バイク屋の備忘録

SL230TMをこれからも楽しむ為に

今年もコロナウイルスの猛威と天候不順により、チョイ乗りから自由気ままなバイク旅まで、バイクを存分に楽しめない日々が続いている。

世界中での異常気象に、ロシアによるウクライナ侵攻、台湾問題、安部元総理の暗殺など、殺伐とした世の中ですが一日も早く安寧の日々が訪れることを天地神明に祈念する次第です。

今年の初乗りは、欲張りなオッサン仕様が深化したSL230ツーリングマスター(TM)で木曽三川公園へのチョイ乗りで始まったが、25年も経つと全体の劣化も気になり、オイル下がりの症状もその一つで苦になっていた。

そこで、シリンダー上部をオーバーホールしてコンディションを整えることを予定して、時間に余裕が出来たところで、SL230-TMのシリンダー上部のオーバーホールによりリフレッシュメンテナンスが完了した。

ポコポコと歩くような極低速の「トレッキングごっこ」ではエンジンは常時高温で過酷な使用条件だったから、シリンダーへッドを開けるとピストントップは2サイクル並みのカーボンが蓄積していた。排気ポートやINバルブにもカーボンがたっぷりと乗って、思った通りの状態だった。

オイル下がりの直接の原因はステムシールの劣化だったが、SL230が搭載しているMD33E型エンジン専用の特殊工具によるバルブシートの研磨とバルブのすり合わせには細心の注意を払い、ステムシールは勿論のことピストン関連とカムチェーンやスライダーも取り換えて、シリンダー上部のメンテナンスが完了した。

せっかくだからエンジンのフルO/Hとも思ったが、腰下はオイル管理も良くSL230と相性の良いオイルを使い続けたからかスラッジは全く無く、クランクケースB/Gからの異音も無く、おっさんライダー程くたびれてはいないからシリンダー上部だけのメンテナンスとした。

余談だが、シリンダー上部のO/Hといえば一般的にはボアアップ等ということになる場合が多いようだが、芯が出ていない適当なボーリングによるボアアップは、ブローバイが増えてヒート気味でタレやすくなるなどの弊害が多いのも事実だから要注意である。

エンジンが組みあがり、SLはエンジンがフレームの一部となるダイヤモンドフレームだからエンジンを吊り下げて搭載を終え、マフラーやキャブレターなどの補器類も取り付けてエンジンを再始動させると、以前と変わらないエンジン音でSL230TMが再び息を吹き返した。

シリンダー上部のメンテナンスでピストンとカムチェーン関連のパーツを交換したから、熱と負荷をかけて新しいパーツと旧いパーツが上手く馴染むよう丁寧な慣らし運転を心がけることが肝要。

アイドリング状態で暫らく回してから慣らし運転で近場を100Kmほど走ってきた。オイル下がりの症状も見事に消え失せて、極低速でポコポコと走ってきたが2バルブエンジン特有の鼓動感は心地よく、慣らし運転も楽しめてシリンダー上部のメンテナンスによる走りの違いを改めて体感できたのは何よりである。

おっさんライダーがバイクを後どれだけ楽しめるかわからないが、其々のバイクとよく相談してGoodコンディションで楽しみたいと思っている。その中でもオイル下がりの症状が顕著で最も苦になっていたSL230TMのエンジンコンディションを整えることができたのは嬉しい限りである。

SL230TMは良き相棒

SL230は「トレッキングごっこ」で多くのライダーの感性を高めることに貢献した名車である。トレッキングごっこ以外ではその良さを活かすことができず、泣かず飛ばずの状態がしばらく続きバイク屋のバイク乗りとして面目ないと思っていたが、カブ110NWJCコンプリートで列島縦断した事がヒントになり、欲張りなおっさん仕様として深化が始まった経緯がある。

トレッキングごっこを楽しみライダーとしてのスキルUPを実感した多くのライダーは、人が関わる領域が広い良き時代のアナログバイクSL230をNWJCツーリングマスター仕様の旅バイクへと深化させたことでその懐の深さを改めて実感している。誰もが良き相棒だから手放すつもりは無いとのこと。

速さより心地よさと、何かに特化することの無い「曖昧さ」と、和洋折衷の「おおらかさ」等の体感フィーリングの良さで楽しむためには、スペックやブランドよりもバイク屋の実体験が必須である。

SL230の車重は、現行モデルCT125の120Kgよりも軽い105Kgである。2バルブエンジンによる低中速域の使い勝手の良さと、持て余すことの無い車格と使いこなせる排気量によるトータルバランスの良さ等は、Bigバイクのように持て余すことも気負うことも無く、自由気ままに楽しめるとベテランも納得である。

