バイク屋の備忘録

SL230-TMで今年初の木曽へ

防寒対策とメンテナンス

長良川の堤防にてSL230ツーリングマスター(TM)をチョイ乗りで楽しむと、遠くの山々は白いところもあるが南へ下ると暖かく堤防では黄色い花が咲き始めている。

お気に入りの定番ルートのあの辺りの凍結や融雪剤の影響はどうだろう、と想いを巡らせているうちに3月となり定番の西へ出かけたいと思う今日この頃。

2月最終の日曜日は、西やんとS・Oさんを誘ってSL230-TMで滋賀から若狭方面へハンドルカバーのチェックに出かけた。

木之本からR365を北上するころから外気温はドンドン下がり吹雪く荒れた空模様となりハンドルカバーのチェックには最適の天候となった。

ウインターグローブをはめた二人と手の暖かさを比べると彼らの手が冷たく、グリップヒーター+ハンドルカバーは外気の進入もなく3シーズン用のグローブでも充分であることが確認できた。

ハンドルカバーの固定方法も違和感なく上出来で、ある程度の距離を走った事で形状を一部変更したいところもわかった。
 
歳を重ねると指や掌が冷えると攣ることや肩も凝るから、手の防寒が上手くできれば昔のように寒い季節も楽しめると思い、RSAレザーズの足立さんの協力を得て万が一の転倒でも手や腕の動きを妨げない形状や固定方法なども含めた試行錯誤により、欲張りなおっさんのハンドルカバーの試作が出来上がり、今シーズン後半が楽しみである。

ハンドルカバーのチェックに出かけた時の雑談の中で、西やん曰く、

「あと僅かで60歳を迎えるが、SL230はトレッキングごっこから始まり林道や獣道を楽しみ、SL230-TMへと深化する事でワインディングを軽快に駆け抜け、荷物を満載したキャンプツーリングなど、20年以上にわたって色々なスタイルで楽しむことができた懐の深いバイクだから、これからも良き相棒としてバイクライフを満喫したい」

とのこと。

S・Oさんは、SL230-TMのエンジンメンテナンスをいち早く依頼されて、走行距離が6万キロと延びているにも関わらず、メンテナンス後のSL230-TMは今までにない空冷シングル2バルブエンジンの心地よさ、力強さ、鼓動感、伸びのあるエンジンフィーリングなど、+αの良さが引き出されたのは驚くばかりのよう。

「もう旧いから」は、セールストークの常套句として通じないことを目の当たりにしたが、バイク屋さんの経験やこだわりにより、同じSL230でも大きな違いがあることが良く分かるようになったとのこと。

SL230欲張りなおっさん仕様からSL230ツーリングマスターへ

2017年3月、SL230欲張りなおっさん仕様で初めての西、夜間の山陽道は寒さが厳しく何度もSAに立ち寄りながら移動したことを思い出す。

寒さの厳しい深夜を移動した実体験により、車格や排気量に関わらず防風効果は必須であり、普段使いから荷物を満載したバイク旅まで心地よく楽しめるSL230欲張りなおっさん仕様の深化がはじまった。

SL230では初めての西日本を走る 3月

SL230も20~25年経つと各部の経年劣化が顕著となり、昨年よりいつものメンバーのSL230-TMもエンジンや足回り等のリフレッシュメンテナンスが一斉に始まっている。

あれから6年が過ぎた2023年3月。SL230は欲張りなおっさん仕様からツーリングマスターへと深化を重ね、NWJC独自のメンテナンスとモディファイによりトータルバランスを高めて、SL230ツーリングマスターならではの魅力を存分に発揮している。

当然のことだが、おっさんライダーのSL230もエンジンや足回りなどGoodコンディションに整えて、SL230-TMならではのエンジン特性の良さと、人の関わる領域が広いアナログの体感フィーリングの良さに、ダウンサイジングによる使い勝手の良さなど、走らせるたびに日本の道をバイク旅で楽しむには最適な1台であると実感している。

その後、村田さん、里見さん、寺山さんと、続けてエンジンメンテナンスを施し、里見さんは「ここまで変わるのか!このコンディションでもう一度日本一周に出かけたい」と新たな要望も含めて装備の見直しなど更なる深化のための模索が始まっている。

御大Ojiに料理長のNomuさん、飛騨のアツシに上ちゃんと、これからも良き相棒と共にバイクライフを満喫する為に、それぞれのタイミングでSL230-TMのリフレッシュメンテナンスが現在進行中である。

バイクは危険な乗り物

バイクは新製品がすべてに良しとしたのは今も昔も同じだが、売るがための提灯記事の傾向は今も昔もあまり変わらず、装備やスペック云々に加えてオシャレでありカッコいい等の自己顕示とコミュニケーションの小道具として情緒的な内容が多いように思うが、大切なことが抜け落ちている。

情緒的な価値観とABS・アクティブサス・トラクションコントロールなどの電子制御を頼りに選んでもライダーとしてのスキルアップがなければ命がいくつあっても足りないのは当然のこと。

