ボンネビルT100ツーリングマスターと大型ツアラー
新緑の季節はあっという間に通り過ぎて梅雨が明けると熱い夏がやってくる。バイク乗りにとってしばらくは憂鬱な季節となるが、一日も早い梅雨明けを願う次第である。
梅雨と台風発生の予報で悪天候となりそうな週末ではあったが、いつものメンバーと共にお気に入りの西へ向けてツーリングに出かけた。
おっさんライダーより少し若い・・?いつものメンバーが駆るのは、大型ツアラーのゴールドウイング1800とBMW K1600GTに大型アドベンチャアーのアフリカツインCRF1000Lと全車フラッグシップモデルである。
おっさんライダーも昨年まではゴールドウイングを楽しんできたが、歳を重ねることにより価値観が変わったことを機にゴールドウイングに乗ることを已めて、気負うことなく自由気ままに楽しめる車格の空冷ボンネビルT100TMを走らせた。
今回参加したメンバーは其々にバイクライフを楽しんでいるが、気負うことなく自由気ままに旅を楽しむために蘇らせたSL230TMかXR230TMを楽しみ、ダウンサイジングする面白さでは共感するところがある。
おっさんライダーよりも少し若いいつものメンバーも、年齢と共に夫々のバイクライフに何らかの変化が起き始めているようである。存在感を誇示する見栄やてらいでフラッグシップモデルを楽しんでいるわけではないから、夫々にこれからのバイクライフについて考えることをテーマとして、いつもとは趣が異なるツーリングを楽しんできた。
夫々のバイクライフ
BMW K1600GTやハーレーの他にも多数のバイクを所有してバイクライフを楽しんでいるTさんは、XR250BAJAやSL230TMをベストコンディションに整えると2バルブと4バルブの違いも鮮明に体感できて、ダウンサイジングする面白さが今までとは違う感覚で楽しめるようになったとの事。
また、年齢と共に大型バイクでの楽しみ方が何となくぼやけてきた事など、大型バイクの楽しみ方についての意見交換が今回のツーリングの発端となっている。
エンデューロやモトクロス中部選手権などスポーツライクに楽しんできたTさん曰く、R1200STの時は楽しめたのにK1600GTに乗り換えてからはアクセルワークには絶えず違和感がつきまとい、北海道ツーリングで爆弾低気圧に遭遇した時や明石大橋と瀬戸大橋でも横風に弱いK1600GTで怖い思いをしたとのこと。
奥さんとのタンデムではR1200STよりもパセンジャーの快適性を重視したつもりがシートの形状によるものか座り心地が不評だったことなど、K1600GTでは楽しい思い出が無いなぁ~とポツリ。
アフリカツインCRF1000Lで参加のKさんは、アフリカツインの発売と同時に増車して頻繁に乗っていたのは半年ぐらいだったか、それからは乗る機会が徐々に減り始めてついにはバッテリーが上がるほどガレージの中で眠っていた。
久々のツーリングでは出先でスターターSWの不良が原因でエンジンが始動しなくなり、数か月でこんなトラブルが発生するなんて・・・電話も通じないような所だったらどうなっただろうと語り、その不信感が発端となり一気に熱が冷めてしまったようである。
乗り始めたころのアフリカツインは好奇心も手伝ってそれなりに楽しめたが、何が要因かよく分からないがシックリと来るところが判らないから馴染めず楽しめなくなったとのことだが、長年楽しんでいるBMW R100GS/PDやトライアンフ空冷スクランブラーは、旧くても最新型とは違ってロングツーリングでトラブルに見舞われたことも無く、機械式のアナログ感は体感フィーリングの良さがあり、心地よく走り続ける楽しさがあるとのこと。
Kさんからアフリカツインを増車したいと相談を受けたとき、バイク屋としては「毎度ありがとうございます」と契約するのが一般的だろうが、バイク屋のおっさんライダーはKさんの楽しみ方をある程度理解していたから、日本の道路事情では少しの間は楽しめるだろうがすぐに冷めるから・・・と伝えていたことが残念ながら的中したようだ。
ゴールドウイングで参加の村田さんは、精神科医の目線から健康療具としてバイクの価値を見出されている。数年前の東北ツーリングではチョットした不注意から腰痛になったおっさんライダーにゴールドウイングからカブに乗り換えることを提案したのも村田さんである。その道中で腰痛が治まりバイクが健康療具であることを垣間見た次第である。
バイク屋では想像もできない観点からバイクライフを満喫している村田さんは、カブ110NWJCコンプリートからゴールドウイングまで多くのバイクを所有してそれぞれの良さを楽しみ、トライアンフ空冷スクランブラーやBMW R100RSを長く楽しむためのトレーニングマシーンとしてゴールドウイングを楽しまれているが、年齢と共に体力の衰えを実感することがある今日この頃のよう。
