令和初の長距離でトライアンフ 空冷スクランブラーを振り返る

今年は、公私ともにしなければならないことが沢山あり、なかなか長距離ツーリングに出かけられず、短距離ツーリングをコツコツ楽しむだけの日々を送っていた。

天気予報は雨模様のようだったが、トライアンフ空冷スクランブラー2014仕様で、夏季休暇を活用して、2年ぶりに4泊5日で青森県までの長丁場で東北各地を楽しんで走ってきた。

平成18年3月、空冷ボンネビル800から空冷スクランブラー900に乗り換えて、それから早いもので13年が経過して走行距離は80,000kmを超えたが、NWJC独自の定期的なメンテナンスは効果絶大で快調そのもの。

50歳を目前に控えた私には、取り回しは少し重く感じるようになったが、動き始めて脳と身体とスクランブラーがじわじわと繋がり始めると、重さは全く感じなくなる。真夏に天候不順では快適とは言えないが、空冷スクランブラー2014TM仕様なら楽しい旅にしてくれると確信していた。

車両(もの)に対する安心感と同時にライダーとしての自分に対する安心感、すなわち自信が備わった。これは知識で得たものとは明らかに違う、経験に裏付けられた自信だから、真夏に天気が悪くても、2,000km以上の長丁場を楽しむことが出来ると確信していたのだ。

東北を楽しんできたトライアンフ空冷スクランブラーに興味があり、中古車を探している人の話しを聞いて、Webで中古車検索をしてみると、発売から10年以上経つ車両であるにも関わらず、1~2万キロ前後で3万km以上走った車両はほとんどない。

私の周りの、空冷モダンクラシックシリーズに乗っているライダーは、少なくとも5万km以上走っている方が多いので、空冷ボンネビルやスクランブラーの中古車市場の現状を見て驚いた。何故、そんな状況になっているのだろう?

ボンネビルT100を振り返る

15年以上前、雑誌も読まずカタログも読まずの状態で、NWJCで空冷のトライアンフ ボンネビル800に試乗した時には、なんてバイクなんだと衝撃を受けた。

その当時乗っていたBMW R1100GSと比べると、全く曲がらない(バンクさせるとすぐにステップを擦ってしまう)止まらない(雨の下り坂でフロントブレーキをギュッと握ってもロックしない)凄い車両だと思った。

しかし同時に、その頃始めたトレッキングごっこの効果からか、ライダーのスキルがそのまま映し出される素朴な乗り味は、今まで経験したことのない親近感を覚えた。

そして素朴な乗り味が気に入り空冷ボンネビル800を購入した。エンジン調整を始めNWJC独自のメンテナンスとモディファイを少しずつ段階的に施してもらった。また、各パートのメンテナンスによる乗り味の変化は、ボンネビルT100との会話がより楽しいものになり、北海道から九州までの各地をツーリングで楽しむことができた。

そのボンネビル800は、高田さんのバイク仲間である「地蔵さん」のもとで、私が乗っていた頃よりさらに深化して2014仕様となり、900と比べても遜色のない走りで走行距離は5万kmを超え、今も元気に地蔵さんとの会話を楽しんでいる。

空冷スクランブラー900を振り返る

スクランブラーに乗り換えた頃は、新しいおもちゃを手に入れた子供のように、新しいバイクだから、という楽しさで満たされていた。360°から270°のクランクに変わった乗り味は、鼓動感があり、楽しい日々が少しの間続いた。

2~3週間で慣らし運転の1,000kmを超え、点検+αのメンテナンスが施され、新車時よりも乗り易くなったスクランブラーだったが、長距離ツーリングに出かけ徐々に冷静に見つめるようになると、大変乗り辛い車両だと気付きショックを受けた。

ハンドルポジションが悪いので長時間乗ると疲れるし、排気量900㏄エンジンも非力で、高速道路の長い上り坂を800㏄ボンネビルの感覚で走ると失速してしまう。こんなはずじゃなかったのに、と正直思った。

雑誌やWebの情報を読むと、スティーブマックイーンの格好良い姿とともに、道を選ばず何処へでも行けるようなイメージを抱かせる内容だった。排気量も800㏄から900㏄へと大きくなって夢はとても膨らんでいた。

