バイク屋の備忘録

CB400SSツーリングマスター(TM)で飛越へ

4月初旬はCRF250L-TMで春爛漫の能登を楽しみ、今回は五箇山トンネルを抜けた峠から散居村を眺め集落の中をポコポコと極低速で駆け抜け、雪をかぶった立山連峰を眺め新緑のワインディングをCB400SSツーリングマスター(TM)3台で駆け抜けて、バイク三昧の日々を楽しむ今日この頃。

昨年はコロナ禍の影響もありS・Yさんとアツシの日程が合わず、おっさんライダーはカブ110NWJCコンプリートを駆って春爛漫の木曽路をソロで楽しんできた。

今年の春はそれぞれの都合もよく、CB400SS-TM3台で飛越方面を楽しむことができた。

今年の初乗りをCB400SS-TMで共に楽しんだS・Yさんは、ボランティアと称したライフワークは相伝により世代交代が始まると何かと大忙しになり、今回も急なことで何とか夕方までに帰宅できればとのこととなった。出発を僅か早め北陸道も少し利用したが、一般道での走りは悠々とのんびりで何度も立ち止まり脇道へ逸れるなど、いつも通りの道草を存分に楽しむことができた。

少し時間に余裕を持つために一般道の予定を変更して、走り慣れた郡上から五箇山までは北陸道を利用して一気に駆け抜けたが、専用スクリーンの防風効果は風圧によるストレスもなく、BigシングルのCB400SS-TMの高速巡航は意外にも楽々で、知る人ぞ知る、である。

アツシは我々より短く貴重なシーズンが始まったことを歓び、グレーから赤みを帯び新緑への季節の移り変わりを道すがら楽しみ一般道をのんびりと駆けて予定通りに五箇山IC出口で合流した。

それぞれのCB400SS-TMはGoodコンディションで、新緑のワインディングでは思いのままに複雑なラインを描く面白さを存分に楽しみ、飛騨の湿原で水芭蕉を観賞した後は青空ランチを楽しみながら『速さより心地よさ』で駆けたCB400SS-TMの話題は尽きる事が無く、良き時間を過ごすことができた。

飛騨の湿原では意外な事があり、駐車場へ入ると見たことのあるカブ110NWJCコンプリートType4をアツシが発見。

それはS・Oさんの車両で湿原への歩道を向こうからS・Oさんが歩いてきた。奇遇である。

「僕んちのカミさん」の飛び入り参加もあり、湿原では水芭蕉をはじめ様々な植物についてガイドをしていただき、その後は皆で青空ランチを楽しんだ

S・Oさんは富山方面へ向かうとのことで共に山道を下り北と南に分かれてそれぞれのバイク旅の続きが再開した。

飛騨のアツシとS・Yさんは顔見知りだが、CB400SS-TMを共に楽しむのは初めての事。

長年乗り続けたCB400SSがNWJC独自のメンテナンスとモディファイによりCB400SS-TMへと深化すると、『何かに特化することの無い曖昧さ』の意味は懐の深さとでも云えばよいのか、何とも言い表せないCB400SS-TMの意外尽くめの実力にはどちらも満面の笑み。

15~20年前の旧いCB400SSがCB400SS-TMへと深化した過程を振り返ると、時間の経過による流行り廃りに流されることも無く、大切に使い続けた道具の価値と、販売目的の市場価格などの価値観との違いは、大切に乗り続けたライダーのみが知ることである。

NWJCツーリングマスター(TM)とは

車格や排気量に関わらず、メーカー出荷状態のスタンダードでは心地よく楽しむ事が出来ない場合が多く見受けられるが、「旧いから」とか「こんなものです」として売るがための提灯記事では新製品効果と疑似体験のみで違和感や問題に触れることも無く、バイク屋による僅かな調整や提案で対策できることにも触れないのは何故か。

NWJCツーリングマスター(TM)はSL230による欲張りなおっさん仕様に端を発して、人の関わる領域が広い良き時代のアナログバイクの中から選びぬいて、持て余すことの無い車格と使いこなせる排気量をベース車として、普段使いから道を選ぶことも無く自由気ままにフィールドを拡げ楽しむバイク旅など、バイクライフを満喫することを目的としたのが始まりである。

良き時代のアナログバイクに加えて、持て余すことの無い現行モデルの250クラスへのダウンサイジングにより普段使いから自由気ままにフィールドを拡げてバイク旅も楽しみたいとの要望があり、新旧に関わらず『速さより心地よさ』『何かに特化することの無い曖昧さ』『和洋折衷のような大らかさ』をNWJCツーリングマスターのコンセプトとしている。

バイク屋のバイク乗りとしての実体験に基づいて、バイク旅には必須の積載力を高めるリアキャリアKitに、防風効果を高めるスクリーンやコンフォートシートなど、NWJCオリジナル機能パーツとNWJC独自のメンテナンスとモディファイによりトータルバランスを整えてライダーが心地よく走り続けられる仕様をNWJCツーリングマスターとして提案している。

