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愛知県 M・Iさん / 絶不調のストリートトリプル

スタイリングがお気に入りで、ストリートトリプルに乗るために免許まで取得して手にした念願のストリートトリプルは、暫らくすると絶不調の状態、メンテナンスを施しても同じ症状が繰り返されて、M・Iさんの乗りかたに問題があるということになり、ストリートトリプルを手放すことまで考えて悩まれていたようです。

ストリートトリプルで同じように乗りかたに問題があると言われて、ライテクでなんとか・・・と、悪戦苦闘されていた方のメンテナンスレポートをネットで見つけられ、お気に入りのストリートトリプルに本来の性能を発揮させるメンテナンスの依頼を受けました。

※M・Iさんが、インターネットで見つけられたストリートトリプルのメンテナンス記事はこちら


ストリートトリプル

頻繁にシフトチェンジを繰り返し、低速では常時半クラッチを使って、クラッチを切るとエンジンがストールする。このような症状を抱えたトリプル(デイトナ・タイガー・エクスプローラー・ストリート)は随分多いのも事実です。空冷ツインのボンネやスクランブラーも同様に低回転域ではトルクもなく、バタつく足回りに悪戦苦闘している不調のモダンクラシックも多く見受けられます。

不調に対して「こんなものです」という先入観を植え付けられる場合も多く、勘違いで不調ではないと思い込まされて、ライダーのライテクにより何とかなるだろうと、コンディションの悪いバイクに悪戦苦闘している方が意外に多いのも事実です。

今回の車両は、メンテナンスを施しても数千キロで同じ症状が繰り返し発生し、益々症状が悪化するというケースです。

お客様の要望

お気に入りのストリートトリプルに本来の性能を発揮させたい。

診断&メンテナンス

ストリートトリプルのエンジンはフルノーマルの状態ですが、アイドリングが不安定でスロットルの開け始めからバラついた感じで回転が上がり、無負荷でもエンジンが重い回り方をしている。

何度もメンテナンスを実施されているとのことでしたが、エンジンをチェックした形跡が見当たらないのは何故でしょうか・・・。バルブクリアランスはエキゾースト側5ケ所が基準値外でした。

バルブクリアランス
  IN EX
基準値 0.10~0.20 0.325~0.375
測定値 No.1 0.19  0.18 0.340  0.380
No.2 0.18  0.17 0.380  0.400
No.3 0.18  0.18 0.380  0.380

インテークマニホールドからバルブまでカーボンが付着している状態でしたから、さぞかし乗り難い状態だったことが判ります。


インテークマニホールド

カムシャフトはオイル管理の問題なのかオイルの品質の問題なのか、若干の摩耗がありました。EPL PL500を添加することにより金属表面に平滑面を生み出せば油膜保持が強化されますから、この程度の摩耗であれば過去の経験から通常使用では問題ないと判断しました。

カーボン除去も同時に実施したいところでしたが、エンジン内部の汚れが激しいため、新しいEPLオイルが走行距離と共に各部へ行き渡りスラッジ等を極力取り除き、ミッションをはじめ各部に平滑面を生み出してフリクションの低減と、燃焼室内のカーボンもある程度燃焼させてからカーボン除去を行うことにして今回はエンジンコンディションに係わる基本的な部分のみのメンテナンスで作業を終えました。

お客様のインプレ

車両が出来上がり、後日インプレをメールでいただきました。

~納車から不具合発生まで~

新車で購入したストリートですが、3,000キロを越えたあたりから、エンジンの不調が始まり、やがて、走行中にスロットルをオフにすると、エンジンが停止するという症状に見舞われました。

 ディーラーにてカーボン除去をすると一時的な症状の改善は見られるものの、それ以降も概ね3,500キロ毎にエンジン不調→カーボン除去というループを繰り返し、根本的な解決がなされないまま約2年半が経ちました。

 この間、購入したディーラーに依頼し、○○ジャパンをも巻き込んで調べてもらいましたが、最終的にジャパンが私に言ったのは、「バイクに異状はない。走行距離3,000キロぐらいで、カーボンが溜まってエンストするようなオーナーの乗り方が悪い。」でした。

一目惚れして大型の免許を取得してまで手に入れたストリートでしたが、大好きなバイクの不調の原因が、オーナーである私のせいだと言われた時のショックは大変なものでした。

