再びVTR-TM(ツーリングマスター)を駆る
5月後半は、バイク屋のバイク乗りがバイク旅を満喫する為に、5年ほど前から試行錯誤をしながら楽しんでいるジャストサイジングしたVTRの深化版のVTR-TM仕様で、西の定番ルートを楽しんできた。
積載状態での足回りとシートには以前より違和感があり、刷新するか妥協するか悩ましいところでもあったが、リアサス周りの仕様を変更して、シートは確かな仕上がりで信頼できる浜松のプロショップでコンフォートタイプへと仕様変更を依頼した。
ライダーには厳しい猛暑が当たり前となった7月後半には、バージョンアップしたVTR-TM仕様の各部のチェックも兼ねて、キャンプ道具などを積み込んだフル積載状態で、再び西の定番ルートを駆けてきた。
VTR-TM仕様はサスの設定を変更したことで、荒れた路面での安定性も改善して、ブレーキのコントロール性は同じブレーキとは思えないほど向上して扱いやすくなった。ブレーキ性能やタイヤ性能はサスとのマッチングが重要となり、サスを含む足回りなど操縦性はエンジンコンディションの影響を大きく受けていることが顕著となり、長距離の定番ルートに於ける比較により納得できる内容となった。
心地よい走りはトータルバランスが求められることだが、「こんなものです」の対策としては、ボルトオンパーツの組み付けだけでは不備があり、バイク屋として実体験に基づく裏付けが求められることである。
シートはフォームと形状の変更により膝の曲がりが楽になり、ポジションには余裕が生まれた。荒れた路面での衝撃を吸収する感覚は、VTRの標準シートや大型バイクのツアラーと比較してもその感覚は独特で、走り続ける程に良さが実感できる仕上がりには満足している。
海外メーカーのBMWやトライアンフには快適に走るためのコンフォートシートがOP設定されている車種もあるが、Hondaでは足つき性を重視するローシートばかりで、心地よく走り続ける為のコンフォートシートがメーカーオプションとして存在しないのは何故だろう。
タイカブのC125もタンデムステップが装備されているが、タンデムシートは純正シートの設定が無く、社外品が推奨されているようだ。2輪文化の違いなのか、Hondaの所詮250や原付という捉え方なのか、ユーザー不在のようである。
VTRの積載性
速さより心地よさで走り続けて楽しむバイク旅には積載力が必須であり、積載時の確実な固定が操縦性と安定性に影響するが、最近はスタイル優先で積載性は簡易のバイクばかりのように思う。
積載方法でのサイドバックの活用は重心を低くできる長所も有るが、雨天ではタイヤが巻き上げる水飛沫で汚れてしまうから防水バックが最適である。ウルフマンの防水バッグはサイズ感や固定方法が確実でお気に入りだが、VTRの跳ね上がったマフラー形状によりスペースが限られるため、今回よりエンデュリスタンの防水サイドバックを使ってみることにした。
ウルフマンとエンデュリスタンは同じ販社が取り扱っているが、担当が変わると対応には大きな違いがあり、サイズ的なことや取り付け等に関して情報収集が円滑にはいかず苦慮している。
また、形状も複雑でウルフマンのような使いやすさはなく、何をどのように詰め込むか試行錯誤中である。
エンデュリスタンサイドバッグの取り付けは、サイドラックをある程度の専用化で対応して、リアキャリアの形状は更に大型バックをトップに積み込んでも何ら問題も無く、確実な固定ができて安定感のある走りを楽しめる仕上がりであることが、ハイペースで走らせて実証できた。
積載に関してバイク屋の実体験から一言。トップケースをボルトオンで簡単に取り付けられるよう様々な仕様が出回っているが、軽量な250クラスや大型バイクでも積載状態やサスペンションの設定によっては安定感を失うから、心地良い走りは楽しめない場合があるから要注意である。
バージョンアップしたVTR-TM仕様は、フル積載状態で定番ルートのワインディングをハイペースで流して、前回とは別モノの心地よい走りを楽しめたが、おっさんライダーは猛暑のため熱ダレしてダウン。予定していたキャンプは中止してエアコンンの効いた宿で快適に過ごすことにした。
齢を重ねたおっさんライダーには、猛暑は過酷な季節となり、ライダーのコンディションは、バイクのコンディションよりも優先されることが大切であると実感する今日この頃である。
ベース車VTRの問題点とTM仕様への深化
VTRの開発コンセプト等は、常用域における良好な使い勝手と気負わず走る楽しさ、市街地走行での使い勝手、20代のエントリーユーザー、シート高を下げて足つき性の向上など様々で、最後はOtona Motoという意味不明なフレーズで、YamahaのセローやSR400のように一貫性が無く、売れなければ已めてしまうHondaらしさも透けて見える。