また、無謀な速度で走ることが操っているとかスキルアップしたと勘違する事も含め、危険な乗り物であることに変わりはない。

バイクは人車一体で始めて機能する危険な乗り物だから、自分のものにするスキルアップの過程に於いてそれが実感できるバイクは人の関わる領域が広く、観察力・判断力・持久力・忍耐力・平常心などが養われることでもあるが、人生が一転するような危険を伴うことだから自己責任とそれなりの覚悟が求められている。

SL230ツーリングマスターで木曽から飛騨へ

メンテナンスやモディファイを施した車両による深化の途中経過の確認は、バイク屋自らの実体験の提案として当然の事。ハンドルカバーの効果も再チェックと確認するために冬の名残を追いかけてSL230-TMにて木曽から飛騨へと駆けてみた。

岐阜から中津川までは高速道で心地よく一気に駆け抜けた。STDのSL230では積載状態での高速巡航は安定感が無く、フロント荷重が抜けるとハンドルが突然振れることもあり、ツーリングセロー250やCRF250Lでも同様の症状が出る。

軽量コンパクトな車格でのフル積載状態では安定感に不安を覚えることはよくあるが、「こんなもの」と諦めて我慢することではなく対策は充分可能なことである。

中津川ICからR19で木曽路をのんびりと駆け木曽福島から開田へ向かうR361は雪も無く、山は赤みを帯びて春近しで冬の名残はどこにも見当たらず、除雪車も日向ぼっこを楽しんでいた。

開田高原へ抜けるR361で新地蔵トンネルを目指して駆け登って行くと、標高が高くなっていくのをSL230-TMがキャブ車らしい反応によりアナログならではの面白さを楽しませてくれた。

トンネルを抜けると道の脇には雪が残り景色は様変わりして曇り空の中にうっすらと御岳山が見えていた。

脇道へ入り休憩と昼食を兼ね少しのんびり過ごした後、雪が無ければ脇道へ逸れて道草を楽しみたいところだが開田から日和田へと長峰峠へ向けて九十九折れの登りを楽しむ。

日和田から高根へ向けてのR361に雪は無いが、峠付近の道の脇はガードレールの高さまで残雪がありまだ寒さは厳しく、高根乗鞍湖の湖面は凍結して真っ白。

ハンドルカバーの防寒防風効果は抜群で3シーズングローブでもグリップヒーターを入れる事も無く快適。今年の後半も楽しめる準備完了。

SL230ツーリングマスターの魅力と道具としての価値

SL230-TMは、R361を久々野へ向けて軽快に駆けてR41を下り、下呂から郡上へ抜けてR156で岐阜を目指した。メーカー出荷のSTDリアサスはO/Hチューニング済みでトータルバランスを高め、積載状態でのハイペースでも何ら問題も無く軽快に安定感のある走りで良き時間を過ごす事ができた。

サービスマニュアルによる消耗品の交換やボルトオンパーツの組み付けだけでは解決できない問題も多くあるが、バイクライフを楽しまないバイクShopやスタッフには理解できないことであり、「こんなもの」となるのが現実のようである。

チョイ乗りでは判らないことも長い距離を走らせることでメンテナンスやモディファイの要点が浮かび上がり、旧いからとかこんなモノとあきらめる事ではなく、思考して気負わず自由気ままにフィールドを拡げてバイクライフを満喫するために深化させることが、バイク屋としての拘りであり面白さや楽しさでもある。

20~25年前の旧いSL230が、NWJC独自のメンテナンスやモディファイによりSL230-TMへと深化した過程で、時間の経過や流行り廃りに流されることも無く大切に使い続けた道具の価値と、販売目的の市場価格などの価値観との違いを実感できるのは、乗り続けたライダーのみが知る良き相棒との素敵なバイクライフでもある。

新しいモノがすべてに良いとした消費が最優先の昨今、売ることが最終目的では無く、乗りだしてから始まるバイクライフにおいてバイク屋North Wing JCでは、「速さより心地よさ」「何かに特化することのない曖昧さ」「和洋折衷のような大らかさ」をコンセプトとした素敵なバイクライフを応援したいと思う。

現行モデルのCRF250Lはメーカー出荷状態ではクタクタの足回りで、普段使いから積載状態のバイク旅までを心地よく走らせるにはキャリアの取り付けだけでは無理があり対策が必要となる。

SL230-TMへの深化の過程で培った経験により、積載時の操縦性や安定性をたかめてCRF250-TMへと深化している。

現行モデルのCB250Rも、軽量で使い勝手も良いが積載状態では楽しめない車両である。ツーリングマスターへと深化させる過程においても積載状態での心地よい走りは難しく、しかしCRF250-TMと同様にSL230-TMより積載に関することがヒントとなってCB250-TMへと深化している。

CB400ss-TMやSR500-TMなどのモダンクラシックをベースとしたNWJCツーリングマスターも実力+αと意外さを発揮させている。

日本の道で自由気ままにフィールドを拡げて楽しむことを求めているバイク乗りのために、バイク屋の実体験に基づいた提案や応援をしたいと思う今日この頃である。

この記事の車輌・パッケージ(仕様が異なる場合があります)

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