愛車に対しても申し訳ない気持ちになり、もう手放そうかと思い始めた矢先に、私と同じような症状に見舞われていたストリートがノースウィングJCのメンテナンスにより元気に復活したというレポートをネットで見つけました。

ちょうど良いタイミングで東京から名古屋への転勤が決まった事もあり、早速、ノースウィングにバイクを持ち込みました。

お店には飛び込みで伺ったため、高田社長からは、入庫は1ヶ月以上先になると言われましたが、その場でエンジンの音を聴いてもらった上で、「バイクの不調はオーナーさんの乗り方のせいじゃないよ」と言っていただき、救われた気がしました。

~メンテナンス終了後から試乗まで~

初来店から3ヶ月後、漸くバイクを入庫する事になり、その1週間後には作業終了の連絡をもらいました。

高田社長から、排気側のすべてのバルブクリアランスが規定値外だった事、シリンダー内及び燃料噴射ノズル周りからインテークマニホールドにカーボンがビッシリと付着していた事、カムシャフトは油膜切れによる磨耗が発生している事を聞かされました。

あまりに状態が酷かったため、今回はバルブクリアランスとタイミング調整、そしてプラグ交換とオイル交換までしか行わなかったそうです。

何よりも驚いたのは、エンジンを開けて、中を弄った形跡が全く無いと言われた事です。
今までのディーラーとジャパンの対応は何だったのでしょうか。
あれだけバルブクリアランスの確認をしてくれとお願いしていたのに。
怒りを通り越して、呆れてしまいました。

試乗を前にエンジンをかけると、安定したアイドリング。タコメーターの針が暴れてない!
スロットルをゆっくりと開いていくと、4500回転辺りから気持ちの良い、抜けるような音に変わります。
何だかとってもスムーズ。走る前から明らかな違いが感じられます。

高田社長が笑いながら、「今までとは、全くの別物だから、気を付けてスロットルを開けないとぶっ飛ぶから注意してね」と一言。

軽く街中を試乗しましたが、まずローギアでのトルクが全く違います。低速でも半クラの必要がなく、ノッキングもしません。スロットルを大きく開ける必要も無い為、ギクシャクする事もありません。右左折も格段に楽になりました。

またエンジン出力が安定しているせいか、どのギアからでも確実なピックアップがあり、ギアの選択にもそれ程神経質にならずに済みます。
本来のストリートは、こんなに街乗りがし易いバイクだったのかと改めて気付かされました。
試乗を終えてノースウィングに戻ると、高田社長から、カーボン除去は新しく入れたエンジンオイルが馴染んで、燃焼室内のカーボンをできるだけ焼いてからにしましょうと言われました。


大阪港にて出港前のひと時

~九州での慣らし運転~

ちょうど九州へのツーリングを予定していたので、第2の慣らしを阿蘇で行いました。
トルクが太くなったため、緩やかなアップダウンが主体の阿蘇の中速ワインディングを3速固定で楽々とクリアして行きます。頻繁なギア操作と半クラを強要されない分、ライン取りと速度コントロールに集中できるため、いつもよりスムーズに乗れている様な気がします。


箱石峠にて熊本名産のあか牛と

ふと、高田社長が本来のストリートは乗りやすくて、6速のままでも低速から高速まで大丈夫と仰っていたのを思い出しました。半信半疑でしたがギアを6速にシフトアップ、そのままやまなみハイウェイを走ります。


箱石峠から根子岳を望む

6速のままでコーナーに進入、しっかり減速してもノッキングもなく、出口に向かってスロットルを開けるとトルクのピックアップもスムーズです。
これには正直驚きました。
これこそが、トリプル本来の実力なんですね。

再慣らしを始めて400キロを過ぎた辺りから、エンジン音が更にスムーズになり、排ガスも無色無臭になりました。エンジン各部の調整でシリンダー内の爆発が適正になり、こびり付いていたカーボンの剥離が進んだのかもしれません。


同じく箱石峠のワインディングを俯瞰

以前、ディーラーから、カーボンを付着させない為にもっとエンジンを回せ、レギュラー指定だがハイオクを入れろと言われ、それに従っていましたが、バルブクリアランスが基準値を超えていた事を考えると、エンジンを回せば、それだけシリンダー内での不完全燃焼を助長し、更にオクタン価の高いハイオクを入れると、これまた不完全燃焼を誘発する事になり、全く逆効果のアドバイスをされたのでは?と思っています。

