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空冷ボンネビルT100をGoodコンディションで楽しむ

今年も残すとこあとわずかとなり、振り返ると猛暑と集中豪雨で春と秋は瞬く間に過ぎ去った感じだが、日時や天候は時宜を得て、カブ110NWJCコンプリートからSL230TM・CRF250TM・CB400ss-TM・SR500TMに空冷T100-2014仕様など、NWJCツーリングマスター(TM)を駆って自由気ままにフィールドを拡げてキャンプや定番の西を楽しむ事が出来たのは嬉しい限りである。

バイク旅には必須の積載力はメーカー出荷のSTDにリアキャリア等のボルトオンパーツを組みつけた程度では決して心地よい走りは味わえないのはトータルバランスが整っていないからであり、バイク屋自らの実体験に基づいてそれぞれの良さと懐の深さなど、メーカー出荷のSTDからでは想像もできない意外さを発揮させた各機種のNWJCツーリングマスター(TM)を駆って素敵なバイクライフを満喫できたのは何よりである。

バイク屋の備忘録『トライアンフ 空冷ボンネビルT100で定番の西へ』

10月初旬はお気に入りのボンネビルT100-2014仕様で定番の西を2泊3日で楽しみ、11月初旬はT100-2014仕様と同様に五感が刺激され速さより心地よさで操る楽しさが魅力のTraditinalモデルのCB400ss-TMとSR500TMの2台で能登へキャンプに出かけることもできた。

バイクのメンテナンスも様々だが、消耗品交換やボルトオンパーツの組付けなどでは作業後に試運転しても硬いとか軟らかいとか音が変わった程度の事は誰でも判るのは当然で、乗り手が感覚的に違和感や問題と捉えていることについては、「旧いから」とか「個体差が云々」に加えて少し専門的な用語によりその場を取り繕う事も多々あるようだが、そのバイクの良さを引き出して問題を解決するためにはジックリと乗る実体験が無い限り何も判らず対応できないのが現実であると過去からの経験により実感している。

トライアンフ最後の空冷ボンネビルは2001年より乗り始めて、最初は大変なものに手を出してしまったと思うくらいつかみどころのない乗り難くさであったが、違和感や問題の原因を探り対策することも面白さや楽しさであり、2014年にはスクランブラーも同様にエンジンから足回りに至るまで各部を深化させて、速さより心地よさで自由気ままにフィールドを拡げてバイク旅も楽しめる2014仕様となり、トライアンフ最後の空冷モダンクラシックによる実体験に基づいた提案は素敵なバイクライフへの応援でもあると考えている。

トライアンフ空冷モダンクラシックならではの魅力はNWJC独自のメンテナンスによりコンディションを整えると、持て余すことの無い体感フィーリングの良さによる五感で操る楽しさを実感できる事であり、カテゴリーやスペックに囚われることや時代の流行り廃りに流されること無く、昔ながらの素朴な乗り味で気負うことも無く自由気ままにフィールドを拡げて素敵なバイクライフを満喫できる良き相棒である。

その良さに気づけば価値ある道具であり良き相棒として素敵なバイクライフへの第一歩となるだろう。

これからトライアンフ最後の空冷ボンネビルT100を楽しむ

「これから空冷ボンネビルT100に乗りたいのですが、程度の良い物はありませんか」と大阪からJ・Tさんが来店された。

トライアンフ最後の空冷モダンクラシックを楽しまれている方は大勢見えますが、手放す方は健康面で不安のある方が極僅かで、ほとんどの方が乗り続けて楽しまれている現状をお伝えしたところ、他で見つけて購入した空冷ボンネビルT100でもメンテナンスをお願いできますかとのこと。

バイク屋North Wing JCでは1台でも多くのトライアンフ空冷モダンクラシックをGoodコンディションに整えて、良き相棒として素敵なバイクライフを満喫して頂きたい旨をお伝えしたのが、暑い夏の盛りのころだったように思う。

