バイク屋の備忘録

Honda CL400 & CB400SS

4月の下旬からアツシのCB400SSがNWJC-TM(ツーリングマスター)へと深化が始まり、SR500 NWJC-TMと共に各部のチェックをかねて木曽路を楽しんできた。

CB400SSと同時進行していたCL400も、速さより心地よさをコンセプトに、何かに特化することの無い曖昧さと、和洋折衷のような大らかさで、普段使いのチョイ乗りからフル積載でのロングツーリングまで、自由気ままにフィールドを拡げて楽しめるNWJC-TM(ツーリングマスター)として深化が始まった。

SR500TMとCL400TMでは、低速では2バルブと4バルブの違いがありSRに分があるが、回転が上がってくると4バルブの良さを発揮させて、シングルらしい鼓動感からバランサー効果で滑らかさを発揮してSRとは一味違うHonda RFVC4バルブ空冷Bigシングルの面白さがある。

Bigバイクのように持て余すことのない車格とBigシングルの大らかさは、それぞれに気負うことなく道を選ばずマルチパーパスに楽しめるNWJC-TM(ツーリングマスター)としての良さを発揮しているから、定番ルートの西へ出かけたいと思うのだが、まずはコロナ禍の終息を願う次第である。

コロナ禍がワクチン接種により1日も早く終息することを日々祈念して、東から西へ南から北へと再びバイク三昧で自由気ままにフィールドを拡げて楽しむことを想うばかりでもある。

それぞれのバイクライフ

CL400がNWJC-TM(ツーリングマスター)として出来上がるのを楽しみに待っていたアツシへ、CBとCLの2台で近場をブラブラしながら仕様の違いについて比較しようかと声をかけた。

AM8:00に飛騨清見で合流して、ワインディングを駆け抜けて荒れた道を標高1500mくらいまで登ったところから下界を眺め、引き返して県道からR360を経て宮川の湿原へ登る九十九折れを過ぎたあたりで、前方からカブ110NWJCコンプリートが走って来た。

こんなところでコンプリートに出会うとは、ライダーに目を凝らすとアツシのカミさんではないか、カブ110NWJCコンプリートを駆って合流の予定となっていたようである。

アツシのカミさんは、カブ110Type3やSL230TMでロングツーリングも楽しみ、茶道や華道もたしなむ古風な面も持ち合わせておられ、湿原では色々な植物について丁寧に教えて頂いた。ミズバショウ、リュウキンカ、クロモジ、コブシ、トリカブトに○○?と、色々聞いたのだが再び教えを乞いたいと思う次第である。

CB400SS NWJC-TMを駆るアツシは時間が出来ると飛騨をあちらこちらへと、カミさんもお気に入りのカブ110Type3やSL230TMを駆り、時にはSL230TM2台で飛騨の春を満喫されているようで、羨ましい限りの素敵なバイクライフは何よりである。

CB400NWJC-TM & CL400NWJC-TM

CB400SSとCL400は、トライアンフで云うロードモデルの空冷ボンネビルT100にダートも楽しめる空冷スクランブラー900と同じモダンクラシックで、古き良き時代のHondaはオンモデルのCBとオフモデルのCLで、Hondaデュアルパーパスモデルの元祖はCLのように思う。

旧くはCL72も楽しんだことがあり、その名残でCL400専用にCL72風のアルミタンクを準備して、そのアルミタンクを装備した数少ない1台をNWJCツーリングマスターとして蘇らせた。高速、ワインディング、苔むした簡易舗装路、フラットダートなど、積載状態での足回りも含めて様々な状況下でチェックすることを終えて、その出来には納得である。

CL400はSRと同じキックスターターのみだが、SRのようにマニアックではなくオートデコンプだから、ただ踏み込めば誰でも簡単にエンジンが掛る手軽さは、革新のHondaの良さかも。

Yamaha SRの対抗馬としてGB500・400からCL400・CB400SSへと次々と現れては消える革新のHondaはすべて短命で、良い意味で保守のSRは、40数年の長きにわたって活躍して名車となった。

