バイク屋の備忘録

空冷ボンネビル800 メンテナンス ─千葉県A・Oさん

旧き良き時代の素朴な乗り味

日に日に暖かくなりバイクを心地よく楽しめる季節がやってきたが、コロナ禍の影響もあり、自由気ままに思うような活動もままならないこの状況に加えて、ロシアのウクライナへの侵攻は衝撃的なことで気持ちが沈みます。

一日も早い終息により平安が訪れることを天地神明に日々祈念する次第です。

ロシアによるウクライナ侵攻は北方領土侵攻と同じようで、北海道の知人から祖父よりロシア軍の機銃掃射から必死に身をかわし、命からがら北方領土より逃れたときの話をよく聞いた。と伺ったことがあります。

その後は不法占拠で日本に戻ってくる気配はなく、クリミア半島の侵略も同様に侵略で更に領土を拡大できる思想が、第二次世界大戦後の現代社会で許されることも恐るべきことです。

しかし、プーチン大統領を支持しているロシアの人々は、ウクライナに問題があると思い込んでいるニュースを目にして、事実を知ることができない環境は、ウソとでたらめの大本営発表と同様では不幸な事です。

世の中は情報の垂れ流し状態で「フェイクNews」と云われるモノも多く、情報は感覚的に判断する傾向にあり、バイク業界でも台数至上主義や成果主義のために売るがためのレース活動によるイメージや、ヤラセの提灯記事により誰にでも簡単に楽しめるイメージは感覚的に受け入れやすいのか、かつて利潤追求だけの日本人を蔑視した「エコノミックアニマル」と云われる所以と同様では、と思う今日この頃である。

台数至上主義や成果主義のために売ることが最終目的の流通業者よりも、バイク屋としての実体験に基づいて、乗り始めてからGoodコンディションに整えて使い慣れた道具ならではの素敵なバイクライフを提案できるバイク屋でありたいと、バイク屋のおっさんライダーは常々そのように考えている。

3月末は今年初の西の定番ルートで、空冷BigシングルのCB400SSを「速さより心地よさ」「何かに特化することのない曖昧さ」「和洋折衷の大らかさ」をコンセプトとしたTM(ツーリングマスター)へと深化させて、自由気ままにフィールドを拡げ、最新のバイクでは味わえない得も云われるその良さを楽しんできた。

トラディショナルSR500-TMでも同じ定番ルートを走っているが、同じ空冷Bigシングルでも其々に乗り味があり、分かりやすさと物足りなさが程よく両立して持て余すことも無く人車一体による操る楽しさが魅力であり、最近の電子制御満載のバイクとは比較するまでも無いと改めて実感した次第である。

トライアンフ最後の空冷ボンネビルもSR500-TMやCB400SS-TMと同様に直感的に分かりやすく、Goodコンディションであれば、昔ながらの素朴な乗り味で人車一体による操る楽しさがあふれている。

空冷ボンネビル800のメンテナンスで千葉よりA・Oさんが来店

素朴な乗り味が魅力の空冷ボンネビル800に乗る千葉のA・Oさんが来店された。

以前ボンネのコンディションについて問い合わせがあり、100分の1ミリという単位で、本当に何が変わるのか半信半疑でもあったが、本来の良さで楽しみたく思いきってやってきたとのこと。
シーズンに入って週末は忙しく、土日では完成できない旨を伝えて1週間後の納車で預かる事になった。

これから希少となっていく、素朴な乗り味の空冷ボンネビルにて新たなバイクライフを楽しもうとされている事はとても嬉しく思うし、アナログバイクによりライダーの感性が磨かれる魅力も体感して頂きたいと思う。

メーカー出荷状態の新車であればGoodコンディションであるように思われているが、それは過去の経験からメーカー問わず高級ブランドでも同様で、コンディションを整えることは必須となる。

しかし、それは必要ではないとした声が大半のようだが、本来の良さを発揮させて心地よく楽しみたいのであれば、テスターチェックやオイル交換だけでは満たされない。

エンジンコンディションを整えることからすべてが始まるのだが、エンジンコンディションを整えることと、マフラー等のボルトオンパーツを組み付けることは全く別の事であり、ボルトオンパーツでコンディションが整うイメージに惑わされている場合が大半であることも伝えておきたいことである。

いつもの何ら変わり映えしない話だが、トライアンフ最後の空冷モダンクラシックを1台でも多くGoodコンディションに整えて、本来の良さを存分に楽しんで頂きたいと思う次第である。