その後、大手量販店で見つけたT100を購入されて10月初旬にメンテナンスに関する相談をしたいので来店したいと連絡を頂いたのですが、定番の西へ出かけていたので日程を変更して頂き後日実車の状態を確認して、しばらく眠っていた車両のようで少し走らせて全体を馴染ませてからメンテナンスを始めることで打ち合わせを終えた。

メンテナンスのために来店された当日は、大荒れの天気となりドシャ降りの雨の中を来店され翌日のメンテナンスは予定通り。

全体を馴染ませるためにしばらく走らせたときの感想は、現行の水冷ボンネビルとのエンジン特性の違いや、メーカー出荷状態のままの空冷T100についてフレーム剛性など経験豊富なベテランライダーらしい的を射た話は同じバイク乗りとして同感である。

J・Tさんのエンジンコンディションは、過去メンテナンスを施した他の空冷モダンクラシック車両とほぼ同じ状態で、メンテナンス後の試乗ではどの程度変わるものなのか半信半疑だったことも払拭できたとのことで、まずはエンジンコンディションを整えることから素敵なバイクライフが始まることを実感して頂けた事は何より。

その後、J・Tさんよりエンジンメンテナンス後のレポートが届きました。

経験豊富なベテランライダーの感想は、トライアンフ空冷モダンクラシックを楽しみたい方々に参考としていただければと思う。

☆購入時点での印象

空冷ボンネビルT100のインジェクションモデルを中古車の量販店で購入しました。当初の印象は以下のとおりです。

  • 取り回しが重く、フロントタイヤが急に切れ込むため、ハンドルを押さえるのに腕力がいる。
  • エンジンのトルクが細く、発進の際は半クラッチを長めに当てながら慎重にエンジンの回転を合わせないとエンストする。
  • 中~高回転域では、とりあえずエンジンは回るものの滑らかさに欠け、パワーが付いてこない。
  • 走行中も全般的に挙動が重い(よく言えば重厚感がある)。ただ、ワインディングを走ると、意外と運動性能が高く、スポーツバイクの片鱗が伺える。よって、一連の挙動の重さは本来の姿ではないのではないかと推測される。

☆メンテナンス後の感想

1. 市街地

エンジンはアイドリング付近からトルクが立ち上がり、発進が容易となり、シフトアップの際のスピードの乗りも明らかに違います。ただし、これはパワーアップしたというより、あくまでも865ccのバイクらしい自然なフィーリングとなった印象です。カチッと節度感を増したミッションとディスク交換によってフィーリングが良くなったブレーキタッチと相まって、車体が一回り小さくなった感覚でとにかく扱いやすくなりました。

2. 高速道路

お店から自宅までの180kmの大半が高速道路でしたが、高速走行に常用する4千~5千回転あたりのエンジンの回り方が滑らかで、以前のような「頑張って回っている」感が全くありません。

試しにギアを一段落とし、さらに回転数を上げても苦も無く回りますが、いくら回転数を上げても、大型バイクにありがちな暴力的にパワーがさく裂して恐怖を感じるといったことがありません。どの回転数でも必要にして十分なパワーデリバリーで、どの速度域でも上質なフィーリングが保たれています。

車体の動きも滑らかで、明らかにフリクション(=動きの重さ)が減っています。フロント19インチの鉄リムホイールのジャイロ効果による直進安定性と、高剛性でありながら硬さを感じさせないフレームと相まって、安定感抜群の極上のクルージングが味わえます。

高速道路では市街地とは逆に、一回り大きな車体となった印象です。晩秋の夜間の長距離移動でしたが、上質感を増したボンネビルに身をゆだね、どのような感想を述べるか楽しく考えているうちに、大阪へ着いてしまいました。

