バイク屋の備忘録

HONDA VTRのコンディションを整えて楽しむ

今年の梅雨は集中豪雨による災害や酷暑などの異常気象となり、バイクを楽しむことを自粛した方々も多かったことと思う。

いつになれば心地よくバイク旅を楽しめる気候となるのだろうか、ここ数日の朝晩は涼しく日中の暑さも和らぎバイクを楽しむには良い気候となりはじめたようだが台風情報も気になるところだ。

天候不順で集中豪雨や酷暑の中を走ることになっても何ら苦にならずバイク旅を楽しんできたが、最近の予測できない異常気象では結果として無謀なことにも成り兼ねないから、歳相応の楽しみ方が肝要かと思う今日この頃である。

「こんなもの」です

今年は、酷暑や豪雨のためバイクを楽しむことは一休みしてバイクのコンディションを整える人が多いのは何故だろう。長年バイクを楽しんでいるベテランは250クラスの良さを充分理解されてメインがダウンサイジングした250やカブなどになり、従来のビッグバイクがセカンドバイクとなる傾向が顕著になっている。

その中でもVTRの違和感などを取り除いて楽しみたい方からの問い合わせがチラホラ。意味不明なフレーズのOtona Moto VTRをバイク屋North Wing JCが一人のバイク乗りとして、普段使いのチョイ乗りからロングツーリングまで楽しめるよう違和感や問題点を改善したVTR NWJC仕様についてのレポートに興味をもたれている方がお見えのようだ。

VTR

バイク屋のおっさんライダーが楽しんでいるVTRは、意味不明なフレーズのOtona Moto VTRとは当然異なるが、遠いハンドルポジションには違和感があるものの乗りなれれば・・・、速度が上がると軽快感がなくなり上手く曲がらない、ブレーキの効きが云々、経年劣化によるサスのへたりなど不満や違和感には「こんなもの」と納得されているのは何故だろう。

様々な違和感や問題については「こんなもの」と妙に納得していたが、それらが改善できることへの興味や本当に楽しめるようになるのか、と半信半疑で捉えている方が大半である。
それは、コンディションを整える前のトライアンフ空冷モダンクラシックを「こんなもの」だから・・・と納得されていた方々と同じ気持ちであることが良く分かる。

空冷ボンネ

消耗部品の交換やマフラーなどボルトオンパーツの組み付けが得意なバイクショップでも、バイク乗りとして同一車種への継続的な実体験がないと感覚的な違和感は解らない。「こんなもんです」とか「別に問題はありません」あるいはライテクが云々となるのは当然のことだろう。

新型への乗り換えを奨めるなどありきたりの対応となるのが一般的だが、「旧いから」とか「こんなもの」という対応には妙に説得力があるのが、バイク屋のおっさんライダーには滑稽で面白く思える。

トータルバランスを整えて楽しむ

乗り慣れたVTRも乗り続けるうちに違和感や問題に思えるところもあるが「こんなもの」と妥協するのが一般的のようだが、VTRを存分に楽しみたいライダーはコンディションの整ったVTRとはどんなものなのか体感してみたいとか、積載時の安定感などロングツーリングを楽しむ為の相談など様々な問い合わせがある。

バイクのコンディションは「こんなもの」と不変であるかのように思われている方が多いが、エンジンコンディションをはじめ足回りなどトータルバランスを整えることにより感覚的に扱いやすくなれば、バイクとの一体感が高まり、速さより心地良さで楽しめるVTRの良さを実感できる。

トータルバランスを整えるメンテナンスは、ライテクよりも優先されることも分かるだろう。

メンテナンス4

数値的なスペックを重視される方も多いが感覚的なことについて一言、一昔前の旧いバイクでの速度感と最新のバイクでの速度感は、同じ速度でも旧いバイクは速く感じ最新のバイクではゆっくり感じる。感覚的にはゆっくりでも物理的には無謀な速度、なんて経験をされた方も多いのではないだろうか。

