バイク屋の備忘録

カブ110NWJCコンプリートで太平記

カブでの花見が始まり

日ごとに暖かくなり、近くの神明神社の桜も満開となり、中仙道沿いのしだれ桜の事も気にかかり、思い立ったら吉日などと都合の良い御託を並べて、その翌日にはJA42型のNWJCコンプリートType3を駆って木曽へ向かった。

木曽への道すがら太平記の事が浮び、いずれ訪ねようと思ってそれっきりとなっていた信濃宮へ向かうため、目的地を大鹿村へ変更した。大鹿村は宗良親王が長く留まられたところであり、カブ110NWJCコンプリートを駆って春めいた風景を楽しみながら大鹿村を目指すことにした。

カブ110NWJCコンプリート Type3を駆るのは久々で、いつもならGoodコンディションの旧型JA10型Type2を楽しむのだが、当初はスタッフがType3を担当したが、忙しいのかチョイ乗りだけで継続性もないので、今回から おっさんが現行のJA42型Type3も担当することにした次第である。

JA42型Type3は久々で、おっさんが楽しんでいるJA10型Type2のおっさん専用の特性シートに変更して出かけることにした。カブはニーグリップが出来ないため、腰回りの安定感を高めることが疲れずに長時間走るためのポイントである。

特性シートは、シート後方の剛性感を高めているから尻下がりにならず、NWJCオリジナルのシートスタビライザーとの併用で安定感と操作性が格段に向上する、おっさんの好みと拘りでもある。

42型コンプリートType3のシフトフィーリングは旧型のType2とは雲泥の差で、引っ掛かりもなく滑らかなシフトフィーリングは別物となっている。

太平記ゆかりの地を振り返る

山岡荘八著の太平記に始まり、それに基づいて登場人物をピックアップしてまたそれに関連した本を読み、多くの事を知ることができて、長年にわたりゆかりの地を訪ねて楽しんできた。

宗良親王の「君がため 世のため何か 惜しからむ 捨てて甲斐ある 命なりせば」

楠正行公の「返らじと かねて思えば あずさ弓 なき数にいる 名をぞとどむる」は、鎌倉武士の真髄か。

しかし、足利尊氏についた武士や豪族たちは所領安堵や論功行賞の拝金拝物主義であり、公家のご都合主義と保身の処世術は、今の時代と何ら変わらない。

東北から九州まで、太平記ゆかりの地を訪ね歩いてきたが、カブでのんびりと訪ね歩くのは意外にも初めての事であると気づいたが何故だろう。

一般道であれば大型バイクとの平均速度にも大差が無いこともあり、Go&Stopを繰り返す「古代への道」を訪ね歩くにはカブ110NWJCコンプリートは最適だが、人物を特定することなく漠然と太平記を訪ねると広範囲で的を絞る事ができず、時間に追われて飛び回ることをBigバイクで楽しんできたように思う。

訪ねたところに関しては良く覚えているが、その道中は定かではないことが随分あることにも気づいた。目的地へ移動することが目的で楽しんできたようだから、その過程での季節や風景など、ほとんど覚えていないのが現実だが、写真を見ると「そうそう、そうだった」と思い出すことばかり。

西は九州の懐良親王ゆかりの地を村田さんと共にトライアンフ空冷ボンネビルT100を駆って訪ねたのが2005年の事、翌年に村田さんはスクラブラー900に乗り換えた。

出光イーハートブ観戦ツーリングにGasGasのパンペーラでRSAの足立さん達と参加して、その帰路では皆と別れて、建武中興十五社会の最北に位置する霊山神社をはじめ千葉の小御門神社に鎌倉の鎌倉宮など、村田さんと共にトライアンフ空冷スクランブラーを駆って訪ねたのが2008年の事。

懐良親王をご祭神とする熊本の八代宮をゴールドウイング1800で訪ねたのが2010年の事。楠正成公はじめ賀名生皇居跡など南朝ゆかりの地や、児島高徳ゆかりの作楽神社を訪ねる等々その他多数で、太平記ゆかりの地へは時間をかけて楽しんできた。

馬籠峠から大鹿村をめざす

馬籠峠のしだれ桜はまだつぼみで、妻籠宿へ下り木曽路へ向うつもりだったが、つぼみのしだれ桜をぼんやりと眺めていると宗良親王をご祭神とする信濃宮のことがふと頭をよぎり、清内路を抜けて大鹿村へ向かうことにした。

清内路トンネルを抜けると、宗良親王の皇子である尹良親王をご祭神とする浪合神社があることを思い出し、先ずはそちらへ参拝させていただいてから大鹿村へ向かうことにした。

