バイク屋の備忘録

VTR-Fで行く北海道 その2

スラクストンに乗るY.S君は、北海道について色々と情報収集するうちに、富良野、美瑛、ウニ丼、帯広の豚丼、宗谷、キャンプと、初めての北海道を盛りだくさんに楽しみたいとのこと。

宿泊地だけを決めて、其々にフリーで走ることで話はまとまり、VTR-Fを走らせる大雑把なルートを紹介して、打ち合わせは終わった。Y.S君は地図上で、VTR-Fで走るルートを細かく確認し、ナビに登録して、どこでも合流できるよう準備を整えていた。

ルート

新潟港からフェリーに乗船するため、一般道をブラブラ走って、新潟に向かう予定だったが、あれこれと雑用をするうちに夜となり、Y.S君と一緒にNWJC南店から出発して、北陸道、各務原ICへ向かった。T.K氏とは蛭ケ野SAで合流して、新潟港を目指して走り始めた。

北陸道SA

北陸道を一定の速度で淡々と走り続けているが、トンネルに入ると上り下りに関わらず、速度が徐々に上がり始める。空気抵抗が小さくなることが影響しているが、250という小排気量ならではの感覚であり、面白い。

CBR250Rに比べると、アクセルを開けて走らせるという感じも無く、高速道での一般的な常用速度+αで走るには充分。後ろを走る2台のBigバイクのペースを気にすることも無く、日本の道路事情からすれば充分な性能であると思う。

軽量コンパクトな250、VTR-Fをチェックしながら楽しむ北海道

小樽港へ到着して、早速Y.S君所望のウニ丼を食べられる店に向かう。早朝から大盛りを注文してご機嫌の様子。集中豪雨のため札幌や他の地域でも、避難勧告がでていたようだが、影響はなさそう。

小樽

富良野までは、同じルートで向かう。徐々にペースを上げて、高速コーナーの続く登り坂やワインディングを軽快に走り始める。路面はワダチや舗装のひび割れのところも多く、荷物をタップリと積み込んだVTR-Fのエンジン、足回り、車体など、速さより心地良さで走り続けられるVTR-Fツアラー仕様を試すには絶好の条件である。

占冠

路面のウネリが大きく、荒れた路面のコーナーもハイペースで軽快に走り抜けて、何ら不満は無くVTR-Fの走りは予想以上。ハンドルポジションも、ロングツーリングには可も無く不可も無い曖昧さで、最適であるが、シート高は検討の余地あり。足つきを重視した最近の車両は、ロングツーリングでは膝が窮屈となるため、出来ることなら、CB400SBやVTR-F用にハイシートをHONDAよりオプションとして追加して頂きたいものだ。

トラクターを探しに行く

占冠から富良野へ向かい、富良野でY.S君と別れて、美瑛へ向かう道中は、畑にいるトラクターを見ながらノンビリと走り、旧いトラクターを展示してあるところを訪ねた。

富良野

美瑛では、トウモロコシを収穫するトラクターを探して、丘を登ったり下ったり、キョロキョロしながら走りまわり、トウモロコシ畑に、緑と黄色のジョンディアのトラクターを発見。

ジョンディア1 ジョンディア2

畑の方に、トラクターでの収穫を見学させていただきたい旨を伝えたところ、快く承諾していただき、トマトまで頂いた。1時間近く、トウモロコシを収穫するトラクターを見ていたが、飽きる事は無い。面白い。哲也が一緒なら相変わらずだな・・・と云われそう。

トラクター3

北海道を延々と走り続けて、車両をチェックする事も楽しいが、北海道ならではの、大きなトラクターが働く雄大な景色を眺めることも、お気に入りの心地よい一時である。

トラクター2

美瑛の集合地点で合流したあと、其々のルートを走る予定だったが、結局、富良野と美瑛だけが別行動で、後はずっと同じルートを走る事になった。T.K氏は、これといった予定やルートも無く、ずっと一緒に走る事となったが、食べ歩きや温泉など、観光が主体のツーリングだったのか、走り続けるツーリングは初めてのよう。

ロングツーリングを楽しめる仕様をあれこれと・・・

ハイペースで流すVTR-Fの後ろについて走るY.S君は、NWJC2014仕様となったスラクストンの乗り方を色々と試行錯誤するうちに、気負わずもっとリラックスして走る事が、ベストであることに気づいた様で、走りに余裕が生まれてきた。また、ノーマルのスラクストンで走り続けることは、とても無理なペースと路面状況だったが、走る程に愛着が湧いてくるベストコンディションに仕上げられた、スラクストンNWJC2014仕様にはご満悦のよう。

美瑛から雨が降り始めて、稚内へ向かう地方道を走るルートは、道が荒れているが、濡れた路面でもVTR-Fの心地よい走りには、何ら影響はない。タイヤをピレリに交換したことも影響しているように思う。

ウエット路面

キャンプ道具等満載した状態でのツーリングだから、リアサスは少しスプリングにプリロードを掛けた程度だが、ガツンとフルボトムするような荒れた路面でも、フワァと往なして安定感がある。この感じはNC700Xに荷物を満載した状態の走りに似ている。これが、HONDAが云うところのHONDA Multi-Action Systemの威力なのか。

