バイク屋の備忘録

SR500TM(ツーリングマスター)で四季を楽しむ

季節は秋でも相変わらず暑く岐阜は30度を超える日が続いている。砺波方面の秋の田園風景を見たくなり、20度前後の秋の気配の中を1年ぶりにSR500TM(ツーリングマスター)を駆って、速さより心地よさで、自由気ままにフィールドを拡げ楽しんできた。

SR500TMはトラディショナルなスタイルで、旧い街並みや色づいた稲穂の田園風景に違和感なく溶け込み、思いつくままに脇道へ入り込み立ち止まっては道草を楽しんできた。

STDのリアサスに強化スプリングを組み込んで使っていたが、ダンパーにヘタリが出た為プログレッシブTypeの強化サスに換装して、慣らしも兼ねてフル積載で走らせ300Kmを超えた辺りで大雑把な調整も終え、往復500Km程度の道中はその変化と安定感も増して悠々と走る心地よさを満喫できた。

SR500TMによる人の関わる領域が広い昔ながらのダイレクト感やアナログ感のある素朴な乗り味は、旧き良き時代へといざなうタイムマシーンのようでもあり、今までのバイクライフを振り返りながら色々なことを思い出していた。

40数年前は、2バルブのSR500の走りよりも4バルブのホンダFT500がお気に入りだったが、再びSR500に乗る機会を得て、道具としての価値はスペック云々ではなく、電子制御システムなどが素晴しく発展した時代でもバイクと人の間に電子制御などのハイテク技術が介在すること無く、現行モデルでは絶対に味わえないアナログ感やダイレクト感による操る心地よさは格別であることを実感することができた。

また、技術的に進歩して必要以上に至れり尽くせりで電子制御満載が主流になると、人がバランスをとり人車一体で操るバイクもライダーがオペレーターになりつまらない乗り物になったと時々思うこともあるが、歳を重ねたことにより価値観も含めその良し悪しは大きく異なることも実感している。

再び乗る機会を得たSR500は生産が終了して26年経過しているが、メーカー出荷時のSTDは工業製品として完成品でも、用途によっては道具として未熟で未完成であり、経年劣化により色々な事が見えてくるのも面白く、コンディションを整えても物足りないところは人車一体で補う素朴な乗り味は心地よく、バイク本来の魅力を改めて実感することができる。

バイク屋のおっさんライダーお気に入りのSR500をメーカー出荷のSTDやドレスUPカスタムとは異なる楽しみ方で、普段のチョイ乗りは勿論のこと、フル積載でも自由気ままにフィールドを拡げて脇道へ入り込んでは道草を楽しむバイク旅など、SR500の良さを多用途に発揮させてよき相棒へと育てるNWJC独自のツーリングマスター化は2020年3月から始まった。

SR500を速さより心地よさのSR500TM(ツーリングマスター)へ

STDのSR500に純正リアキャリアを取り付けたフル積載のバイク旅では、自由気ままにフィールドを拡げて心地よくバイク旅を楽しむには無理があり、操縦性や安定性は我慢して妥協することばかりで心地よく楽しめないのが実情で、何故、何をどうすればと思案することから始まった。

バイク屋が自ら駆ることで違和感や問題に気づく場合と、何も思う事や気づくことも無く「こんなものです」とか、テスターチェックでも異常を検知しない場合もあるようだが、その判断は経験や感性により大きな違いがあり、違和感による問題は用途や目的によって調整かその部分を修正するモディファイ等により、よきバイクライフを満喫できる場合が大半であるのは何よりである。

何も思う事や気づくことも無く「こんなものです」とか「旧いから」とした対応の場合、違和感は消耗品交換や故障修理のメンテナンスとは少し意味合いが異なり、違和感への対応がカスタムパーツを取り付けるドレスアップカスタムや乗り替えへの提案では的外れで何かが違い、使い捨ての消費文化となるのではないかと思う。

二輪業界では成果主義によりバイクは売る事が目的の使い捨ての消費材となる場合が多く、SR500やトライアンフ空冷モダンクラシックのように、乗り始めてからトータルバランスを整えて乗るほどにその良さを実感できると、良き相棒か良き道具へと育てるバイク文化が希少であると気づくだろう。

元SRのカスタム屋に訊ねてみた

余談だが、SR400/500の多くはカフェスタイルやトラッカースタイルへのカスタムベースとなっていたようだが、エンジン特性の良さを生かして長距離を走るツーリングのためのツアラーへの提案がないのは何故だろうと思い、元SRのカスタム屋だったRBRのおやじに訊ねてみた。

RBRのオヤジ曰く

1980年代と言えば空前のバイクブームで、その中でもレーシーなものがもてはやされた時代でした。メーカーから発売されるレーサーレプリカが流行りで、人とは違うレーシーなバイクを好む人も増えてきました。

そんな人たちが目を付けたのが、60年代の英国で流行ったビッグシングルやツインをレーシーに仕上げる「ロッカーズ」でした。これが日本で流行ることになるカフェレーサーの原型です。

人と違って自己主張ができる丁度良いジャンルでしたし、ベース車両はビッグシングルであり、安価にカフェレーサーを製作できるとしてヤマハSRがベース車両にピッタリでした。