CB・CLの足回りは経年劣化も含めて共にクタクタでとても楽しめるものではなく、タンデムや積載状態では使えない。それはSRも同じであり、どんなコンセプトでこんな足回りになったのか面白いものである。

フロントサスには僅かに手を加えて、リアサスは耐荷重性を高めた仕様でセッテイング変更して、積載状態でトップケース上のラックに更にバックを装備して水とお茶で約2Lを積み込み、重心も少し高めで走らせてチェックを終えた。

CB400SSとCL400で其々専用のリアキャリアKitは剛性感も高く、Honda純正のリアキャリとは用途が違うからその差は歴然で、積載時の操縦性や安定感などのチェックも終えて、フル積載でも気負うことなく自由気ままにフィールドを拡げてマルチパーパスに楽しめることも納得である。

アツシもCBから乗り換えたCLをワインディングで走らせて、「Good!」を連発。早々に仕様変更をすることを要望。バイク屋自らの実体験による提案は、ライダーとして実体験ができれば説明は要らない。 

帰路では美濃から各務原まで東海北陸道を2区間走らせて、NWJC-TM専用スクリーンのフェアリング効果も確認済みで、高速道や自動車道の移動も車格や排気量などに関わらず楽々である。

競技であれば革新も結構だが、一般道を楽しむのであればスペックや電子制御云々の革新や売るがための提灯記事などによる「いいね」のイメージよりも、昔ながらの素朴な乗り味の機械式アナログバイクに、バイク屋として培った独自のメンテナンスやモディファイを施し、バイク屋のバイク乗りとしての実体験に基づいて、より楽しむ為の提案ができることは何よりである。

腕時計とバイク

大型アドベンチャーモデルやXR250を何台も乗り継ぎ、カブ110NWJCコンプリートType2に乗り換えてから走行距離は5万キロを越えたが、Goodコンディションで楽しまれている大阪のNさんから、以前に面白い話を聞いたことがある。(現在のアフターメンテナンスはバイク乗りとして同じカブ110NWJCコンプリートType2を楽しんでいる大阪のバイク屋RBRに依頼している)

それは腕時計の話で、冗談のようにHonda GoldWingを買うのをやめて腕時計を云々とのことで、Nさんは機械式腕時計が大のお気に入り。正確さでは最新の電波時計かもしれないが、刻むビートを目で見て音でも楽しめるのは機械式ならではで、バイクにも同じものを感じているとのこと。

話の途中で「腕時計は機械式でしょ」と突然問われて、勿論とアイコンタクトで応えた。Nさんの云われる機械式時計とバイクの関係は意外な話であったが感覚的によく解り納得である。

時計の外観もバイクと同様で色々あるが、外観はクラシックでも中身は電子制御によるライダー補助装置満載のバイクは、時計で云うところの電波時計と同じで、スペックではある意味高性能かもしれないが、人車一体で体の一部と同化して感性で楽しむ道具としては、いかがなものかと思う次第である。

電子制御に関する装置はメンテナンスにおいて、マニュアル通りに電気を流してテスターチェックによる良否判定となるが、機械式は目で見て、触って、測って、音を聞くなど五官で確かめてからメンテナンスやモディファイによりGoodコンディションに整える面白みもあるが、バイク乗りとしての経験も求められるところでもある。しかし、バイク乗りとしての経験が乏しければテスターチェックと消耗品交換のみとなるのが現実である。

某ブランドメーカーの旧型は至る所で目にし、それ以降のモデルでは革新の最新型も目にするが新旧の中間にある現行以前のモデルは、スッポリと抜け落ちたように目にすることが無くなったのは何故だろうか。

一般道を楽しむ趣味のバイクで、あらゆる状況に対応することを革新のテクノロジーで処理するか、ライダーのスキルで処理するのか、楽しみ方は十人十色であるが、アナログ回帰により感性で楽しめるバイクライフは今の時代に最適であるように思う次第である。

売るがためよりも如何に楽しめるか、そんなことを云えば時代遅れのバイク屋と思われるだろうがそれもよい。感性により人車一体で操る面白さがあるアナログバイクの持つ優しさが、時代の流れに埋もれることも色あせることもないのは何よりであると思う今日この頃である。

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