バイクは健康療具

XR230TMに乗ってバイクの価値を再考察

今年は、ゴールドウイングもバッテリー上がりを引き起こしてしまうほど、ツーリングを楽しむ機会が少なかった。高田さんがSL230 NWJCツーリングマスター仕様(TM)でキャンプツーリングに出かける話を聞き、11月になってようやく、私もXR230TMで同行することが出来た。

同じように6月以来悪天候と仕事が忙しくてツーリングに出かけられなかった、いつものメンバーのKさんもXR230TMでキャンプに行きたいとウズウズしていたらしく、一緒に出かけることになった。

XR230TM仕様に積載力がある大型バイクと同じキャンプ道具を積み込んで、島根県浜田の海岸でキャンプを楽しみ、バイク任せで走り続けて、とても楽しく充実したツーリングであった。

バイク任せ

一言で「バイク任せ」と言っても、車両によって、その意味合いが全く異なると思う。

「バイク任せ」と言うと自動運転も連想できるが決してそうではない。操る意思とXR230TMとの関係が以心伝心とでも言うのか、自然に一体感が生まれてバイクとの関係(会話)が密であるから実に扱いやすく、軽快で安定していて、安心して乗り続けることが出来るので、そう表現するしかないのだ。

XR230TMは、キャンプ道具を満載にしていても、軽量コンパクトな車体と粘りのあるエンジン特性は扱いやすく心地良く走り続けることが楽しい車両だ。去年から何度もそうコラムに書いていると思う。

XR230TMの場合は、バイクの性能に合わせることに気を遣うことは無い。その日の私の気分に合わせて、私の好きなコースを、自分のペースで楽しんでいるという状態像が「バイク任せ」だと思う。

一方、ゴールドウイング1800の場合は、私の気分は二の次で、自分が引き出すことの出来る範囲のバイクの性能に合わせて、バイクを走らせ易いように考えて走っている、そういう状態像が「バイク任せ」だと思う。

楽しめる道を選び、集中力を維持しながら、緊張して走っている状態だ。同じ言葉でも、車両によって、こうも違う意味になってしまうのだ。だから楽しみ方にも違いが出来てしまうのだろう。

楽しみ方の違い

その楽しみ方の違いとは、主役がライダーである私なのか、乗っているバイクなのか、という見方で考えられると思う。

バイクに乗り始めた学生時代の私は、ツーリングというと、バイクに乗る一つのイベントに参加して、一人のライダーの役を演じている状態だった。

自主性は在るようで無い、バイクという主役に付いているアクセサリーのような存在であったが、それでも自分は凄いことをやっている気分でいた。気負って頑張ってライディングすることが凄いことだった。

15年位前に、SL230を購入して、NWJC流トレッキングごっこに参加するようになって、バイクに乗る時に必要な言葉で表現し難い感覚的なものを身に着け始めてからは、ライディングテクニックを頭で考えてバイクに乗る、という乗り方ではない乗り方になった。

現在の私は、学生時代とは全くと言って良い程、違うライディングスタイルだ。荷物が満載でも抜群の安定感で走り続けることが出来るXR230TM仕様に、トレッキングごっこで培ったバイクとの楽しい会話の相乗効果で、気負わずにライディングを楽しんでいる。

今XR230TMに乗っている時の私は、キャンプツーリングの主人公で、自然体の状態だ。

自然体となる前は

私がツーリング経験の浅い時には、雨具と手荷物だけをウエストバックやリュックに詰めて片道100km往復200kmのツーリングであっても1日かけて走るイメージだったと思う。

だからその頃は、小排気量のバイクに沢山の荷物を積み込んで旅に出る、と言うことは、冒険に出かける、と言う意味で捉えていたと思う。
そこには気負いや衒いがあった。

荷物の積載状態も影響してなのか車体そのものも不安定で、常に油断出来ないような状態で、とても疲れて体力を消耗してしまう。大変な思いをするものだ、というのが常識であったと思う。

