スクランブラーでボンネと共に

10月初めごろから高田さんが何やらボンネビルの各部をチェックし、シートを取り換えてバックレストを取り付けて容量の大きいサイドパニアケースを取り付けたりと、また何か良さげなことを企んでおられるようだ。

今回は、どうやらタンデムで走る準備のようだ。HONDA車では珍しいタンデム用のトライアンフ純正オプションのシートや足回りなどの仕様変更が始まった様子だが、詳細は不明だ。いつものように「まずは、自らが楽しむ為に」が始まったようだ。

バイク屋の備忘録『ボンネビルT100紀行』

蒜山

私の車両は全て、高田さんのこういう行動からのフィードバックにより、調子の良い状態が維持されている。今回の深化も、誰かのボンネビルにフィードバックされるのだろう。

10月中旬になり、そのボンネビルで西日本のいつもの定番ルートに出かけられるという。スケジュールが合ったので、スクランブラーで同行することが出来た。

3月蒜山

昨年の春と同様、私はスクランブラーで高田さんはボンネビルを駆り、一般道を結構良いペースで、まさに速さより心地よさで走り続けて楽しむ事ができたが、今回はタンデムだから、のんびりペースでタンデムライダーのことも考えると、休憩も多くなるだろうと考えていたが、見事に予想は外れた。

空冷ボンネビルT100 NWJC2014が更に深化か

ノーマルのボンネビルやスクランブラーに沢山の荷持を載せて走ると、一般道の直線を淡々と走るだけなら何とかだが、ハイペースでのワインディングや高速道では直線でも不安定となって走らせること自体無謀なこととなり、心拍数が上がってしまうが、深化した空冷ボンネビルNWJC2014TM仕様は、全くそういう感じには見えない。

タンデムで私の前を走る空冷ボンネビルT100は、GL1800やK1600GT、アフリカツインなどと共に走ったときと変わらない軽快なペースで楽しそうだが、何か違和感がある。

巨大ツアラー

ボンネビルが前回と明らかに違うのは、1サイズ大きいダールパニアケースを装着してのタンデムであることだが、車両の動きも安定している。タンデムの相棒は、後部シートでライディングや景色を共に楽しみ時に写真まで撮られて、ゴールドウイングやR100RTのときと何ら変わらないではないか。

写真撮影

高田さんの「自ら楽しむ為に」という発想は、バイク屋の経験とバイク乗りとしての経験が複雑に絡み合った独自の何かが働いているようだ。空冷ボンネビルをモディファイして深化させたボンネビルT100NWJC2014TM仕様は、ツアラーというのかトライアンフ空冷モダンクラシックからは想像できない信じがたい乗り物になっていた。

十人十色のバイク観

私が元々バイクに乗ろうとしたきっかけは、格好良いからだった。格好良いバイクに乗って通学するだけで充分だった。

暫くすると、バイクに乗るのが楽しくなった。そして少し遠くへ行ってみたくなった。雑誌で読んだツーリングというものがしてみたくなった。

独りで楽しんでいた時は、これと言って行きたい場所も無く、雑誌の情報が全てだったから、その中で自分が行けそうなところを見繕って行ってみた。当時はナビもスマホも無かったから、雑誌の地図を見て計画を立てて、リュックにカッパと雑誌を入れ意を決して出かけていた。

初めの頃は、給油するところまで計画出来なかったから、片道50kmでも大冒険だった。

大学の二輪部に入って、ツーリングに連れて行ってもらい、バイクライフの幅が広がった。それでも、片道100kmのキャンプツーリングに出かけたら、それは大冒険だった。

ソロボンネ

失敗して、対策して、失敗して、を繰り返している内に、ある程度出来るようになる。しかし、ある程度まで行くと、それ以上のことは出来なくなってしまった。

バイクに乗って○○のおいしいものを食べただとか、バイクに乗って△△の景色を見てきただとか、そういうことを繰り返すしかなかった。バイクはただの移動手段で、車や電車でも可能なことだった。そういうことを考えるようになりマンネリ化してしまったからだと思う。

