バイク屋の備忘録

ボンネビルT100とスクランブラー900で

朝晩はまだ寒さが残っているが、一雨ごとに暖かくなりバイク乗りには嬉しい季節が帰ってきた。

2月の中ごろは、SL230TMと同様に旅バイクへと深化したXR230TMを駆る村田さんやKさん達と共に西日本へ出かける予定だったが、全国的に天候が悪く中国地方の日本海側は大雪となり瀬戸内海側の四国でも雪が降り、西日本へのツーリングは断念して天気予報をあてにして南紀へ出かけた。

しかし、南紀でも強風と雪が降るなど悪天候となったが、XR230TMならではの軽量コンパクトな車体とエンジンフィーリングの良さは、悪天候でもロングツーリングへ出かけたくなる気持ちにかり立てられて、旅バイクとしての実力とダウンサイジングによる現実的な実用性を実感されたようだ。

SL230欲張りなおっさん仕様を仕上げるために定番の西日本を走ったのは昨年の3月のこと。今年の3月も、空冷スクランブラーを駆る村田さんと空冷ボンネビルT100で今年初の西日本を楽しんできた。

Kさんも、空冷スクランブラーでは久々の西日本を楽しみにされていたが、風邪のためやむなくの養生となった。お大事に・・・。

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バイク屋のおっさんは、お気に入りの西日本をそれぞれの季節で楽しみ、チョイ乗りでは気づくことのない違和感や問題点など解決への糸口や深化させるためのヒントなど多くのことを得てきた。チョイ乗りの定番ルートや長距離の定番ルートは、バイクのトータルバランスを整えたりモディファイを施すうえで、バイク屋のバイク乗りとして無くてはならないものである。

岩国へ高速道で移動

3月10日土曜日の夕方5時半に岐阜を出発、岩国を目指して走り始め三木SAで村田さんと合流。昨年同様夜間は寒さが厳しいから防寒対策として、グリップヒーターを装備していないボンネにはハンドルカバーを装着して手の防寒を優先した。

ボンネビルT100専用NWJCオリジナルスクリーンの防風効果は、トライアンフ純正のように風を巻き込むことも無く寒さを凌ぐには有効であるが、スクリーンを装備していないSL230を走らせた昨年同様おっさんライダーには寒さが骨身にこたえて、200Km前後で休憩しながらの移動となった。

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3年前の1月は日没後0度~マイナス3度の木曽路をカブ110NWJCコンプリートにスノータイヤを履いて走ったが寒さを苦にすることも無かった。あれから僅かに歳を重ねただけだが3度から5度の夜間を走り続けることに厳しさを実感するのは何故だろう。などと分かりきったことを思うのは老いへのささやかな抗いか。

村田さんも「寒いですね」と吐く息が白い。山陽道 西条付近の気温は0度で、岩国への到着時間は昨年のSL230と同様で深夜2時過ぎの到着となった。

ゴールドウイング等の大型ツアラーは、シートヒーターなど快適装備が満載であるが、バイクの快適さなど軽トラックにも敵わないから目的地への移動だけならバイクよりも車が快適である。

定番の西日本を楽しむ

翌日は、上関の河津桜を見に行くため早めの出発予定だったが、村田さんからの電話で目が覚めた。昨年は朝寝坊のため中止したが、またまた朝寝坊・・・。

1時間遅れで走り始めたが、日曜日で天気も良く上関の橋を渡った先で車の列が目に入る。村田さんと相談して対岸より花見をすることに。

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平生の阿多田交流館では、特攻兵器「回天」の実物大の模型を見学しましたが、レプリカと云えども皇国に殉じた方々へ思いをめぐらせると、知覧を訪ねた時と同じ複雑な気持ちが溢れて言葉になりません。『拝』

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神籠石のある岩城山へ登り柳井から周南方面を眺めながら「どこへ行こうか・・」と、村田さんとは行った先々で自由気ままにルートを決めるのがいつものことである。目的地へ行くことが目的ではなく、道すがらその季節だけの風景と、軽快なワインディングから荒れた路面や未舗装など、道路状況や天候なども含みバイクとの会話を楽しむことが第一であることは互いに納得である。