しかし、チョイ乗り程度では分からないことだらけで、実際には全く想い描いたイメージと違うではないか。情報操作されているとしか思えない。

現在の雑誌やWebの情報と私がバイクに乗り始めた30年前の情報とを比較しても、ほとんど変わりがない。言葉を巧みに使ってすごく良いバイクだというイメージを作り上げ、騙しにかかっているような印象さえ受ける。

コンピューター制御によるデバイスを装備することにより、ライダーのスキルとは無縁で誰でも楽しめるようなイメージで、雑誌に書いてあったから、カタログに書いてあったから信頼できるというのは、誤解を招く表現が多くなってむしろ悪くなっているように思う。

スクランブラーとの13年間で感じたこと思うこと

さて話は戻るが、新車の頃の空冷スクランブラーは、ボンネビル800と比べると、ポジションが悪くて非力で、旅バイクの素質はほとんどないように思えた。しかし、ボンネビルと同様、素朴なバイクらしい乗り味と、270度クランクの鼓動感は心地よく、どことなく嫌いになれない良さがあった。

自ら楽しむことを最優先とするバイク屋NWJCの高田さんは、速さより心地良さで走り続ける楽しさをテーマとして、バイク屋のバイク乗りとしての実体験から違和感や問題点を追究されている。

NWJCでは2001年から始まった、ボンネビルによる実体験の蓄積から得た豊富なデータで、スクランブラーは徐々にその良さを発揮し始めて、私の思い描いていた素敵なバイクライフは現実となり始めた。

この13年の経験を振り返ると、空冷トライアンフモダンクラシックシリーズの仕様には、とても幅広い変化があった。その一部である2014仕様も千差万別でとても奥が深く、高田さんが提唱する「速さより心地よさで旅を楽しむ」ツーリングマスターに至るまで幅があり、雲泥の差がある。

形だけ同じ空冷スクランブラー2014仕様を所有しているバイクショップ店長さんもおられるようだが、どれだけの年月、どれだけの距離を走っても、楽しみ方、バイクへの拘り方の「質」に違いがあるから、メンテナンスデーターだけではその性能差を埋めることが出来ないようだ。

NWJCへは、関東・関西遠くは東北・中国四国と、全国各地のナンバープレートが付いた空冷ボンネビルやスクランブラーがメンテナンスにやってくるのを見ても、ライダー目線からの実体験に基づいた独自のメンテナンスが好評であることも納得できる。

余談だが、トライアンフと比べれば品質が高いと思えた私のHONDAゴールドウイングも、空冷スクランブラー同様で、エンジンコンディションやサスペンション及び足回り等を含むメンテナンスに関して、高田さんと同じゴールドウイングだったから、後追い体験ができたことは幸運であった。

HONDAのフラッグシップであるゴールドウイングの扱いやすさにも、メンテナンスによる味付けで雲泥の差が生まれる事を知ることが出来たのは驚きであった。

バイク屋さんがライダーの目線で、というのは雑誌やWebの情報でも、書いてあることが多い。その多くは、書かれているというより、誰かが書いている情報をコピー&ペーストし拡散しているという感じだ。良い内容であることもあるが、実体験に基づいて書かれているのは、極めて少数だ。

バイクに乗らずにカタログトークだけしかできない店員さんや、オイルやタイヤなどの部品交換やボルトオンパーツの組み付け専門のメカニックさんも多いから、「こんなもんですよ」という対応が横行してしまっているのだろう。

バイクを購入したショップで、自分の感じ取った違和感を話してみても、理解してもらえず「それがこのバイクの乗り味ですよ」「そんなもんですよ」と言う対応をされればどうすればよいのか。

キチンとメンテナンス&モディファイを施せば、とても楽しく旅が出来る空冷モダンクラシック車両なのに、20,000km走ることなく手放してしまうライダーが多いのは、バイクショップにも問題があると思う。新車を売りたい気持ちもわかるが、それが中古車市場を見ると反映されていると思う。

私が、空冷スクランブラー900を通じて、13年以上かけて体験してきたことは、段階を踏んで車両の良さを引き出した体験をさせて頂いた処に、私の財産となった経験の源があるから、一般的な情報とは、かなり大きな隔たりと違いがあるのをいつも感じている。

皆さんも、実体験に基づいたノウハウを提供して頂けるバイク屋さんの許で、素敵なバイクライフを過ごしてほしいと切に願う。

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