バイク屋の備忘録

空冷ボンネビル800のメンテナンスで来店 -西宮 D・Yさん

コロナ禍での始まりが3年目となった2022年。思うような活動もままならないこの状況には辟易するが、一日も早い終息を天地神明に祈念する次第である。

年末年始の天気は雪模様となり、年末恒例の乗り納めは天気が悪くSL230TMで近場をひと周りするだけで終えた。初乗りも天気が悪くSL230TMにて近場のチョイ乗りから始まった。

寒い日が続き天候も芳しくないが、再び乗る機会を得て3年目を迎えたSR500TMと深化するCB400SS-TMや定番のSL230TMで、木曽三川の河川敷や近場の田畑でトラクターが働いている風景をアナログ空冷シングルの素朴な乗り味で楽しんでいるうちに1月が去り2月となった。

わずかな雪ならカブ110NWJCコンプリートに乗って雪道を楽しみたいが、大雪で交通渋滞が起きるような状況のなかでの雪中ツーリングはヒンシュクを買う事となるから躊躇している。というのは建前で、昨年の秋ごろから寒さが厳しくなってくると右手が固まって動きが悪くなることが時々あり、万が一を考えて氷点下となるこの季節の遠出は控えている。

手の防寒に関しては、RSAの足立さんにオッサン専用のハンドルカバーを準備してもらって、外気温が1度前後の中を走り続けることは充分可能な仕様だが、この季節を日没後にも延々と走り続けるのは少々厳しくなってきたのか…。

一昨年まではマイナス3度~6度の木曽路を夜間に走り抜けることなど何ら苦も無いことだったのだが、歳を重ねて老化と云う現象を現実として受け入れつつある今日この頃である。

そんなおっさんライダーとは対照的に、若きライダーが悪天候のなか空冷ボンネビル800で兵庫県西宮よりやってきた。

若きライダーの行動力に敬服

1月5日の仕事始めには雪と凍結があったR8号の滋賀県を抜けてR21号の難所である不破の関を超えて、トライアンフ空冷ボンネビル800のメンテナンスのため兵庫県西宮市からD・Yさんが来店された。

昨年の8月中頃にメンテナンスの問い合わせがあり、年末に年初めにメンテナンスで来店される予定になっていた。

年末年始は雪が降りR8号は交通渋滞が発生するほどの大雪となり、路面状況を考えると1月5日の来店は延期の連絡が入ってもおかしくない状況だったが、予定通りに来店されたのは驚きであった。

4日の夜には岐阜へ到着していたとのことで、スリップや転倒など何事も無く到着されたのは何よりでした。

D・Yさんは20代の若きライダーゆえ寒さを苦にすることも無く、残雪や凍結のある道中を空冷ボンネビル800で楽しんでこられた。その若さは、おっさんライダーには羨ましい限りである。

D・Yさんの空冷ボンネビル800のコンディションは

距離は約37,000Km、バーハンドルにバックステップのポジションで少しカフェ風にカスタムされている。

エンジンは、明らかにバルブクリアランスが広くメカノイズが出ていますから、コンディションが整った心地よいエンジン音ではありません。

排気量が800ccもあればゆっくりとした速度で5速でも悠々と走れるのが本来の実力ですが、コンディションが悪いと低速トルクが細く、悠々とした心地よい走りは残念ながら楽しめません。

キャブは、油面をチェックするのが最優先ですが、油面をチェックすることも無くジェット類を変更しても本来の良さは発揮できません。また、左右のバランスが悪いと低速域の扱いにくさに影響します。

勿論バルブクリアランスが基準値内であることが必須ですが、D・Yさんのエンジンは8バルブ中6バルブが基準値外となっていました。

バルブクリアランスの調整などあまり必要がないという声もあるようだが、実体験すればその違いは明確なのだが・・・。

旧いからとか走行距離が延びているから「こんなものです」では、基本性能を発揮させることも出来ず本来の良さを体感できないのが現実である。

エンジンコンディションを整えるうえで、バルブクリアランス調整は必要最低の事であり、4サイクルエンジンはシリンダーヘッドのコンディションが最優先であることをD・Yさんにお伝えできたことと思う。

クラッチスプリングは初期の800の場合、劣化がすすみ滑りが出ているのが実情です。その後の機種はワッシャーを入れてプリロードをかけていますが、経年劣化で同様にヘタリが出ている場合が多く見受けられる。

