライダー目線であり、素敵なバイクライフを応援できると考えている。