バイク屋の備忘録

カブ110NWJCコンプリートで木曽路へ

日に日に寒さが増して10℃を下回る気温はバイクには厳しい季節となってきたが、カブ110NWJCコンプリートで、馬籠宿から贄川宿までの木曽路を楽しんできた。

今回の木曽路は意外にも暖かく岐阜からは往復400Km弱の距離で、脇道へ逸れたり立ち止まったり、落ち葉のじゅうたんとなった峠道など「速さより心地よさ」で楽しむ事ができた。

どこへでも行けるイメージのアドベンチャーモデルでもこれからの季節は厳しく、雪の季節になると大型アドベンチャーはまったく出番がなくなるが、何かに特化することの無いカブ110NWJCコンプリートなら気負うことも無く悠々と楽しめる。しかし、おっさんライダーには寒さが骨身に染みる季節でもある。

カブ110NWJCコンプリートも満6歳

バイク屋のバイク乗りの感性とメカニックの経験を融合した独自の観点から、おっさんライダー自らも楽しむ為に企画したカブ110NWJCコンプリートは、2014年からJA07型のプロトタイプで始まり、JA42型でType3となり6年が経過した。

おっさんライダーが各部をチェックして継続的に楽しんでいるJA10型Type2も快調である。違和感や問題点などは、乗らなければ何も分からないから「こんなものです」とした対応しかできないのは当然のことで、バイク屋のバイク乗りとしての実体験からすべてが始まる。

カブ110NWJCコンプリートは、スーパースポーツやアドベンチャー等のカテゴリーに囚われることもなく、何かに特化することのない曖昧さと和洋折衷のような大らかさは、言い方をかえれば万能でマルチパーパスとしての使い勝手も抜群でバイクライフを面白く楽しませてくれる。と、云ったところである。

新製品は良いものとした先入観は、売るがための提灯記事を鵜呑みにできる思考停止状態となるようだが、カブ110NWJCコンプリートは前後ドラムブレーキで何も装備していない旧型だが、何ら不満はない。

新たな機構が追加されると良くなったような気がするが、スペックや仕様を高めることよりも足らないところを人車一体で補うことがライディングの醍醐味と面白さであり、勘違いさせることの無い優しさでもある。
すべてをアシストする最新のトータルコントロール等はライダーがオペレーターとなる事のように思うのである。

チョイ乗りの普段使いから荷物を満載のバイク旅まで、フル積載状態での操縦性と安定感はカブシリーズ最強で、レッグシールドとスクリーンによるフェアリング効果はカブの定番で、速さより心地よさで気負うこと無く自由気ままにフィールドを拡げて誰でもが楽しめる。その乗り味は多くのベテランライダーも納得である。

バイクライフを満喫する価値ある道具

中山道の馬籠宿から贄川宿の80Km程の間に11もの宿場があり、その間が木曽路と云われている。大型バイクではR19号で道の駅に立ち寄り、お昼は蕎麦でも食べて通り抜けることになるのが一般的のようだが、カブ110NWJCコンプリートならではのGo&Stopを繰り返してのんびりと巡ることにした。

昔の人は一日どれだけの距離を歩いたのだろう。昔の旅人に比べればカブでのんびりと云っても役人の早馬よりも速いのかもしれないが、バイクの中では最ものんびりできて、速さより心地よさで道を選ぶことも無く、悠々とバイク旅を楽しめるのはカブ110NWJCコンプリートであると自負している次第である。

おっさんライダーは木曽義仲公のファンだから、義仲公ゆかりの木曽はよく訪ねるし、木曽漆器は好んで使っている。懇意にしていただいている木曽漆器のお店を初めて訪ねたとき、そのお店のお婆様から「文化は無くても生活は成り立つが、その価値を伝えたい」また、「使わないのであれば買わなくてもよい、普段の生活で使ってこそ木曽漆器の良さや価値がわかる」と、心に残る好いお話を伺った。

おっさんのバイク屋観にも通じるものがあり、売るがための話題性やブランド・スペック等の提灯記事や流行廃りに惑わされることも無く、所有する価値観よりも乗り始めてからバイクライフを満喫するための価値ある道具であり良き相棒となるよう、バイク屋の実体験に基づいた提案が大切であると考えている。

飛騨のアツシは、アフリカツインのネーミングとトリコロールカラーに誘惑されて、憧れのCRF1000アフリカツインを手にするとしばらくは遠出などで楽しんでいたが、いつの間にか所有する価値観なのかガレージのオブジェと化している。

アフリカツインは憧れが現実となって一段落すると、カブ110NWJCコンプリートとSL230ツーリングマスターでは頻繁に出歩いて、カミさんのひんしゅくを買うことも度々のよう。
まさに「使わないのであれば買わなくてもよい、普段の生活で使ってこそ木曽漆器の良さや価値がわかる」お婆様の話に通じるものがある。