周囲のライダーの話から得た情報も、実は雑誌が基だったらしく、そこには私がライダーとして成長しバイクの楽しみ方の幅を広げてくれる情報は無かったのだ。

私自身もバイクの使い勝手を良くして行動範囲を広げる為に何をするのか、とは考えない。そもそも行動範囲が広がるとは思っていなかった。

バイクの楽しみ方は十色もある、と雑誌に書いてあった。ベテランライダーによる凄いことが書かれていると思って鵜呑みにしていたから、それが総てだと思わされていた。だからその十色を塗りつぶしたら楽しみ尽くしたと思ってしまった。

もっと楽しみたければ、新しいバイクに乗り換えて、同じ十色を塗りつぶすのを楽しむしかない。そんな情報しか無いのが現状だった。それを打開してくれたのが、信頼できるバイク屋さんだった。

どんなバイク屋さんと出会うかによって、バイクライフやバイクの価値観には大きな違いが生じて、人生の岐路にも似ているように思える事がある。

乗り続けて知ること、判ること

とある大型バイクのカタログに「行動範囲を広げるパワフルなエンジン」と書いてあった。これは全くの出鱈目だ。私の経験から考えると、行動範囲やバイクの使い方の幅を広げるのは、スペックではなく、経験だ。と現在の私は、少し冷めた見方で、バイクのカタログや雑誌を読んでいる。

と言うのは、空冷スクランブラーと同様に、私のXR230もゴールドウイング1800も、カタログや雑誌を読んだだけで想像していたバイクライフと、いざ購入して乗り始めた現実体験とのギャップがあまりにも大きくて、買って失敗だったかも、と思うことが度々あったからだ。

高田さんは自分がバイク乗りとして楽しむ為に違和感や問題点を改善されて、それらがフィードバックされて現在のように楽しめる仕様になっているのだが、買ったばかりのノーマル状態では、所有欲は一瞬を満たすが、とても楽しみ続けられる代物ではなかったのだ。

SLやXRはトレッキングや林道マシーンであって、とても長距離ツーリングを楽しめるようなバイクではなかったし、ゴールドウイングも新車の状態では大きくて重くて見栄を張るには丁度良く高速道で移動するだけのバイクになりそうだった。

悪路

どのバイクでも基本的なことが最優先で煮詰められて、徐々に手が入り全く別物の乗り味へと変化してバイクとの会話が出来始めると一体感のようなものが生まれくる。

その変化の過程は、数値や情報による疑似体験ではなく、五感による実体験となる。バイクは感性が求められる乗りモノで、そのことが実感できるバイクとの会話は刺激的で心地よくもあり楽しいことだ。

素敵なバイクライフの環境造りは、信頼できるバイク屋さんから

自分のバイクが、新車だから良いわけではなく、こんな程度だったんだ。メンテナンスやモディファイされて良さが引き出されていく過程を目の当たりにすると、楽しめるバイクとは、基本に忠実な過程が必要な事を体験させてもらって自分の中のバイク感が変わる。

バイク屋さん自らがライダーとして楽しみ、その実体験を基にメンテナンスやモディファイを施して、それらを五感で体感して、初めてバイクは素敵な乗り物なんだと実感できることを教えてもらった。

それを知ってしまうと、バイクを楽しむ為には、消耗品交換も必要だが正しいメンテナンスと用途に応じたモディファイが必要な場合もあるということが分かると考え方も変わる。

バイクを売る為には、所有欲や購買意欲を煽り立てる語感による必要以上の情報を出しているのに、楽しみ続ける為に必要なコンディションなどに関する情報はほとんど出さない、そんなバイクメーカーのカタログの言葉や、雑誌の記事に不信感を覚えるのは当然だと思う。

振り返ると、バイクの楽しみ方は型に嵌まってこんなもんだ、と思うのは間違いだった。バイクを取り巻く裏事情のようなものを知って、初めて素敵なバイクライフを送る入り口に辿り着いた感じだった。

皆さんも、素敵なバイク屋さんと出会って、バイクの楽しみ方の十人十色から八百万に塗り替えながら、素敵なバイクライフを送って頂きたいと願う。

この記事の車輌(仕様が異なる場合があります)

お問い合わせ