ただ、速度を上げるとサスペンションの挙動が不安定になることがあり、次回以降の改善ポイントです。

3. 車体の取り回し

高速のサービスエリアや自宅マンションの駐輪スペースで、明らかに取り回しが軽くなっていることに気付きました。体感的な車両重量は変わらないものの、少しの入力で軽やかにタイヤが転がり、フリクションが全くなく、ハンドルの切れもスムーズなため、余計な腕力が必要ありません。
走行中もフリクションの低減が感じられましたが、人力で動かしてみるとよりはっきりとします。これはバラしたパーツの組付けの際のバランス取りが良く、ボルトの締め付けを適切に行っている結果だと思われます。当たり前の作業を一つ一つ丁寧に行うことが、全体の仕上がりに大きな違いを生むことが認識できました。

☆取り付けてもらったパーツのインプレッション

1. ヘッドライト

これまでハロゲン球のバイクを乗り継いできましたが、ツーリング中に不意の球切れを何度も経験したため、車両購入時に長寿命のLEDバルブを装着しました。ノーマルはクリアレンズ+リフレクター方式ですが、髙田社長から「大して明るくないでしょう?」と指摘され、社長の勧めでカットレンズ方式のCIBIEに換えてもらいました。
光量は変わらないため、劇的に明るくなったわけではないですが、カットレンズにより程よく光が拡散され、LEDバルブの特徴である指向性の高さ(直線的に照射する)が緩和されることで、電球に近い視認性となりました。LED特有の明暗のコントラストが高すぎることによる照射範囲の周囲の見えづらさが改善されるため、視力が衰えてきた中高年にお勧めのカスタムです。もちろんクラシックタイプの車両によく似合うデザインもグッド。

2. ウインドスクリーン

ノースウイングJCオリジナルスクリーンは、風防効果と整流効果のバランスが絶妙で、スタイリングもボンネビルによく似合い後付け感が全くありません。海外ブランド品の半額程度なのもグッド。

3. ブレーキディスク

ノーマルブレーキは、分厚いディスクを握力で握りしめる感覚で、これがクラシックな味付けなのか?と思っていましたが、ディスクを交換することで、違和感のないブレーキタッチになりました。効きがソリッドになりましたが、簡単にロックしそうな過剰な鋭さはなく、あくまでも自然なフィーリングで操作性が良くなりました。

☆ノースウイングJCのメンテナンスについて

ノースウイングJCのメンテナンスは「調律」という言葉がふさわしいと思います。全体のバランスを整え、素材の旨味を存分に引き出す方向性です。これまで2回メンテナンスをお願いしましたが、性能がアップしたというより、ボンネビルの本来の性能が引き出され、バイクの素性の良さを体感できるようになったと感じています。

また、整備技術の高さや作業の丁寧さもさることながら、髙田社長自ら長年ボンネビルに乗ってこられた豊富な経験に基づく的確なアドバイスは、他のお店では決して聞けない貴重な情報ばかりです。これからさらに車体を仕上げていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

あとがき

トライアンフ最後の空冷T100が持つエンジン特性の良さを実感された事は何よりでした。新しいモノがすべてに良いわけではなく、空冷ボンネビルT100の良さを如何に引き出すことができるか、新たなバイクライフをGoodコンディションに整えることで応援できる事は嬉しい限りです。

J・Tさんの空冷T100をメンテナンスした少し前に東京のH・Iさんの空冷T100も同様のメンテナンスを施しJ・Tさんと同様に心地よい走りを得ることができたとのこと。

大阪のJ・Tさん同様に百分の一ミリ単位のことで、何がどれだけ変わるのかイメージが出来ず多少でも変わればと思われていたようだが、その違いは想像以上だったようで空冷ボンネビルT100の良さを少し実体験されたのは何よりです。

トライアンフ最後の空冷モダンクラシックを1台でも多くのGoodコンディションに整えてその良さを実感していただきたいと常々思う次第です。何なりとご相談ください。

この記事の車輌・パッケージ(仕様が異なる場合があります)

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