VTRは市街地走行での使い勝手を優先して、足つき性のみを重視したチョイ乗りシートは最悪で、ハンドルは遠く前傾姿勢がかなりきつく、背伸びした感じのライディングポジションはバランスが悪いからバイク旅を楽しむためには、それなりの対策が必要となる。
サスペンションは経年劣化が早く、積載力は荷掛けフックが付いている程度の簡易だからバイク旅で長距離を楽しむための積載力は皆無である。Vツインエンジンもコンディションを整えなければ5速M/T本来の良さが発揮できない。ジャストサイジングして心地よく楽しむ為には数多くの問題があるのが現実である。
それら多くの問題は、VTRがVTR-TM(ツーリングマスター)へと深化する過程で、NWJCオリジナルパーツの企画とメンテナンスやモディファイなど、バイク屋として数多くのことが経験できる良き機会に恵まれた事は幸運であり、感覚的なことはバイク乗りとしての実体験の蓄積に勝るものはないと考えている。
「所詮250だから」とか「こんなもの」と妥協して、スペックやデザインに加えて「OtonaMoto」「等身大」といった語感で売るがための方便とは一線を画して、VTR-TM仕様はバイク屋のバイク乗りとしての実体験により、違和感や問題点など気づいた数だけ深化してVTRの持つ良さを引き出し、自らが楽しむ為にも納得できる仕様に仕上がったと自負している。
NWJC-TM(ツーリングマスター)仕様について
TM仕様は、おっさんライダー自らが楽しみ、思い描いたバイクライフを具現化するために、小排気量のカブ110NWJCコンプリートで日本列島縦断を楽しんだ事が発端となっている。
カブ感覚で普段使いからバイク旅まで楽しむ為に、SL230を欲張りなおっさん仕様からSL230TM仕様へと深化させて、扱える車格と使いこなせる排気量へと最適化するジャストサイジングを実体験して、ジャストサイジングしたTM仕様は、これからのバイクライフを面白くできると実感した次第である。
バイク屋NWJCが実体験に基づいて提案する、良き相棒としてのTM(ツーリングマスター)は、メーカーやスペック・カテゴリーに捕われることなく、チョイ乗りの普段使いから日本各地への旅まで、和洋折衷のようなおおらかさと、可もなく不可もない曖昧さにより持て余すこともなく多用途に使いこなせて、脇道へそれることも立ち止まることも厭わず、自由気ままにフィールドを拡げて、速さより心地よさで楽しむために。
TM仕様のベースとしては問題が多いVTRを選んだのは、生産終了の旧いバイクを好んでいるわけではないが、普段使いから旅バイクとしても楽しめるベース車両となるHondaの現行250クラスを見回したのだが、TM仕様としてイメージできる車両がなかったと云えば語弊があるだろうか・・・・。
かつてHondaには同じ空冷シングルエンジンを使ったCB250RS・XL250R・CT250Sがあった。カテゴリーとしては、ロードモデル・デュアルパーパス・トレッキングであったように思うが、CT250Sのシルクロードはオンオフ問わず扱いやすさと積載性を重視した旅バイクであった。また、XLやCBも昨今のバイクと比べれば、チョイ乗りから長距離ツーリングも楽しめるおおらかさと自由度があったように思うのである。
コンセプトやスペック、存在感を誇示する車両も含み検討してみるが、デザイン的には先鋭的でカテゴリーに特化してタイトだから単能に見える昨今のHondaの250クラスは、時代が欲するジャストサイジングと、多用性が求められるTM仕様のベース車としては違和感を覚えたのが、おっさんライダーの本音である。
同じ水冷シングルエンジンを搭載していても、グリップヒーターを装備できる車両と設定すらない車両。クロスオーバーと称するカテゴリーでもナックルガードが装備できる車両と設定すらない車両。上辺は同じカテゴリーでも思いつきかデザイナーの自己顕示か、その一貫性の無さは一過性の娯楽の小道具のようである。
それらに比べて、SuzukiのVストローム250は、試乗した事も無くどんなエンジン特性なのかも分からないが、シート形状や積載性など、コンセプトは現代版シルクロード250のようで、日本の道を旅して楽しむベース車としては面白いと思うのであるが、一過性の娯楽の小道具かバイクライフの良き相棒となるかは、バイクショップの実体験に基づいた対応が問われるところでもある。
バイク屋ノースウイングJCは、売るがための台数至上主義や成果主義とは一線を画して、メーカーやスペック・カテゴリーに捕われることなく、自らが楽しむ為にGoodコンディションに整えたバイクを駆り、自らの実体験に基づいて、バイク屋のバイク乗りとして思い描くバイクライフを提案できるバイク屋でありたいと常々思う次第である。