A・Oさんの空冷ボンネビル800のコンディションは

距離は約44,000Kmでファイナルは変更されて高速寄りに変更されているが、エンジンは、明らかにバルブクリアランスが広く限界を超えた不調なメカノイズです。

コンディションが整った心地よいエンジン音ではありませんし、排気音も細く違和感があります。

排気量が800ccもあればゆっくりとした5速40Km/hでも悠々と走れるトルク感が本来の実力です。

コンディションが悪いと低速域のトルクも細く、残念ながら悠々とした心地よい走りは楽しめません。

キャブは、油面をチェックするのが最優先ですが、油面はチェックの仕方により基準よりも低くなる場合が多く見受けられ、大きめのジェット類に変更することとなる傾向ですが本来の良さは発揮できません。
また、左右のバランスが悪いと低速域は扱いにくく、発進は必要以上にアクセル開度が大きくなります。

勿論バルブクリアランスが基準値内であることは必須ですが、A・Oさんのエンジンは8バルブ中8バルブが最大値を超えた基準値外となっていました。

バルブクリアランスの調整など必要がないという声もあるようですが、その違いは実体験すれば必要か不必要であるか明確となりますね。旧いとか走行距離が延びているから「こんなものです」では、基本性能を発揮させることも出来ず本来の良さを体感できないのが現実です。

エンジンコンディションを整えるうえで、バルブクリアランス調整は必要最低の事であり、4サイクルエンジンはシリンダーヘッドのコンディションが最優先であることを伝えることができたと思います。

ボンネ800のクラッチスプリングは、経年劣化で滑りが出ているのが実情ですが、乗らないとその違いには気づけない。その後の900はプレートを入れてプリロードをかけていますが、同様にヘタリが出ている場合が多く、強化タイプに変更すると、DOHC特有の心地よい吹きあがりによる伸びを体感された事と思う。

物理的なことによる感覚的な違いは、実体験と疑似体験の違いとして明白であり、バイクに乗らないバイクショップにはその違いは理解できない事であり、バイクショップよりもライダーの感覚の方が的を射ている場合も多く見受けられるのが現実です。

メンテナンス後のチョイ乗り試乗は

調整前のボンネビルは、走れないことは無いが、800ccにしては発進時にアクセルを大きく開ける感じで低速トルクが細いバイクだと思われていたようです。

エンジンコンディションが整って各部のチェックを終えた完成後の試乗でA・Oさんは、「本当にこんなに変わるんですね」「排気音も太く歯切れがよくなり変わりました」と、クラッチのフィーリングも良く、アイドリングからクラッチをつないでも発進することができるとご満悦。

1台の空冷ボンネビルのコンディションが整って、その良さを実感されるライダーが一人増えたことは嬉しい限りです。1台でも多くの空冷モダンクラシックをGoodコンディションに整えて、その良さを存分に楽しんで頂きたいと思っております。何なりとお気軽にご相談ください。

帰り道は大雨に合われたようですが、その後は今までにない感覚で楽しまれているレポートが届きました。

A・Oさんよりメンテナンス後のレポートが届きました

こんにちは。A・Oです。

先日はありがとうございました。浜松を過ぎた辺りから大雨でしたが、無事に自宅まで帰り着きました。
つい先ほども、仕事終わりに乗ってきました。

メンテナンスして頂いた前後で、あまりに違いすぎて別のバイクに乗っているようです。
まず、低回転のトルクが増して発進や右左折が楽になりました。スロットルを少し捻っただけで、バイクが押し出されるような感覚があります。また、高速の巡航も楽になった気がします。

今までは、3,500回転辺りを超えると、エンジンに無理をさせているような気がして、あまり回そうという気にならなかったのですが、何の苦も無く元気に回るようになりました。

その他に気づいたことは、

★スロットルの開度と出力がリニアになった

今までは、加速が終わって定速にしようと、少しスロットルを戻しただけで
ガクンと出力が落ちる傾向があり、スロットル操作がシビアでした。
その結果、微調整が必要になり、必要以上に右手を握り込んでしまい、疲れることが多かったです。

調整後は、出力のコントロールがしやすくなり、大らかなスロットル操作でも狙った出力になるので、
右手が疲れなくなりました。

★エンジンの振動や鼓動感が増した。

振動と言っても決して不快な類のものではなく、
しっかり火が飛んでいるような、芯のある鼓動を感じられるようになりました。

★パワーバンドが広がった

今までは、低回転はパワーがないし、高回転ではエンジンに無理をさせている。という感じで、
快適に走れる回転数や速度域が限定されていました。

調整後は、快適な範囲が広がり、少し低めのギアで回転を上げて走ったり、 5速で60km/h巡航したりと、走り方の幅が広がった気がします。

★これが本来の性能なのか、と今更気付かされました。

最初は、0.01mm単位のバルブクリアランス調整で本当に変わるのだろうか?と半信半疑でしたが、
あまりの違いに驚いています。また、キャブ調整の奥深さを実感しました。

工業製品としては完成品だが、機械としては未完成。調整すればもっと快適に走れる。

という社長の言葉が印象に残っています。

ありがとうございました。

お問い合わせ