まずは、津和野へ向かいその後三次へ向けて一般道を走りつなぐことにした。ボンネの程よいサイズ感と機械式の操作感など慣れ親しんだ感覚が心地よく、スクランブラーと共に右へ左へと心地よく走り続けた。北広島あたりでは路肩の雪が多く、路面が凍結したところもあったが難なく走りぬけ、日没後は配光がお気に入りのシビエのヘッドライトが路面を照らしだし、夜間でもストレスなく走り続けて三次へ到着。

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翌日の月曜日は、昨年SLとXR230を走らせた蒜山へ向かうことにした。蒜山から用瀬、和田山へと、二日目も信号の少ない道を速さより心地よさで走りつなぎ、綾部で村田さんと別れて、熊川宿では最後の休憩をして無事に岐阜へ到着。

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1日目は夕方から岩国まで約500Km移動して、日曜月曜の二日間で約900Kmを自由気ままに走り、使い慣れたボンネビル2014仕様の素朴な乗り味は格別で、有意義で充実した時間を過ごすことが出来た。

旅バイク

長い距離を走り続ける程にライダーとバイクの距離が近づくようにも思えるのだが、エンジンをはじめ足回りなど各部のコンディションが整ったバイクでなければ本来の良さに触れることも無く、バイクとの距離は縮まることはないだろう。また、違和感や問題点を味と思い込みライテクで云々などと勘違いしてしまうから要注意である。

夕焼け2

カブ110NWJCコンプリート・SL230TM・トライアンフ空冷モダンクラシックのボンネビルやスクランブラーの2014仕様など、バイク屋のバイク乗りとしての実体験に基づいて培った独自の観点から、トータルバランスを整えたバイクには共通点がある。

雪道1

スペックやカテゴリーは二の次で、旅バイクとして必須項目である積載力と積載時の安定感や操作性など、現実的な実用性が旅バイクとしての必須要件である。と、おっさんライダーは実感している。

空冷ボンネビルT100

空冷ボンネは発売と同時に乗り始めて18年目を迎えた。800と900のキャブ仕様からインジェクション仕様へと乗り継ぎ、特に違和感を覚えるところは見直し、全体のバランスを整えることを繰り返して、速さより心地よさで走り続ける楽しさのある2014仕様へと深化させることが出来た。

夕焼け1

NWJC2014仕様のボンネやスクランブラーは、フル積載でも安定感と操縦性が両立して、気負うことなく自由気ままに速さより心地よさで旅を楽しむことが出来る旅バイクでもある。

キャブ仕様のボンネでも5速1200~1300回転40Km/hあたりからノッキングも無く走れて、5速のままでも1500回転以上であれば滑らかな加速で、登り下りに関わらず悠々と走り続けることが出来る。また、ハイペースになると使い慣れた道具として人車一体でその真価を発揮するところもお気に入りである。

雪原

しかし、スクランブラーのような270クランクの持つ心地よい鼓動は無いから、淡々と走り続けるときは少し退屈になることもあるが、良き関係というか相性が良いとでも云うのか、スペックや移動距離などは単純に数値化できて分かりやすいが、感覚的なことは上手く表現できないもどかしさがある。

除雪車

昔ながらの雰囲気を持つクラシックモデルも、環境問題等も含み廃版となり再び登場してくると、外観はクラシック風でも中身は、水冷化されライドバイワイヤーやトラクションコントロールなど電子制御の塊となりスペックなどの数値は優れていても、本来の良さである素朴な乗り味は見事に失せている。

用瀬

新しい『モノ』がすべてに優れているわけではない。発売から18年経つ空冷ボンネビルや空冷スクランブラーは、人の関わる領域が広く、バイクは体の一部として多くの情報を収集して、人車一体で操る面白さがあり、昨今のバイクが失った昔ながらの素朴な乗り味は、時代が変わっても流れにのみ込まれることなく輝いている。 

夕焼け3

最近はダウンサイジングの事ばかりで、方向性が変わったのではないかと問われることもあるが、ダウンサイジングへの提案はビッグバイクを否定することではない。スペックやカテゴリーなのか、操作感なのか、新型か旧型なのか、人それぞれではあるが、バイクが楽しいと思えることころまで引き返すこともできるのではないか、と思う次第である。

熊川宿

バイク屋のバイク乗りとして、おっさんライダーが自ら楽しんでいるバイクライフを伝えることもできればと思う次第である。また、様々な情報が氾濫している時代だからこそ、バイク屋として揺ぎ無い価値観や裏づけは自らの実体験により培われたことが基となっている。

この記事の車輌・パッケージ(仕様が異なる場合があります)

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