それに比べると、ノーマルのフロントサスの出来は、初心者が乗り易い設定となっているためか、荷物を満載状態にして軽快に走り続けるにはかなり厳しい。フロントスプリングをWPに換装していなければ、これだけ心地よい軽快な走りは得られなかったことを実感する。

同じことが、NC700Xにも言えるが、NC750X LDに乗るT.K氏は、この時点ではまだ気づいていない。その後、ハイペースで流して走り続けるうちに、徐々にその症状が顕れて、或るところを境に、コントロール性が極端に落ちることを体験することになる。

アフリカツイン

小排気量では、初心者や女性をターゲットにしている車両が多いように思うが、レーシーなCBR1000RRにはSP仕様があるように、長年乗り続けてきたベテランライダー達向けて、サスは前後とも調整ができて、積載力やフェアリング効果を高めて、Vツインエンジンを搭載したアフリカツインやバラデロのような、ツーリングSP仕様のVツイン250のツアラーモデルが在ってもよいのではないだろうか。Vツイン搭載のアメリカン、マグナもあるのだから。

そんなことを想いながら、軽快に心地好い走りのVTR-Fで、サロベツ原野を経由して稚内を目指す。

宗谷からキャンプ地の和琴へ

翌日は、まず稚内から宗谷を目指して走り、宗谷丘陵の風景を眺めた。宗谷岬で記念撮影の終ったY.S君は、宗谷岬にある出光のガソリンスタンドで給油して、ガソリンスタンド発行の証明書と交通安全の貝殻を手にして、ご満悦のようである。

宗谷丘陵

宗谷からオホーツク海をながめ、クッチャロ湖の西側を周って、中頓別、歌登、雄武、紋別、美幌を経由して和琴半島のキャンプ地へ到着。翌日は津別峠へ早朝に登り、知床半島を巡り、然別湖でキャンプ。内陸を延々と走り続けるルートで、VTR-Fを走らせることを楽しめた。

宗谷GS

然別へ向かうルートは、ハイペースで走れるルートを選んだ。荒れた路面をかなりのペースで、右へ左へと切り返す走りでも、荷物を満載したVTR-Fは、フレームや、シートレールがよれて不安定になる事は一度も無かった。

シートとリアキャリだけでの積載状態では不安定となる路面状況やペースでも、NWJCオリジナルパーツのツーリングキャリアを装備した積載状態は、抜群の安定感であることも再確認できた。
パッキングについては、振り分けバッグ等を使って、天候に即した装備を簡単に取り出せる仕様を考えてみたい。

林道

途中、一部林道も走ったが、トレッキングごっこを経験して、SL230で林道ツーリングを時々楽しむY.S君は、荷物を積み込んだ、前傾姿勢のスラクストンをなかなか上手く使いこなしていた。

帯広市内を走る

最終日は、然別湖から苫小牧港へ向かう予定だが、ルートは何も決めていない。Y.S君は、帯広の豚丼を所望で、帯広へ向かう。途中からY.S君の先導で帯広市内へ入る。T.K氏も良くご存じの店のようで、人気店なのか行列ができていた。10数年前に、タンデムツーリングの相棒に付き合って、帯広の六花亭へ来た時のことを想い出す。

六花亭

VTR-Fのパフォーマンス

気負いや衒いを捨てて、車格、排気量、カタログスペックやブランドに惑わされることなく、新旧問わず、コンディションを整えて、積載性を高め、路面状況、天候などあらゆる条件下でも気負うこと無く、ある意味万能で、バイクとの一体感を楽しみ、乗れば乗る程に愛着が湧いてくるバイクが、ツーリングライダーにとっては、最高のツアラーであると、バイク屋NWJCは考えている。

パフォーマンス

スポーツツアラー仕様に仕上げたVTR-Fは、荷物もタップリ積み込み、荒れた路面やタイトコーナー、高速コーナー、ハイペースで切り返すワインディング、峠道、雨が降るワインディグなどの条件下でも、終始ペースメーカーとして、2台のBigバイクをハイペースで牽引して走り続けたが、さほどの疲れも無い。

バイク屋NWJCの拘りで、独自のメンテナンスやモディファイを施したエンジンや足回りなどを持つVTR-Fは、軽快に心地良く、ビッグバイクと走り比べても、250であることが負担となることも無く、全行程2,500kmを終始楽しんで心地よく走ることが出来た。

トラクター1

ソロであれば、軽量コンパクトであることを活かして、色々な作物を収穫するトラクターを見る度に、Uターン等を繰り返して、もっとノンビリとしたツーリングを楽しんでいたのでは・・・と思う。最新のVツイン250がこれほど扱いやすく、余裕を持って走り続けることを楽しめる、懐の深いバイクであることを実体験できたことは、バイク屋NWJCとして、ツーリングライダーとして大きな収穫であった。

バイク屋NWJCが、小型ツアラー仕様のベースとして、Made In JAPANのHONDA VTR-Fを選んだことも、納得の行く出来上がりの一因であると満足している。

この記事の車輌・パッケージ(仕様が異なる場合があります)

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