バイク屋の備忘録

『トレッキングごっこ』 001

『トレッキングごっこ』に久々の参加

8月13日は、バイクライフをより楽しく豊かにすることを目的としている「トレッキングごっこを楽しむ会」の代表である精神科医の村田さんより初心者のフォローを頼まれた。

参加者の中で今回初参加の19歳と28歳の二人は、大型免許を取得してCBR1000とCBR600に乗る予定だったが、長くバイクライフを楽しむ為に400からステップUPをすればという皆のアドバイスによりCB400SBに乗っている。その第一歩として「トレッキングごっこ」への参加のようだ。

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CBR600RR(ホンダHPより)

バイクは乗り手が、意識、無意識に関わらずバランスを取っているから転倒しない乗り物であるが、昨今のバイクの性能は飛躍的に向上して、誰でも簡単に危険で無謀な領域へ入り込むことが出来る。
意外に乗れている・・・?と勘違いしているライダーも多く、悲惨な事故も多いようだ。

ハイスピードでのコーナーリングと深いバンク角はビギナーライダーの憧れのようでもあるが、バイクに乗せられることなく、操っているという感覚を勘違いすることなく意識できるのは、一般道を無謀な速度で走る事よりも歩くような極低速の「トレッキングごっこ」を体験すればはっきりと認識できる。

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CBR1000RR(ホンダHPより)

バイク歴の長い人でも「トレッキングごっこ」を体験すると、意外にできない事も多く新鮮さもあるようだ。

「トレッキングごっこ」は、ひとつの型をもっている

この「トレッキングごっこ」は、バイクを操る人が、体の使い方と操り方の基本型を「ごっこ」の遊び感覚の中から身に付けて、一般道を速さより心地よさで楽しめることを目的としている。

体の使い方や操る一つの例として、小柄で背の低い人が、Bigバイクに乗るために足つきの問題に対してほとんどの場合、無意識に実に見事に巧く体を操って感覚的に対処している。シート高と足つきの問題は、股下寸法の問題なのか骨盤の動かし方なのか、バイクに乗るための身体意識は数値的なスペックよりも重要な事だ。

ライディングにおいて様々な読み物がありスクールもあるが、スクールを経験しても中々うまく出来なかった人たちもこの「トレッキングごっこ」に参加して、基本型を「ごっこ」感覚で共に繰り返すうちに無意識にライディングの型を会得でき始めるのは不思議な事に思う。上手く教えることが出来るわけではないが・・・・・。

この独創的な型を伝授してくださった「万澤さん」と環境を整えてくださった「谷名さん」に感謝!!

悪い癖は不自然さを感じる

「トレッキングごっこ」で皆が最初に不自然さを感じる事は、発進以外はクラッチを使わないことと、ハンドルの持ち方のようで、自動車学校やライディングスクールで習った半クラッチ等はすべて使用厳禁である。

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肩には無意識に力みが出るが、それらに対処したアクセルの持ち方を伝えると不自然に感じるようだが、それが自然な持ち方と感じるまで意識して反復練習する。反復練習は体に習慣となって身につき、肩の力みは無意識に無くなり始めてライディングにおける基本型を感覚的に少し会得し始める。

歩くほどゆっくりとした動きは、自分の体の各部の状態を感じ取りやすく、エンジン音を耳で聞いて、右手はアクセルに連動して、進行方向を目で追うことにより腰が要であることを感じながら、体の各部が連動している感覚と体全体がバイクと繋がっていく過程を感覚的に体が覚えていく。

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単純な動きの繰り返しは、バイクとの一体感を磨き、感覚が徐々に鋭くなり研ぎ澄まされていく。

使用車両は常にベストコンディションで

数台の貸出し車両はSL230だが、2バルブエンジン特有のネバリがあり、極々低速、低回転でもアクセルの開け方が雑でなければ斜面でも必ず反応してついてくるエンジンに仕上げている。
それは、耳と右手と腰が連動している事と、その感覚を研ぎ澄ますことが出来るからだ。

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平常心を失い、焦りからの急スロットルには、エンストというSL230からの意思表示?があり、乗り手も何故エンストしてしまったのかは、体の動きから感覚的に分り易いセッティングとなっている。

エンジンコンディションが悪く、極々低速でツキの悪いエンジンの場合は、アイドリングを上げるということとなるが、それでは「トレッキングごっこ」の体で覚える感覚を習得することは難しい。

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車両持ち込みで開催されているライディングスクールの場合でも特に車両のコンディションにより得るものが大きく違ってくる。上手く出来なかったこともコンディションを整えればいともたやすく出来る。過去にそのような経緯を何度も目の当たりにしているが、それはバイクのコンディションと、乗り手の感覚に大きな隔たりがあることを顕している。スクール側も車両のコンディションに付いてのアドバイスは必要な事と思うが・・・・。

コンディションが悪い車両の場合、間違ったライテクをアドバイスにより身に着けてしまう場合もあるようだ。私のような「並みの下」から見れば、それはすごいテクニシャンのようにも思えるが、メカニックの目線から観れば滑稽な事だ。

繰り返し/反復練習をして身につける型は、上辺だけの形とは違う。

過去の経験から上辺はとてもよく似ているが、似て非なるものも多い。
今まで出来なかった事が「トレッキングごっこ」に参加する事で簡単に出来るような錯覚をして、上辺だけの形で満足する場合も多くその結果、従来の出来る・出来ないの優劣にこだわるスタイルに戻っていく。

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そのような場合は、「登れるか、曲がれるか、超えられるか」が優先課題となり、タイヤのパターンが云々とか、ファイナルやサスの特性が云々とか優劣にコダワリ、現象の結果に終始する事となる。一般道での優劣は結果的に何も得るものが無いと思うが・・・。

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上辺が同様に出来たように見える形か、基本に忠実な型を身に付けるかにより、大雑把な娯楽か高尚な趣味ほどの違いが生まれてくる。

見て真似る事はイメージ力を養う

歩くような速度で目線にエンジン音とアクセルが連動してバイクとの一体感を掴む一連の動きを反復練習したのち、何となく出来そうかナァ~と思う人から、歩くような速度でメンバーの後ろに続く。

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後ろに続き同じような動きのつもりでも中々上手く出来ない・・・・。見てまねる事を繰り返しながら体の操り方とバイクとの一体感を求めて汗を流すが、この場合は特にイメージ力がものを云う。

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「トレッキングごっこ」を楽しむ会のメンバーは、不変的なトレッキングごっこの型で、ライディングの原型を見直す意味で、年数回は汗を流して感覚を磨いている。

少しずつだがトレッキングごっこ効果を確実に実感している人たちが増えている。また、トレッキングごっこの基本型を体に浸み込ませた人たちは、ライディングの面白さや深みを増しながら、フィールドを大きく広げて新たなバイクライフを楽しんでいる。

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「トレッキングごっこ」を初体験した初心者のコメントや定番で楽しんでいる人たちが、深みのあるバイクライフを楽しんでいること等を今後伝えていきたいと思う。

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