バイク屋の備忘録

カブ110NWJCコンプリートで晩秋のキャンプ

コロナウイルスの猛威はおさまる気配が無く、ロシアによるウクライナへの侵略は日々気になり、どちらも一日も早く終息して安寧な日々が訪れることを乞い、天地神明に祈念する次第です。

朝晩は肌寒く長距離を楽しむには防寒対策が必要となり、早朝と日没後は軽く防寒が必要だが日中はそこまでの必要がなく、快適に過ごすための装備選びが難しくそれらを積載する事も必要な季節がやってきた。

そんな季節となったが、いつものメンバーと飛騨のアツシ主催のキャンプを楽しんできた。

飛騨の長い冬に入る前に一緒にキャンプツーリングを楽しみましょうと、飛騨のアツシが昨年から始めた晩秋のキャンプツーリング。今年は予定が合った30~40年来のいつものメンバーと共にカブ110NWJCコンプリートを楽しんできた。

嫁の親父さんが乗っていたJA07型を駆る西やん、JA10型のType2を駆るおっさん、JA42型のType3を駆る土岐さんと飛騨のアツシ、JA61型のType4を駆るのはカブデビューの野蛮人Gさん。カブ110NWJCコンプリート仕様が始まった10年前のJA07型からJA61型のType4まで勢ぞろいとなった。

JA07型のコンプリートはプロトタイプが3台のみだから、西やんが駆るJA07型の外観はフルノーマルだが、エンジンはじめ各部はフルメンテナンスとモディファイで他のNWJCコンプリートと比べても対等の走りで楽しめる仕様へと深化している。

カブ110Proをベース車両としているカブ110NWJCコンプリートは、JA07型のプロトタイプから始まりチャイナCabのJA10型をType2として、組み立てが熊本工場のJA42型はType3となり走りと積載状態での操縦性や安定性は飛躍的に向上して、新型のJA61型はType4で環境問題も含めて新型エンジンでキャストホイールとフロントディスクブレーキにABSを装備した仕様へと進化しているが、新旧を問わずNWJC独自のメンテナンスとモディファイによりカブ110NWJCコンプリートも深化している。

Old Boy

お互い気心の知れた30~40年来のバイク仲間とのキャンプツーリングは、僅か100数十キロのチョイ乗りで、昼からのキャンプ場ではGさんの新しいテントを皆と眺めて、夜は炭火で暖をとりながら酒を酌み交わしながらの昔話。

歳を重ねたことでこれからのバイクライフについて意見交換など、楽しく良き時間を過ごす事ができた。

アツシからは、「僕は93年6月の結納の翌日、このキャンプ場で皆とキャンプをしました。」と「僕んちのバイクライフ」に出てくるようなカミさんも関わる話で、「確かあの東屋の下でバーベキューをしたように思います。」と云われて、ああそういえば・・と皆も記憶が蘇ってくる。

翌日、みんなの早起きは歳だからか童心に帰った遊び心からか、朝食を終え撤収も早々に終えてフル積載のカブ110NWJCコンプリートで走り始める。

幹線道路から外れた細い脇道を一定の車間で駆け抜ける。気分的にはかなりハイペースのつもりだが、登り坂では失速させないためにアクセルはワイドオープンのままで、誰もアクセルは緩めることなくシフトタイミングを見計らっている。

それでも60Km/hから50Km/hへと失速していくが、ピタリと寄り添って車間が狭くなってスリップにでも入っているようにも見えて、滑稽でもあるが楽しいひと時でもある。

先頭のペースメーカーは、西やん、土岐さん、おっさんと随時交代しながら走らせているが、荒れた路面の九十九折れでも同じように滑らかな線を描くように同じペースのまま駆け抜けていく。遊び心いっぱいにこんなにも面白く楽しいことは、誰もやめないし止められない。まさに速さより心地よさである。

直感と本能でバイクを楽しむ故の野蛮人だが歴史研究家としての顔を持つGさんは、CB1100とダウンサイジングしたカブでも皆と共に楽しむためにJA61型のType4を準備したとのことだが、アクセルをワイドオープンにできる爽快感がたまらないのでは・・・・。土岐さんのType3と同じカラーリングでよく似ているが、外観からはディスクカバーとキャストホイールの違いで判別ができる。

カブは、CB1100と比べるとタンクも無く勝手が違って思うようにならず、後ろから見ているとカクカクと小刻みにバンクして不慣れで奮闘しているのが手に取るように分かる。昔と何ら変わることなく後れを取ることは我慢出来ないようで、前を追いかけるように走る姿は昔の「クラッシャーG」そのもの。

走り続けるうちに下り坂ではType4の強みであるディスクブレーキを上手く使い、段々とカブが滑らかにバンクしてコツを掴み始めたようで、悦に入る野蛮人Gさんは満面の笑みを浮かべていた事だろう。

おっさんがペースメーカーで先頭に立ち、野蛮人Gさんに少し悪戯をすることにして、舗装路からガレた脇道へ入り込む。ミラーに映るGさんは無理をせず2輪2足で難なくクリアしていた。

