カブ110NWJCコンプリートで日本列島縦断 概略編2
記事内の『カブ110EXPRESS』は、列島縦断用の車両仕様を表現したもので、NWJCの正式な仕様ではありません。
素適なバイクライフを求めて
一般的にロングツーリングを楽しむには、それなりの車格を持ち、装備も充実している車両でなければ・・・と思っている人も大勢お見えになるようだが、それは一昔もふた昔も前の話である。
ブランドと云われる外国メーカーのディーラーもやり、バイク乗りとしてツーリングで色々な車両に乗ってもみたが、高級ブランドのブランド力や車格、スペック等が、日本の道路事情のなかでバイクライフを豊かに楽しくしてくれるわけではない。
また、意外に思われるかも知れないが、ブランドだから信頼性や耐久性が特別なわけでもない。むしろ信頼性や耐久性は、日本のメーカーの方が格段に優れている、と思われることも数多く見受けられる。
HONDAと2メーカーの輸入車で、色々なバイクをベストコンディションに仕上げて乗り続けて思った事は、雑誌等のインプレ記事とは異なるインプレになることも数々あったから、小排気量から大排気量まで車格を問わず、ベストコンディションのバイクを提供することが、ライテク云々で乗りこなす事よりも、其々のスタイルで使いこなして楽しむことが出来る、とバイク屋NorthWingJCは考えている。
どんなバイクが日本の道を楽しめるのか、勿論楽しみ方は十人十色だから一概に答えが出ないものだと判っている。
しかし、気負いやテライを捨て去れば、車格やスペック、ブランドに惑わされることなく、素敵なバイクライフを得ることができるのでは、とバイク屋のバイク乗りとして実体験をベースに感じている。
速さより心地良さで走り続ける楽しさで、大いに素敵なバイクライフを満喫して頂きたい。と、一人のバイク乗りとしてバイクライフを満喫している私は思うのである。
今回の列島縦断ツーリングでは、小排気量のカブ110NWJCコンプリートのEXPRESS仕様で、車格やスペック、ブランドに惑わされることなく、一般道を速さより心地良さで走り続けて、誰でもが気負うことなくロングツーリングを楽しめることを実体験から伝えたいと思った次第である。
小排気量はインジェクション化に伴い高性能化している
昨年の9月は、250ccのVTR-Fを駆ってスラクストン900とNC750Xの大型バイク2台と共に、北海道ツーリングを楽しんで来た。
VTR-FのVツインエンジンは30年以上の歴史を持つロングセラーであり、インジェクション化されたVTR-Fは熟成されて、一昔前のキャブ仕様だったころのVTR250とは別物の走りで、低速から高速まで全域で扱いやすくて心地よく、大型バイクと比べても遜色のない走りで北海道ツーリングを楽しむ事が出来た。
HONDA PGM FIなど技術の進化により、排気量や車格を頼りに背伸びしてロングツーリングをするよりも、等身大で楽しめる軽量な軽2輪や中型バイクでも大型バイクと同等に気負うことなく充分に楽しめるようになった事を実感した次第である。
カブも同様にインジェクション化されて排気量も110となり、長い歴史があり多くのファンを持つ HONDA ハンターカブCT110と比べてみても、動力性能などは格段に進化して、国道など速いペースの流れの中でも後方を気にすることなく、誰でもがカブ110を駆って、容易にツーリングを楽しめるようになったと思う。
今回の列島縦断ツーリングは、カブ110NWJCコンプリートをロングツーリングでも楽しめるよう積載力をアップさせ、その他にも装備を数点追加した状態で実力テストを敢行して、セールストーク的な話の話ではなく、14インチのカブ110NWJCコンプリートのツアラー仕様について、実体験を掻い摘んで伝える事ができればと思う。
GW最終日に出発
大阪南港から志布志港へ向かうため、いつものメンバーとは石上神宮まで一緒に走った。いつものメンバーのカブ110NWJCコンプリートが、フル積載のカブ110を取り囲むように石上神宮を目指して走り始めた。
先導は三重方面を得意とする村田さんだが、九州から北海道まで走る計画については話していない。九州へ行くとだけ話していたから、村田さんはいつもの調子で、ワインデイングを結構なペースで少し遠回りしながら延々と走り続けることを楽しんでいる。
今回の計画を話していれば、こんなルートを走る事は無いと思うのだが・・・。でも、いつもの調子で走ってもらえばフル積載のカブ110を走らせる注意点が何か見えてくるかもしれないと思い、村田さんの後ろに続いた。が、少し重くなったと思う程度で他は何も問題に思うことは無かった。
100Lを超えるフル積載状態になったカブ110は、意外にもコーナーリングはさほど気にならないが、上り坂になると前を走る村田さんとは徐々に離れて行く。だが、ミラーに写るKさんとの車間は変わらない。その様子を最後尾からNakaさんがチェックしていた。
Kさんはすでに自重でフル積載状態に近いのでは・・、Kさんもそのことは誰よりもよく分っている様子。でも、シフトタイミングが僅かに違うだけでも登り坂では速度差が生まれるなど、小排気量のカブならではの面白さがある。
R25号は道が荒れていてジャリ道もあり、走行性や安定性のチェックには良い機会を得た。