現に、整備してもらう前は、高速道路をローギア高回転で走った後などは、エンジン不調が顕著でした。
今回は、高速道路を2速、8500回転前後で走行するなど、意図的な高回転を作為してみましたが、これまでの様な不調は見られませんでした。
ここまで1,000キロちょっとの慣らしを行いましたが、走れば走るほど、調子が良くなる感じです。


長者原にて久住連山をバックにタンポポと2ショット

帰宅後、ノースウィングに電話したところ、あと1,000キロちょっと走って、オイル交換のタイミングでカーボン除去をすることになりました。
次の整備で更にエンジンの調子が良くなることでしょう。現在の走行距離は17,000キロあまり。
また改めてレポートをしたいと思います。


箱石峠から根子岳を望むその2

メンテナンスMEMO

昨今のインジェクション仕様となった原付バイクでも今回のストリートトリプルと似たような症状が発生することがあります。キャブクリーナー等によりカーボンの噛み込みを緩和すれば、アイドリング不調やエンジン始動不良が一時的には改善しますが、同じ症状が何度でも発生しますから、キャブクリーナー等の使用は一時しのぎの応急処置です。

メンテナンスを施す過程で不調の原因が必ず見つかるのですが、同じ症状が何度も発生する場合は根本的な解決がなされていないことを物語っています。

エンジンを回せば調子が良くなるのはコンディションが整っている車両の場合のみで、不調の車両は症状が悪化する場合もありますから要注意です。

お気に入りのバイクを心地良く走らせるためには、基本性能を発揮させるところから始まりますが、違和感に思われることはライダーとしての経験不足による場合もありますが、エンジンが止まるとか、ギクシャクするとか、半クラッチを多用して頻繁なシフトチェンジを強いられる場合、その違和感は車両のコンディションに問題があることを物語っています。

オイルの品質

今回の車両はカムシャフトのホルダー部分の磨耗が顕著でした。電動ファンが頻繁に回るほど水温が上昇すると油煙がブローバイやフィラーキャップからあがってくる場合、オイルの品質にも問題があると云えます。


カムシャフト

症状としては、シフトの入りがガシャガシャした感じでスムーズさが無く、高回転で回せば油温が上がりクラッチの滑りも出ていることが良くありますが、クラッチが僅かに滑る感覚は判断がつき難いこともあり、部品交換は得意でも、あまりバイクに乗る事も無く観察力が乏しいメカニックには判断がつき難いところでもあります。

エンジン内部は、分解しない限りその状態を目にすることは出来ませんから、エンジンオイルは慎重に選びたいものです。


メンテナンス

ライダーが車両のコンディションに違和感を覚えても、特別な異音やオイル漏れなどの症状が見受けられないかぎり、通常にエンジンが吹き上がり、テスターチェックで問題がなければ、違和感を持たないのが一般的には普通のコトですから「こんなものです」という紋切り型の対応はやむを得ないことでしょう。

しかし、ストリートトリプルである回転域からのパワーバンド・・・?へ入れないと気持ちよく走らない、ということは考えにくいことで、低速から高速まで全域滑らかにトルクフルで扱いやすいのが、トリプル本来の良さです。

違和感に対する対策としてマフラーやクイックシフターなどの機能パーツをボルトオンしても、本来の基本性能が発揮されていない場合はアクセサリーパーツと同等で操作感には変化があっても心地よい走りを得ることは出来ません。

Goodコンディションで素敵なバイクライフを

コンディションの悪いバイクでも、あるところでは気持ち良く走れることもあるでしょうが、それ以外では辛さや不快感を強いられては、お気に入りのバイクでも時間の経過と共に感動や満足度が低下して、残念なことですがバイクとの距離が遠くなり、やがて乗ることが億劫になるのでは・・・・。

コンディションの悪いバイクを乗り続けるために、ライテクでカバーする・・ということもあるようですが、本来の基本性能を引き出して、それぞれのバイクの良さが最大限に発揮されていればこそ、ライダーのスキルアップと共にバイクに対する愛着も深く充実感があると思います。

速さより心地よさで走り続ける楽しさのために、まずは基本性能を発揮するコンディションに整えて、乗れば乗るほどバイクに愛着が湧いてくる、そんな素敵なバイクライフを提案したいと思います。

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