木曽路を楽しむ

岐阜を5:30に出発したが、この季節の夜明けは遅く暗い中を走り始めると同時にポツリポツリときた。しばらく進むと本降りとなり、橋の下でレインを着込み再び走り始めた。天気予報は夕方から崩れるような予報だったが・・・と思いながら100Km先の馬籠宿を目指して走り続けた。

不意の雨でもカブのレッグシールドとスクリーンは全天候に対応した優れもので、これから寒くなる真冬でも気負うことなく楽しめるのは、レッグシールドとスクリーンと大型ナックルガードのおかげだが、いつもと何ら変わる事もなくそれを意識させない素朴さもカブ110NWJCコンプリートの魅力である。

馬籠宿の「是より北 木曽路」の石碑の前から再び走り始めて馬籠峠から妻籠宿へと抜けて、R19沿いから脇道へ逸れると、旧い宿場の面影を色濃く残しているところもあれば、火事や災害でわずかに面影を残しているとこなど様々で、脇道へ逸れたり立ち止まったりUターンしたりと、ノンビリのバイク旅には最適なカブ110NWJCコンプリートならではの良さを存分に発揮して良き日を過ごすことができた。

R19沿いの滝は北斎や広重の浮世絵となっている。何ら変わることなく水は流れ落ちているが、時を越えて浮世絵の世界を垣間見るのはアナログのバイクと同じで奥が深く面白い。カブであれば立ち止まることもUターンも楽々だが、Bigでは横目で見ながら素通りが定番で立ち止まる事はなかった。

昔の旅人は一日どれだけの距離を歩いたのだろう。昔の旅人に比べればカブでのんびりと云っても役人の早馬と比べてどうだろう。道を選ぶことも無く速さより心地よさで悠々と楽しめるのはカブ110NWJCコンプリートであると自負している次第である。

宮ノ越宿は、義仲公の館跡近くの旗揚げ八幡宮と南宮神社へ参拝した後、旗揚八幡のすぐ裏の国道沿いにある数年前から始まったソバ屋へ立ち寄るのが定番化しているが、今回は途中でおにぎりを頬張る事にした。

薮原宿から奈良井宿へは飛騨街道の追分の道標のある急坂を登ると、落ち葉を敷きつめたダートの峠道となりアドベンチャーモデルでも躊躇する滑りやすい路面となっている。アドベンチャーモデルならどんなところでも行けると勘違いしている人も多いようだが、スキルが求められるのは当然のこと。

フル積載で雪道でも楽しめるカブ110NWJCコンプリートはトータルバランスが高く、足つき性もよくアドベンチャーモデルと比べても勝るとも劣らない走破性で、落ち葉のじゅうたんでも気負うことも無く悠々と駆け抜けた。その使い勝手の良さは、ワクワク感と心地良さでいつもと変わらない。

馬籠宿にある「是より北 木曽路」の石碑から走り始めて、それぞれの宿場ではGo&Stopを繰り返してR19号沿いの贄川宿の外れにある「是より南 木曽路」の石碑までの木曽路をカブ110NWJCコンプリートと共に速さより心地よさで楽しめた。

気負うことなく扱える車格と使いこなせる排気量へジャストサイジングすると、視野が広がり見える風景も変化して楽しみ方も変わってくるから面白いものである。

良き相棒のカブ110NWJCコンプリート

往復で400Km弱の距離で楽しんだが、カブのレッグシールドとスクリーンは疲労軽減に貢献して、カブ110NWJCコンプリートの特徴は14インチホイールだから、足つきはカブシリーズの中では最も良く、フル積載時の安定感と操縦性の両立はカブシリーズ中最強で、マルチパーパスの使い勝手良さは格別である。

シートからステップまでの距離は他のカブと同じで、肉厚のコンフォートシートに変更すれば膝の曲がりもクロスカブと同等かそれ以上で、条件の悪い雪道などでは足つきの良さは安心感でもあり、気負うことも無く心地よく走り続ける事ができる。

カブ110NWJCコンプリートの自慢話をするつもりは無いが、カテゴリーやスペックなど新製品の話題性とイメージを売りにした提灯記事による疑似体験と、現実的に楽しめるコンディションには大きな違いがあるが、「こんなものです」とした対応では本来の良さを引き出せない。

乗り始めてから良き相棒として楽しめるコンディションに整えるには、バイク屋のバイク乗りとしての実体験に基づくメンテナンスやモディファイが必須である。

カブ110NWJCコンプリートも6万~7万キロと走行距離が延びている車両が増えているが、バイク屋のバイク乗りの感性とメカニックの経験を融合したNWJC独自のメンテナンスは壊れたところを修理するのではなく、Goodコンディションを維持する提案であり、皆が愛着をもって楽しまれているのは嬉しい限りである。

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