メンテナンス後のチョイ乗り試乗は

エンジンコンディションが整って各部のチェックを終えての試乗では、「本当にこんなに変わるんですね」とご満悦。クラッチのフィーリングがとても良く、寒い中を岐阜まで走ってきた甲斐があったとの事で何よりです。

帰り道は西ではなく東に向かって遠回りをして帰るとのことで、その若さによる行動力は羨ましい限りである。その後のコンディションについて連絡がなく少し気にしていたところ、仕事でケガをしてバイクにも乗れなかったと連絡があり、ケガも癒えたので週末にはツーリングを楽しむとのことで、後日レポートが届きました。

D・Yさんよりメンテナンス後のレポートが届きました

ご連絡遅くなり、申し訳ありません。
おかげ様で怪我もボンネビルも絶好調です。
以下レポートになります。

調整前のボンネビルは、走れないことは無いが、800ccにしてはトルク感の薄いバイクだと思っていました。
発進からの低速トルクで言えば、以前乗っていた250ccのバイクよりも劣っている、そのような調子でした。

乗り出して約1年、走る度に大きくなっていくタペット音も気になり、ネット上で度々お見受けするノースウィングJCさんにエンジンの整備をお願いする事にしました。

主な整備内容は、エンジン調整(バルブクリアランス・キャブレターセッテイング・強化クラッチスプリング交換)とドライブスプロケットの変更1丁上げだったと思います。

早速整備後のボンネビルに乗って思わず笑みがこぼれてしまいました。

Fスプロケを1丁上げ、高速よりのセッティングにも関わらず、クラッチに気を使わずとも楽に発進できる低速トルク、アクセルを開けた分だけしっかり前に進んでいく様は、購入前よりイメージしていたボンネビルの姿でした。

以前から気になっていたタペット音も、空冷ボンネビルらしいエンジン音に変わりました。
合わせて整備して頂いた強化クラッチスプリングのフィーリングも自分好みで大満足です。

お店から自宅まで約200kmの道のりも、整備前と比べてあっという間でした。
今回の整備のおかげでボンネビルへの愛着も更に深まり、大切に、長く乗ろうと思います。

最後になりますが、1月の寒い中、2日間に渡り、つきっきりで見て下さりありがとうございました。

次は恐らく足回りに手を入れると思います。
お金をためて、また遊びに行かせて頂ければと思います。
ありがとうございました。

ライダーのスキルUPにはGoodコンディションへの提案が必須

若きライダーが、素朴な乗り味の空冷ボンネビルを楽しんでいる事はとても嬉しく思う。これから希少となっていく良き時代のアナログバイクにより、若きライダーの感性が磨かれる魅力も伝えたいと思う。

また、コンディションを整えることが、ライダーのスキルUPに貢献できると常々考えている次第である。

余談だが、空冷ボンネビルやスクランブラーで7万8万キロと走行距離を延ばして乗り続けているライダー諸兄は、良き時代のアナログバイクだからこそ、エンジンをはじめ各部のコンディションも含みトータルバランスを整えて、その魅力を存分に引き出して良き相棒と共に素敵なバイクライフを楽しまれている。

また、経験豊富なライダー諸兄は、新しいものがすべてに良いわけではないこともよくご存じである。

ステムBGが劣化すればコーナーリングがスムーズにはいかなくなる。キャブレターのコンディションが悪いとシャープさを失う。エンジンコンディションが悪い車両でサスを変更しても本来の操縦性は発揮しない。

新車は工業製品としては完成品だが、道具としては未完成だからすべてがGoodではない!

まずはエンジンコンディションからすべてが始まる。と云っても過言ではない。

また、本来の良さをどれだけの車両が発揮しているだろうか。提灯記事のイメージで売ることが最終目的なのか、乗り始めてからが始まりなのか、何故コンディションが整わないうちに代替を推奨するのか、疑問である。

乗り難さの原因がエンジンコンディションであることに気づかない場合が大半だが、ライテクでカーバーすることではなく、スペック云々の話でもない。

当然の事だが、エンジンコンディションを整えることを最優先にトータルバランスを整えることがスキルUPへの近道である。と、おっさんライダーは過去の経験からそのように考えている。

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