清内路から浪合神社へ向かう寒原峠の登りでカブは3速全開で延々とエンジンを回し続けたが、音を上げることも無く、黙々と登り続けてタフなカブの本領を発揮していた。

峠を下ると浪合の交差点を左折してしばらく行くと看板があり、浪合神社に到着することができた。

浪合神社は尹良親王の墓所もあり宮内庁の管轄となっている。手入れがゆきとどき手水鉢も綺麗で、地元の方々に慕われている神社であることがよく判る。参拝をさせていただいた後に参道を下っていくと、コンプリートType3を止めたところから更に下へ向けて長く立派な参道が延々と続いていることに気づいた。

参拝を終えて清内路方面へ引きし、松川から大鹿村へ向けて走ると天竜川を渡った辺りでは花曇りとでも云うのか、中央アルプスが少しかすんで春めいた景色が目に入り脇道へ逸れて写真を撮ることにした。

大鹿村へ入り道の駅を過ぎたあたりから狭い登坂が始まり、信濃宮への上り坂では2速では失速する急坂もあり1速にシフトダウンすることもあったが、カブ110コンプリートはタフさを存分に発揮していた。

延々と高回転で回し続けてもエンジン等に何ら問題がないのは、バルブクリアランスやカブ専用のEPLオイル等、Goodコンディションを保つためのメンテナンスが大きく影響している。

旧型となり走行距離が延びているJA10型コンプリートType2も、消耗品の交換は当然のことで丁寧なメンテナンスによりGoodコンディションを維持している。

宗良親王がご祭神の信濃宮は山深いところにあったが、浪合神社同様に驚くほど手入れが行き届いていて綺麗なトイレなど、境内は松の落ち葉と松ぼっくりで覆われていたが、お社の屋根には落ち葉はまったく見当たらず落ち着いた佇まいで、この地の方々に畏敬と敬神の念をもって慕われているお宮であることを察することができて、清々しさを覚えた次第である。

コロナ禍をはじめ尖閣問題なども深刻だから、国家安泰と国威発揚を祈念して参拝を終え、宗良親王が30年近く過ごされた御所平へ向けて進むと、南アルプスが目の前に迫りやがて通行止めの看板が現れた。

路面の地割れもかなり酷く雨量計やアンテナの付いた装置がそこら中に設置されているのを見て、前日に岐阜県揖斐川町で土砂崩れによる不幸な事故があったばかりで、残念ではあるが無謀なことはできないから御所平へ行くことは思いとどまることにした。

通行止め看板の前で時計を見ると、お昼をかなり過ぎていた。携行食としているオートミールのセットとラーメン、スパゲッティーを見比べて、ラーメンを作って食べることにした。トップケースの後ろに装備している水タンクはこんな時に大助かりである。水タンクは途中で湧水を汲むことが定番化している。

食後にインスタントコーヒーを飲みながら、帰りのルートはどこを通って帰ろうかと思案することも楽しみなことで、自由気ままに思いつくままに帰路も楽しむことができた。

新旧カブ110NWJCコンプリート

今回の走行距離は430Km程度だったが、長年楽しんできた太平記をカブ110NWJCコンプリートで訪ねるのは初めての事で、険しく路面が荒れたところも多々あったが道を選ぶことも無く、自由気ままに楽しめるカブ110NWJCコンプリートならではの良さは新旧変わりなく、速さより心地よさで意のままに楽しめたことは嬉しい限りである。

NWJCコンプリートの魅力は、道を選ぶこと無く雪道でもOKで、荒れた路面でも足つき性の良さで楽々であり、フル積載状態での操縦性と安定感はカブシリーズ最強であると、自負している。

Type3の方がリアの足回りがしなやかで、Type2に比べてシフトの滑らかさは格段に良い。夜間走行でのLEDヘッドライトは少し低めに設定した方が見やすく、慣れてくると後ろに車などがついた時でも意外に見やすいこともお伝えしておく。

長い登坂では、エンジンを回し続けた後スロットルを緩めて再び加速するときのモタツキは改善されて失速することも無く再び素早く反応するのはType2からType3で大きく改善されているところであるが、Type2も改善できる余地があることもお伝えしておく。

新旧問わずカブ110NWJCコンプリートで素敵なバイクライフを満喫できますよう、特にType2を楽しまれているライダー諸兄、愛着のあるType2で存分に楽しむ為に何なりとご相談ください。

新しいモノがすべてに良いわけではなく、愛着のあるバイクをGoodコンディションで楽しめるのが何よりであり、如何に売るかよりも如何に楽しめるか、バイク屋自らの実体験に基づいた提案をしたいと思います。

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