バイク事故に関する道路掲示板をよく目にするが、物理的に無謀な速度で走っていることはスピードメーターを見れば分かる。

しかし、感覚的には無謀な速度であることが分からないからか、昔取った杵柄云々で最新モデルの高性能ゆえの判り難さを、乗りやすさと勘違いした過信や慢心により事故が起きている面のあるように思う。

日本の道で心地良いと感じる速度域が道路事情に釣り合っていない場合ストレスとなり、ついついオーバーペースなりがちだが、物理的なことと感覚的なことが分かりやすく同調することも、速さより心地良さで楽しむためのトータルバランスであると考えている次第である。

VTRを楽しみたいSさん

他店で購入したSさんのVTRについて、不満もあるし「こんなもの」なのか・・良いのか悪いのか本当のところを知りたい。もし悪いところがあればメンテナンスしてもらえればと、6月度の西へのツーリングでK1600GTを駆って共に楽しんだTさん経由で依頼があった。

SさんVTR

後日Tさんと共に来店されたSさん。VTRに関する違和感や疑問について伺いVTRを存分に楽しみたい気持ちが伝わってくる。とりあえずVTR NWJC仕様を試乗していただくことにした。

暫らくして試乗から帰ってきたSさんにVTR NWJC仕様の印象を訪ねてみた。ハンドルポジション、アクセルのつき、軽快なコーナーリングやブレーキの効き具合など、同じVTRでも乗り味が随分違うことを実感されていた。

同じVTRを試乗してその違いを体感できれば、どんなメンテナンスが必要であるかを説明するときに其々の違いについて分かりやすく伝えることができて、「こんなもの」と思っていたVTRの違和感や問題点を物理的なことと感覚的なことの両面からイメージしやすくして伝えられる。

メンテナンス1

感覚的な違和感などについて汲み取ることと分かりやすく伝えることは、バイク屋のバイク乗りとしての実体験に基づいた経験が問われるところでもある。

SさんのVTRが深化

リアタイヤはバルブからのエアー漏れもあり磨耗しているから交換も依頼されたが、タイヤ交換はメンテナンスがすべて完了した後にすることにしてエアバルブの交換のみでメンテナンスによる違いを体感していただくことになった。それは経験豊富なTさんからのアドバイスでもあった。

エアバルブ

エンジンコンディションをはじめハンドルポジションや足回りまで「おまかせメンテナンス」の依頼を受け、完了させるまでの時間を少し長めに頂いた。

メンテナンス完了後の車輌の引き取りは、TさんのXRバハにタンデムで来店された。早速試乗に出られたが、中々帰ってこられない。何事も無ければ良いが、どうしたのかと気になる。

それから暫らくしてやっとSさんが帰ってきた。ヘルメットを脱いだSさんは満面の笑み。

エンジンフィーリングが変わり5速の低速域でのトルクが太くどこからでもアクセルに反応して吹き上がるようになったことは少し驚きのよう。国道から裏路地まで色々なところを走りVTRの深化を実感され、扱いやすくなったVTRを色々試されていたよう。

バルブクリアランス

「こんなもの」と思われていたVTRのトータルバランスを整えることが、Sさんの充実したバイクライフの一助になることを願う次第である。

W650からSL230TMにダウンサイジングしてキャンプツーリングにドップリはまっているギター職人のS・OさんからもVTRのメンテナンス依頼を以前から受けていた。涼しくなってからということで具体的な作業日程は決めていなかったが、SさんのVTRをメンテナンスした事に触発されてか近日中に持ち込むとの事。

メンテナンスが終わればVTRでもキャンプツーリングを楽しまれるようだが、その前にSさんも誘ってVTRでツーリングに出かけることを提案した。

トータルバランスを整えたVTRで共に走り、その良さを巧く引き出して、ダウンサイジングによる扱える車格と使いこなせる排気量のVTRを存分に楽しむためのヒントをバイク屋のバイク乗りとして伝えることが出来ればと思う次第である。

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