余談だが、中古車相場が上がっているからセローはSLより良いバイクだという声もあるようだが、ヤマハSR400・500に関しても同様で投機目的のモノと価値ある道具の良し悪しは同列で語ることは難しいと、自らがバイクライフを存分に楽しんでいるバイク屋のおっさんライダーそのように考えている。

オイル下がりの症状が顕著な里見君のSL230TMをはじめ、上ちゃん、村田さん、寺さん、Nomuさん、御大オジをはじめ皆のSL230TMと、Kさんや名古屋のMさんのXR230TMもMD33E型エンジンだから要チェックであり、皆も良き相棒の健康状態は気になっている。

バイク屋からの提案も、売る為の提灯記事に便乗した提案か、楽しむ為の実体験に基づいた提案か、バイクの使い方や楽しみ方により、その価値には大きな違いが生じるが、どちらの場合もその後のバイクライフに大きく影響することは周知の事実である。

いつものメンバーのSL230も20数年の時を経ると劣化しているから、一般的には提灯記事に便乗して新型はいかがですかと如何に売るかのようだが、バイク屋のおっさんライダーは自らの実体験をフィードバックして、お気に入りのバイクをGoodコンディションで楽しむ為のメンテナンス等について提案したいと思う。

SL230TMの慣らしは木曽方面から飛騨方面へ

Goodコンディションを維持している西やんのSL。アツシのSLは雪の中での半年間は磨くことばかりだからピカピカ。少しエンジンのタレが気になる寺さんのSL。シリンダー上部のO/Hをいち早く終えたS・OさんのSLは、エンジンコンディションはGoodだが外観のヘタリ感が苦になっているとのこと。

寺さんのリードでアツシとの待ち合わせ場所へ向かいS・Oさんとの合流もできて5台のSL230TMが出揃った。SL230TMを木曽路方面で楽しむのは昨年の11月末以来で、寺さんのリードでワインディングを皆で心地よく駆け抜けて楽しむことができた。

昨年の11月末には通行止めとなっていた峠で青空ランチを楽しむ予定だったが、相変わらず通行止めの為ルートを変更して少し林道へ入り込んだところで青空ランチを楽しみ、皆がSL230TMやカブ110NWJCコンプリートを楽しんでいるから、次回はカブ110NWJCコンプリートでキャンプのことなど楽しいひと時となった。

寺さんのSLは、西やんやおっさんライダーのSLよりも燃費が悪く、ガソリンが1Lも多く入った事が気になったようで、エンジンコンディションを整えたいとの事だったが、パワーウエイトレシオの違いでは・・・要するに寺さんの軽量化で燃費問題は解決できるのではと、冗談も云いつつ楽しい時間を過ごすことができた。

ユーザーボイス「SL230TMの慣らしツーリングに同行」

その後の開田高原ではススキが綺麗で、軽量なSL230TMならではのあちこちでUターンを繰り返す道草を楽しみ、日和田高原から御岳の濁河温泉への上り坂では6速のままでポコポコと登っていく粘り強さを実感。

濁河から飛騨小坂へ向けてのワインディングはS・Oさんにとってのライディングレッスンに最適だったようで、アクセルワークと前後ブレーキングのバランスなどSLが更に身近になって大いに楽しまれたようである。

帰路ではアツシと飛騨小坂で別れ、S・Oさんとは岩屋ダムで別れてから、郡上八幡までの最後のワインディングでは寺さんが嬉々としてハイペースで流し始め、それに続く西やんとおっさんライダーは寺さんのペースには思わずニンマリ。適当な慣らしとなったところもあるがSL230TMはすこぶる快調である。

1,000Kmの慣らしを予定していたが、少し距離が足りなかったので後日フル積載にしてファイナルレシオを変更した仕様で再び慣らしに出かけて慣らしは無事完了した。

空冷シングル2バルブエンジンの鼓動感も心地よく、ファイナルレシオを変更した効果はフル積載でのワインディングも軽快でさらに扱いやすく、SL230TMの「速さより心地よさ」「何かに特化することのない曖昧さ」「和洋折衷の大らかさ」は、自由気ままにフィールドを拡げて道草を楽しめるアナログバイクSL230TMならではの心地よさを改めて実感できた。

25年も経ったから「こんなもの」ではなく、コンディションを整えてアナログバイクらしいその良さを存分に発揮させることが出きたのは何よりで、バイク屋の実体験に基づいて1台でも多くのアナログバイクをGoodコンディションに整えて、良き相棒との素敵なバイクライフを応援出来ればと思う次第である。

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