そういう常識を持っていた時に、パニアケースの付いた大型バイクは、冒険を可能にする凄いバイクだと思って憧れていた。

私が初めて乗った大型バイクであるBMW R1100GSに、左右のパニアケースとトップケースを付けて北海道へツーリングに出かけた時には、とても快適だった。GS(ゲレンデ・シュポルト)という名の如く、大地を駆け巡ることが出来る、凄い乗り物だと思った。

沢山荷物を積むなら、ツアラーというカテゴリーの大型バイクに限る、そう信じて疑わなかった。勿論、この時にも気負いや衒いがあった。

小排気量のバイクに対する過去の経験

カブ・コンプリートは、沢山の荷物を運ぶカブ110 Proがベースだから、沢山荷物を積んでいても心地良く走り続けることが出来る。ということは、体験しなくても、少しはイメージすることが出来た。

しかしXR230もモディファイされると同じように沢山荷物を積んでも心地良く走り続けられるようになる、ということは信じられなかった。

トレッキングごっこ用にモディファイしたSL230に、ちょっとした荷物を積んで日帰りツーリングを楽しんだことはあるが、高速走行は不安定でハンドルは取られるし、2時間も走ればお尻が痛くなるしで、長距離ツーリング等はとても考えられなかった。

学生時代には、XLR250Rにキャンプ道具を積載してツーリングに出かけ、かなり不安定で途中でリアキャリアが折れて大変な思いをした経験がある。

だから、XR230にキャンプ道具を満載にしてツーリングしたらどうなってしまうのかを想像すると、辛い体験することになるのが過去の経験から頭に浮かんだ。

ツーリングマスターという名前が付くような安定した状態へ劇的に変化するとは思えない。そういう常識を覆すには、実際に荷物を積んで走り続けて、目から鱗が落ちる体験をするしかない。と言える

SL230TMでキャンプツーリングと神話を楽しむ

バイク屋さんの価値観とは

モディファイすることが出来れば、ということが、とても難しい事のようだ。バイク屋さん自身の実体験をフィードバックして、モディファイして頂くのと、それを形だけ真似したパーツだけを取り付けて頂くのとでは、雲泥の差があることを目の当たりにしたこともあるのだ。

私のXR230TMは、XR230トレッキング仕様から、高田さん曰く「ライダーの目線とメカニックの感性」を融合させた実体験に基づいて、高い次元のノウハウがフィードバックされている。

徐々にツーリングモデルへと進化させてもらい、一つ一つ、変化を味わうことが出来た。言うまでもないが、空冷スクランブラーNWJC2014仕様も同じ手法だ。この経験一つ一つが、私にとっての財産になっている。

私自身、何人かのバイク屋さんを知っているが、キチンとしたメンテナンスとモディファイをしてもらいその違いを実感できたバイク屋さんは、NWJCだけだった。

高田さんの知り合いのバイクショップさんで、同じ車輌を使って同じように聞こえる話をされている方もおられたが、現在は疎遠のようだ。

一見すると同じだが似て非なる車両で一緒にツーリングに出かけたことも何度かあるが、高田さんは一人のバイク乗りとして楽しまれているのに対して、そのバイクショップさんは、楽しむことより何を目的に参加されているのか、根本的な違いがあるようで不可解であった。

車両の仕様の違いは見てはおられたが、目新しいパーツを付ければ、ほんの少し良くなった気がするからか、同じようなパーツの取り付け作業をモディファイとされているのか、経験値の差がトータルバランスの差であることは、ドシャ降りの峠越えで、バイク屋ではない私の目から見ても明らかだった。

私やいつものメンバーが体験している、キチンとしたモディファイのことを、どういう言葉で表現して良いか分からない。しかし、「こんなもんですよ」だけでは終わらない、実体験に基づく豊富な経験からバイクライフを豊かにする、メンテナンス+αが提供されていることは事実だ。

私にとって、そういうメンテナンス+αのモディファイを受けているXR230TMは、空冷スクランブラー2014仕様やBMW R100RS同様にとても価値があり、私のバイクライフを充実させる糧でもあるのだ。

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