カブ110NWJCコンプリートならではの脇道であり、CB1100ではフル積載しなくてもそんな脇道へ入り込むことなど有り得ないが、「フル積載でも気負うことなく自由気ままにフィールドを拡げて・・」を理解できたとのこと。

脇道へ少し入り込むと、いきなり視界が開けて紅葉を見渡せるビューポイントに出る。そこから紅葉を眺めながら「ケベックにも似たような景色がありました。メイプルの紅葉はもっと紅いですが何となくこんな感じです。」と、アメリカは5年カナダが6年と海外が長かった土岐さんが開けた景色を眺めながら語ってくれた。

一般道を存分に楽しみ、峠道からサーキットへ林道からMXコースへと、より速くより上手く走らせることを追い求めた若きライダーたちは、30~40年経てもあの頃と何も変わらず、互いにOld Boyであることを納得しているようでもあった。

「速さより心地よさ」「何かに特化しない曖昧さ」「和洋折衷のような大らかさ」がコンセプト

旅バイクNWJCツーリングマスターは、「速さより心地よさ」「何かに特化しない曖昧さ」「和洋折衷のような大らかさ」をコンセプトとして、カブ110NWJCコンプリートはカブ110プロJA07型のプロトタイプからJA10型のカブComp-Type2、Type3、Type4へと現在進行形で10年が経過して、バイク屋でありバイク乗りとしても多くの経験を積むことが継続している。

カブはCT110やタイカブ125でも試行錯誤した経験から、積載重視のMD90系と同じ14インチホイールが標準装備の110Proが最適であることを、列島縦断などの実体験により現在に至った次第である。

カブ110Proの業務用車両だからこその積載力は、バイク旅では50ccでも1000ccでも妥協する事が無ければ積載量は同じとなる故に、積載時の操縦性と安定性は他のカブを圧倒して抜群である。

バイク旅では車格や排気量に関わらず積載力は必須となるからNWJCツーリングマスターのベース車両として最適であり、バイク屋自らの実体験と、いつものメンバーの協力も得て気負うことなく長距離を快適に楽しめるカブ110NWJCコンプリートへと深化させてきた経緯がある。

積載力は大型キャリアの取り付けが出来れば可能な事だが、積載状態ではある速度域を超えると直進状態でも不安定で、コーナーリングでは前と後ろが逆方向へ動くような捻れなど、操縦性や安定性に違和感を覚える場合が多々あるため、積載状態では違和感のない速度域で妥協して走り続けることになり、決して楽しいバイク旅とは云えない。

それは、カブ以外のバイクでも同様であるが、売ることが最終目的の提灯記事では情緒的価値観でイメージを先行させて、真実を伝える事がほとんど無いか、問題に触れないのが現実である。

一般的には積載状態であれば違和感を当然のように受け入れて走り続けるのが現実のようだが、50Km100Km程度のチョイ乗りなら何とか我慢できるが、300Km500Kmと長距離をそれなりのペースで走り続けるとなれば、そんな違和感を持ちながら妥協して我慢してのバイク旅は御免である。

カブ110Pro以外のカブシリーズでは、積載を前提とした足回りや使い勝手が良い安定感のあるサイドスタンドは装備されていない。14インチホイールは積載状態での安定性や操縦性に大きく貢献していることは17インチホイールのカブと乗り比べればその違いは誰でも判ると思うが、スタイル重視であれば観点が異なるようである。

14インチホイールは足つき性も抜群で、フル積載の状態でガレた悪路に遭遇しても2輪2足で何ら問題なく通過できるから、雪道でも同様に気負うことなく走り続けることができるのも魅力である。

110Proの足つき性は14インチホイールのおかげでカブシリーズの中で最高だが、他のカブとシートとステップの距離は同じだから膝の曲がりは同等であるのも嬉しいところである。

Bigバイクを楽しんできた経験豊富なベテランライダーも、目的地までの道中を如何に楽しめるかがバイク旅の魅力であることを実感されて、日本各地でカブ110NWJCコンプリートによるバイク旅を楽しまれていることは、バイク屋のおっさんライダーとしても嬉しい限りです。ありがとうございます。

JA07型から61型までのカブ110Proが勢ぞろいしたところを後ろから見ると、おっさんライダーが乗るChinaカブJA10型Type2だけが、テールレンズの形やウインカーなどのデザインが他のカブとは別物というか異端であることがよく分かる。

しかし、おっさんライダーにとってType2は、すべてのカブ110NWJCコンプリートを深化させる過程において新旧の違いや違和感などを払拭して、軽量コンパクトな車格と排気量が110ccならではの気負う事の無い使い勝手の良さを最大限に発揮させる多くのヒントを与えてくれた良き相棒である。

バイク屋自らの実体験は、演じることや煽ることではなく、継続的に乗り続けることで気づくことや判ること、違和感や問題点への対策など、それぞれが織りなす素敵なバイクライフのための応援や提案を目的としている。

スペック、存在感、新製品効果等の情緒的価値観により所有欲を煽り、売ることが最終目的の提灯記事とは次元が違う事も伝えたいことである。

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