60年代の本場のカフェレーサーは、BSA、トライアンフ、ノートンなどがベースでしたからそれらを模して、セパハン、アルミロングタンク、シングルシート、バックステップなどの部品が人気となり、SRと言えばカフェレーサーにカスタムすることが主流になったと思います。

またSRはシンプルな造りでしたので、誰でも部品の付け替えができる「着せ替えカスタム」のベース車両のようでもあり、カフェレーサーにするカスタムショップが乱立することになったようです。

一昨年SR500TMをお借りして、高田さんはCB400SS-TMを走らせて、2台で晩秋の能登へキャンプツーリングに行った際に、お借りしたSR500TMに乗って素晴らしいツアラーに変貌しているのを目の当たりにして驚きの連続で、SR500が旅を楽しむ事ができるツアラーになるのだと初めて気づきました。

RBR公式サイト『SR500TMとCB400ss-TMでキャンプツーリング』

自分自身、SRを所有しノーマルで乗った事もあるのですが、分厚いけど柔らかくすぐ尻が痛くなるシート、柔らかいフレームと足回りで絶えずとらえどころのないぐにゃぐにゃした乗り味は、とてもじゃないですが遠くへ出かけようと思うバイクではありませんでしたし、SRでフル積載の旅ができるとは思いもしませんでした。

またSRカスタム屋での会話で、「ツーリング」という意味は、道の駅やコンビニなどカスタム仲間が集まるところやイベントに出かけることになっていたと思いますし、一昨年の能登へキャンプツーリングに出かけたように荷物をフル積載してもワインディングで軽快な走りを楽しめるとは思いもよらぬことで、これは経験した人にしか解らないことのようで、僕自身もそうでした。

身の丈に合ったバイクで楽しむ

平均年齢は55.6歳と高齢化が進む二輪市場では、売るが為の提灯記事は所有欲をあおり、余裕を持って走れる大型モデルや最新の機能満載のバイクが最適で人気とのこと。

しかし、一般公道ではアクセルを全開にする事も出来ないハイパワーと大柄な車格では持て余すばかりで、A点とB点をつなぐ単調な線を描くだけで立ち止まる事も躊躇するようでは、所有する喜びも時間と共に色あせて乗らなくなりイベント参加のためだけに所有しているようにも聞く。

思うような操作ができず今ある問題は、ABS・TC・スリーパークラッチ・DCT・アクティブサス・Eクラッチ・PC制御など、最新機能へ依存することで問題解決できるとした考えや価値観もあるようだが、メカニズムが進化しすぎてバイクならではのアナログ感やダイレクト感などの魅力が失われているようで、出来ない事ができると過信することはとても危険な事のように思う。50~60代の事故が多いのは何故だろう。

前回、CB400ss-TMで道草を楽しんできたが、スペックやカテゴリーを優先している人たちからは「CB400ssでよく行くね」「何故、昔のようにBigアドベンチャーで行かないのか」と問われたが、一般公道ではアクセルを全開にできない有り余るパワーや持て余す車格よりも、身の丈に合った車格と程よいパワーによる速さより心地よさが何よりであると実感しているからである。

40年前の北海道は国道も未舗装が多く、おっさんライダーはXLV750を駆ってオフロード天国を存分に楽しみ、その後ファラオ600・アフリカツイン650/750・R100GS/PD・R80GS・R1100GS・タイガー1200EXPなどBigオフも乗り継いできたが、道路環境も大きく変わり、歳を重ねたことにより持て余す大型バイクよりも、ボンネビルT100やCB400ss-TM・SR500TM・SL230TMなど、身の丈にあった車格をGoodコンディションで自由気ままにフィールドを拡げて楽しみたいと思う今日この頃である。

歳を重ねて体力の衰えは皆も自覚するところであるが、これからの良きバイクライフのためには体力を維持して、お気に入りのバイクをGoodコンディションに整えて素敵なバイクライフを満喫して頂きたいと思う次第である。

NWJC独自のツーリングマスターによる素敵なバイクライフ

SL230「欲張りなおっさん仕様」がNWJCツーリングマスターの始まりで、STDでは想像もできない使い方でもその実力を発揮させるメンテナンスやモディファイを施したSL230TMは多くのライダー諸兄がお気に入りであり、育てるバイクライフは意外なことも多く、バイクによりライダーが育つその経年変化を楽しむ事も素敵なバイクライフであると思う。

「速さより心地よさ」「何かに特化しない曖昧さ」「和洋折衷のような大らかさ」をコンセプトとしたNWJCツーリングマスターは、STDでは想像も出来ない使い方でもある部分の変更や修正によるモディファイを施すと五感で操るその心地よさは格別となり、その実力を発揮できるようトライアンフ空冷モダンクラシックをはじめSR500(400)・CB400ss・SL230など、お気に入りのバイクをGoodコンディションに整えることにより素敵なバイクライフを応援したいと思う。

バイク屋はメーカーとメディアが創り上げたイメージや虚像に振り回されながら、台数至上主義や成果主義で新しいものがすべてに良いとして時代に流されてきたが、歳を重ねることにより価値観も変わり、バイク屋自らの実体験に基づき、素敵なバイクライフへの提案が出来るバイク屋でありたいと思う次第である。

この記事の車輌・パッケージ(仕様が異なる場合があります)

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