ウルフマン製サドルバックを装備したが、トップケースより下側で積載量を増やしているから悪路でもほとんど影響が無く、他のカブ110と同じように走る事が出来た。サスはフルノーマルだが、配達業務用の110プロがベースだからサスが底突きすることは無い。
いつものメンバーと石上神宮へ参拝して、少し遅めの昼食後には皆と分れて大阪南港を目指して走り始めた。
NWJCカブ110EXPRESS仕様
今回のロングツーリングは、積載量をアップして大型バイク並の積載量を持つカブ110NWJCコンプリートで、誰でもがロングツーリングを気負うことなく楽しめるよう、小さなツアラー・カブ110EXPRESS仕様を企画して、列島縦断ツーリングを楽しみながら色々な事をバイク屋のバイク乗りとして確認してきた。
- ウルフマン製サドルバック使用ため、積載量のアップに伴うブレーキ性能・サスも含み、直進・コーナーリング時の安定感など走行性を長丁場でチェック
- 専用スクリーンを試作して取り付け位置、角度などフェアリング効果をチェック
- ナビの取り付け位置を変更して視認性など使い勝手をチェック
- アンダーガードを装備してフラットダートも走り、チェック
その他、フル積載状態での登り坂などは、エンジンの負荷も大きい走行条件となるから、小排気量のカブ110には過酷だが、サスやエンジンなどに不具合や問題は無いか、列島縦断ツーリング中に不具合に思う点は何か、エンジンの状態やチェーン・スプロケットの耐久性、NWJC定番のEPLオイルのチェック、車両本体の状態や変化など全般のチェックはバイク屋として当然の事として予定していた。
バイク乗りとしては、ツーリングを楽しむ事が一番であり、大型バイクと比べて排気量や車格には当然違いがあるが、小排気量のカブで走るロングツーリングで何か違うものを感じることができればと思っていた・・・。
この季節、最南端から最北端までの縦断ツーリングには、ライディングギアは春夏秋冬用が必要となる。寒くなれば着込み、暑ければ脱いで、雨が降ればレインウエアーを着込むなど、ウエアリングは目的地やルートに応じて用意万端で臨むべきである。
10数年前の5月に北海道をR1100GSで走ったとき、氷点下の真冬状態の中を走ったことがある。今回は13日に苫小牧からフェリーに乗船して北海道を離れたが、数日あとであれば氷点下で降雪に遭遇していたかもしれない。
道すがら1泊はキャンプをしたいと思っていたから、キャンプ道具も積み込み、パンク等のトラブルも考慮してパンク修理キットにはバイク用電動ポンプからスペアチューブ、ライトバルブ、チェーンオイルに、常時高回転で走らせるため補充用のオイルも200cc用意してパッキングした。大型ツアラーと同等のフル積載状態で佐多岬から宗谷岬まで、カブ110EXPRESSの走りを確かめる列島縦断ツーリングは、とても楽しみにしていたことだった。
カブ110EXPRESS仕様はベース車両が14インチの業務用のプロだから、積載に影響するサスペンション等はメーカー出荷状態のフルノーマルでも十分に対応できる性能がある。76Lの大容量を持つトップケース下側の両サイドに完全防水のウルフマン・サドルバックとトップケースの上蓋にもウルフマンのダッフルバック21Lを追加して、積載量は約120Lとした。
ウルフマン・サドルバックを装備
トップケースとマフラーの僅かな空間を有効に使って積載量を増やすためにサイドバックを色々な種類のものから検討したが、サイドバックの場合ハードケースか完全防水のバック以外は、防水性に問題がある。
表面にレインカバーをかけても、内側はタイヤの巻上げる水しぶきで外側以上に泥水で濡れてしまうからバックの中で防水する必要がある。カブの車体サイズに最適で、防水性が高く固定方法が簡単で確実なものを検討した結果、ウルフマンのオフロード用サドルバックが最適であると判断した。
サドルバックのサイズは、モンベル クロノスドーム2のテントとU・L・スーパースパイラルダウンハガー2のシュラフをコンプレションバッグSに入れて圧縮すればスッポリと収まる大きさで、キャンプ道具の収納にも最適だと思う。
ウルフマンのサドルバックは完全防水であることと、固定方法は専用のサイドラックがあれば取り付け金具をつかって確実に取り付ける事ができる。しかし、カブ用の専用サイドラックなど存在しないからカブ専用を試作することにした。
取り付け位置は使い勝手や車幅等を検討して、最適であろうと思われる位置を選んだ結果。サドルバック装着状態でも最大幅は750mmで、クロスカブのハンドル幅800mmよりも50mm狭く納めることが出来た。
積載力は、荷物をどれだけ積めるかという量の事だけではなく、積載状態でも安定した走りができることが大前提である。大型バイク用では社外品のトップケースやサイドパニアは数多いが、フル積載状態となると操縦性と安定性に問題が生じる場合も数多く見受けられるから慎重に選びたいものだ。
カブ110EXPRESS仕様は、フル積載状態でもベース車両が業務用のカブ110プロだから取り回しも軽く、操縦性や安定性で不安に思うことも無く、ブレーキ性能やフル積載状態でのサイドスタンドの強度なども含み、何ら問題も無く、1日平均570Kmを軽快に走り続けてツーリングを楽しむ事が出来た。