今回のツーリングでは、フラッグシップとかプレミアムとして所有する価値と、バイクライフを満喫できる使い慣れた道具としての価値の狭間で、夫々がバイクとの関わりあい方を見直す良い機会となったようである。
バイク屋のバイク乗りの目線
ライダーの平均年齢も53歳となり、最後のビッグバイクを求めるか、大型から小排気量へとダウンサイジングするか選択肢が分かれている。気負うことなく楽しめる車格へダウンサイジング傾向にあるのも事実であるが、電子制御が満載で走りに特化させて技術力を誇示しているような車両とかフルサイズで存在感を誇示しているものもあるが、遊び心をワクワクさせるようなバイクが少なくなっているのは何故だろう。
歳を重ねたバイク屋のおっさんライダーが、これからのバイクライフを満喫するためにカブ110NWJCコンプリートで気負わず自由気ままな旅を楽しみ、トレッキングごっこや林道ツーリングなど長年楽しんできたSL230でカブ同様に旅を楽しむためにツーリングマスター(TM)として蘇らせたのは、バイク屋のバイク乗りとして誰でもが気負わず自由気ままにバイクライフを満喫するための自らの実体験に基づいた提案である。
バイク屋のバイク乗りとして楽しみ自らの実体験に基づいて本音を語ることと、バイクライフを自ら楽しむことも無くバイクを売るがための方便との違いは、長年バイクライフを楽しんでいるライダー諸兄にはご理解いただけることと思う。また、ライダーの高齢化に伴いバイクでの死亡事故も増加している昨今、所有欲に見栄やてらいだけでは何ら得るものは無いのでは・・・。
トライアンフ空冷ボンネビルT100ツーリングマスター(TM)
トライアンフ空冷ボンネビルT100 NWJC2014仕様に旅を楽しめるよう積載力を高め積載時の安定感と操縦性を両立させて、バイク屋のおっさんライダーが道を選ぶことも無く自由気ままにフィールドを拡げて旅を楽しむために深化させたのがボンネビルT100ツーリングマスター(TM)である。
今回のツーリングは、ロングツーリングが得意とされる最新の大型ツアラーと共に走ることで、空冷ボンネビルT100TMの実力を試す良い機会を得る事ができた。
土曜日の夕方から高速道で一気移動して、翌日は一般道を主に全走行距離は800Km弱程度を走り、お気に入りのボンネT100TMの魅力を再確認できる面白く楽しいツーリングであった。
皆を先導しているボンネT100TMのペースは、スクランブラー2014仕様に乗る村田さんやKさんと共に走る時と同じペースだが、2人にとっては大柄な車格の車両をいつものワインディングで走らせるとこんなに違うものかと驚きでもあり、かなりのハイペースに感じられたようだ。
また、同じ空冷モダンクラシック乗りとして後方よりその走りを眺めながら、おっさんライダーとボンネビルT100TMが一体となった走りは見るからに楽しそうで、操作感をイメージできる2人は人の関わる領域が広い機械式のアナログ感は操る楽しさに溢れていることを改めて目の当たりにされたようである。
K1600GTを駆るTさんは、ボンネビルT100TMの後方からその走りを眺めて、旧い空冷モダンクラシックT100TMの走りは想像以上で、ワインディングの軽快な走りは意外でちょっと驚きでもあったようだ。
ノーマル状態のモダンクラシックでは軽快な走りと無縁であることは、2014仕様への深化の過程を実体験によりつぶさにご存じである村田さんとKさん二人の空冷スクランブラー乗りの体験談から納得されていた。
ロングツーリングを得意とする昨今の大型ツアラーは、単調な走りの高速道であればそれなりに楽しめるが、主要幹線道路でもその車格から持て余すこともあるのが現実であり、日本の道路事情では「帯に短かし、たすきに長し」であるように思う今日この頃である。
今回のツーリングで単調な線と複雑な線を描くルートを共に楽しんだ大型ツアラーを駆る皆さんも、日本の道を気負わず自由気ままに楽しめる車格やスペックについては異口同音であった。
バイクライフは十人十色、千差万別だが、おっさんライダーにとって程よいビッグバイクは、空冷ボンネビルT100やスクランブラーのように排気量はそこそこで車格はコンパクトサイズ、車両重量は230Kg程度まで。それが、おっさんライダーの体格や体力でも気負わずに自由気ままに楽しめるように思う今日この頃である。
また、スペックや機能は二の次で空冷ボンネビルT100TMの色あせることのないアナログ感と程よい車格は、BMW R100RTやR100RSにも通ずるものがあり、おっさんライダーにとって昔ながらの素朴な乗り味は期待を裏切ることの無い良き相棒である。
空冷ボンネビルT100TMを速さより心地よさで操る楽しさは格別で、そのモノの良し悪しは時代の流行廃りに埋もれることなく浮かび上がってくるから、時が流れ歳を重ねることにより判りはじめたことを実感している次第である。