今回、皆で楽しんだCB400ss-TMもメーカー出荷状態のCB400ssのスタンダードではバイク旅を楽しめるような代物ではないが、それはカテゴリー、スペック、車格、新旧などの問題ではない。

持て余すことのない車格のHonda250クラスの現行モデルでも、キャンプなど楽しみながらフル積載で何日も心地よく走り続けてバイク旅を楽しめるスタンダードモデルは見当たらないのが現実である。

ブランドやスペック、新製品効果により情緒的な価値観など所有欲をあおるだけの場合と、情緒的な価値観と違和感や問題点を物理的に対応して両立させるバイク屋自らの実体験に基づいた提案の場合では、バイク屋とバイクShopの経験や対応により乗り出してから始まるバイクライフには大きな違いが生じると実感している。

云い方を替えれば、バイクに乗らないバイク屋やバイクShopとそのスタッフでは違和感や問題点などは五感で知ることも無く何も分らないままだから、売るがための提灯記事による疑似体験の語感に便乗して活字の僕となるようだが、乗りだしてから始まるバイクライフには実体験に基づいた提案が肝要である。

それぞれのCB400ssツーリングマスター(TM)

CB400ssのツーリングマスター(TM)企画は飛騨のアツシからの要望で始まり、メーカー出荷状態のスタンダードを定番ルートで走らせると、旧型となって各部の経年劣化も含めてチョイ乗りでは判らない事や何をどのようにモディファイすればよいのか、様々な違和感や問題点が浮かび上がるのと同時に過去の経験から対策のヒントも見え隠れしながら浮かんでくるから面白いものである。

アクセル操作に反応が鈍いエンジンは歯切れが悪く、空冷シングルらしい鼓動感は弱く、モタモタした感じはストレスとなり走り続けることにはウンザリする。それに加えて足回りはクタクタでチョイなら何とかだが、荷物を積み込んで走り続けるバイク旅などはなから楽しめるとは思えない。

CB400SSも始まりはそんな感じだったが、エンジン特性は別として物足りなさと分かりやすさはYamaha・SR500にも似て、ひろう・つかせる等のキャブ車ならではのよき時代の素朴な乗り味は、アナログならではのライダーが関わる領域の広さは何とも言い表せない面白さと楽しさがある。

CB400ss-TMへの深化は、道草の為にそれた脇道が悪路となってもビッグバイクのように持て余すことのない車格で、エンジン・足回り・積載力のトータルバランスが整っていれば、『和洋折衷のような大らかさ』でフル積載でも気負うことなく2輪2足走行でポコポコと難なく通過してバイク旅を楽しむことが出来る。

CB400ss-TMに限らずNWJCツーリングマスターを楽しんでいるライダー諸兄は、カテゴリーやスペックにライテクなどマニアックに難しく考えると、自由気ままにフィールドを拡げてバイク旅やバイクライフは楽しめないことをよくご存じである。

また、見せかけは同じモダンクラシック風でも電子制御満載で、排気量や音の割には心地よい走りを楽しめず似て非なるモノも多数存在しているのも現実である。

積載性を高めるキャリア類のボルトオンパーツの組み付けだけでは無理だが、メーカー出荷のSTDではバイク旅を心地よく楽しめない事は、SL230を始めとしてXR230・CB400ss・CRF250L・CB250R・SR500・セロー250など十数機種をツーリングマスターへと深化させたバイク屋の実体験により、エンジン・足回り・積載力のトータルバランスを如何に高めるか、それが要点になると実感している。

余談だが、旧い車両である事は別として当時メーカー出荷のSL230に荷物を満載して何日も楽しく走り続ける事が楽しめるか、云うまでも無くマウテントレールのSL230では積載状態でなくても長距離ツーリングは苦痛である。

しかし、NWJCツーリングマスターへと深化SL230TMであれば、日帰りで700~900Kmを駆ける事も、速さより心地よさで楽しめることはSL230TMを楽しまれているライダー諸兄はご存知のこと。

CB400ss-TMも同様にSTDでは想像もできない意外さで普段使いからフル積載のバイク旅まで存分に楽しむ事が出来ることに気づいたアツシは、憧れだったアフリカツインの価値を見出す事も無いままだったが、手放すことには納得できたようであった。

CB400ssから深化したCB400ss-TMを駆るS・Yさんも、リターンライダーとして再びバイクライフを楽しみ始めたが遠乗りは自信がないとのことだったが、長年ガレージのオブジェと化していたCB400ssがツーリングマスターへと深化したことで気負わず遠出も悠々と楽しめるようになったとのこと。

今回も全走行距離は400Km以上で、複雑な線を悠々と描きながら、立ち止まったり、脇道へ逸れたり、青空ランチなど、速さより心地よさでバイク旅を共に楽しめたことは何よりで嬉しい限りである。

よき時間を生み出す事やよき相棒の魅力を引き出すことなど、その楽しみ方は十人十色だが素敵なバイクライフへの提案は、バイク屋の実体験により五感で道具としての価値に気づくことや知ることが必須であると、バイク屋のおっさんライダーは常々そう思う次第である。

この記事の車輌・パッケージ(仕様が異なる場合があります)

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