バイク屋の備忘録

VTRでも遠出を楽しんだ4月

NWJC南店の西側にある神明神社の桜が散り始めた。中仙道沿いの赤みを帯びていたしだれ桜はもう咲いただろうか、カブ110で楽しんだ方面をNWJC仕様のVTRで再び楽しむことにした。

日々雑用に追われてチョイ乗りの定番ルートを一周りするのがささやかな楽しみとなっている今日この頃だが、少し距離が延びる遠出にVTRを走らせるのは久しぶりである。

VTR 3

各務原ICから中津川ICまで自動車道を走り、居眠り気味だったVTRをエンジンからサスまで総てをフル稼働させると、VTRらしさが顔を覗かせ始める。

中津川ICからR19を走るころにはすっかり目覚めたのか、エンジンも軽く回り始めて高回転まで気持ちよく吹き上がるようになり、サスも柔らかさと踏ん張りのある軽快な足回りとなり、軽量コンパクトな車体と相俟ってNWJC仕様のVTRならではの良さが発揮されている。

2代目NWJCカブ110で立ち寄った時には赤みを帯びていたしだれ桜は、花も散り葉が広がり始めているところもあって見ごろを少し過ぎたようだ。その後、清内路から馬篭峠を越えて単調な自動車道では描くことの出来ない複雑な線を自由気ままに描きながらNWJC仕様のVTRの良さを存分に楽しむことにした。

しだれ桜

NWJC仕様のVTRは、バイク屋のバイク乗りとしての実体験から違和感や問題点を取り除いて、おっさんライダーが、チョイ乗りからロングツーリングまで存分に楽しむ為に、トータルバランスを高めた仕様のことで、メーカー出荷のスタンダードでは味わえないVTRの魅力が発揮されている。

バイクの本質よりも所有欲を煽るためにスペックや機能などを誇示することや、存在感とかOtona Motoなどと曖昧な表現はいつの時代も相変わらずだが、如何にバイクを売るかよりも、如何バイクを楽しんで充実感を得ることが出来るか、そのためにはバイク屋のバイク乗りとしての自らの実体験が何よりであると、おっさんライダーは常々そのように考えている次第である。

VTRに思うこと

清内路から馬篭峠へ向けてのワインディングを軽快に走るNWJC仕様のVTRは、NWJC独自のメンテナンスとモディファイにより深化して、メーカー出荷のスタンダーとは比べ物にならない心地よい走りでベテランライダーも納得できるだろう。

スタンダード状態のVTRをフル積載状態で走らせると安定感も無く楽しめないが、NWJC仕様のVTRが持つトータルバランスの高さと楽しさは、北海道をビッグバイクと共に走ったキャンプツーリングでその実力は実証済みである。

VTR-F

VTRは、Otona Motoなるフレーズで販売されたのが最後のようだが、シートの色や車体色がシックであれば大人のバイクなのか、Otona Motoという曖昧な表現は、いまひとつ意味不明である。

Otona Motoとは・・・、横文字のOtonaは大人を連想させるが、決して”大人”のことではないだろう。”高級感”と”高級”の違いのようなもので経験豊富な大人が楽しむにはかなり無理があり説得力に欠けている。

乗り始めてから一体感を探りながら使い慣れていくのがバイクだから、メーカー出荷の新車状態がベストであるというのが一般的であるが、バイクは生活に必要な移動の手段としての使い方と、操ることを楽しんだり旅を楽しむ道具であったりと目的に合わせて多様な使い方となるから、工業製品としては完成品でも楽しむための道具としては未完成品であるように思う。

と云うのが、バイク屋のバイク乗りとしての実体験によるおっさんライダーの見解である。

VTR 1

VTRも例に漏れず違和感などがあり楽しむための道具としては未完成だったが、VTRの良さを上手く引き出してトータルバランスを整えると、メーカー出荷のスタンダードでは決して味わえないベテランライダーも納得できる良さがある。

それは、カブからゴールドウイングまですべてに云える事であるが、バイク屋のバイク乗りとしての実体験が伴わないと、違和感に気づくことも無く、トータルバランスを整えた本来の良さを知ることも無く、その違いも判らないだろう。

メーカー出荷のスタンダード状態のVTRは、好みもあるがハンドルポジションが遠くて、エンジンのコンディションも様々で、サスは意外にヘタリが早くサイドスタンドを立てると車体が立ちすぎて不安定になり、荷物を積載してのロングツーリング等を楽めるとは思えないバイクであった。

ビッグバイクからダウンサイジングを検討しているライダーから見れば、スタンダード状態のVTRからはその良さは感じられず、所詮250はこの程度か、やはり大型でなければ、という失望感を覚えることになるだろう。

VTR 2

足つき性を優先したローダウン仕様なるものもあったが、足つきだけが良くてもハンドルが遠くては乗り続けることが苦痛になって楽しめない。でも、慣れれば云々などと云う都合の良い話を聞くことがあるが、慣れれば本当に楽しめるのか、慣れることはライダーとしての成長を意味するのか妥協することなのか疑問である。

車の場合はハンドルポジションからシートポジションまで微調整できるのが一般的となっているようだが、バイクの場合は足つきだけ良ければハンドルが遠かろうがすべて良しとして、売るがためにローダウンなる仕様が生み出されたのだろうか。

バイクは車格や排気量等のスペックを問わずライダーとの一体感を深めることにより操る楽しさがあるが、扱いきれない車格や違和感があってはバイク本来の魅力である操る楽しさは生まれない。

おっさんライダーはバイク屋のバイク乗りとして永年にわたり色々なバイクを楽しんできて、慣れることの出来る違和感と問題がある違和感は質が違う。問題と感じる違和感は慣れることができないから、原因を探り出して対策することが最善であると考えている。また、経年変化により新たな違和感を覚えることもあるが、乗り続けなければ気付かないこともあるから面白く楽しいものだ。

最近、VTRに乗るライダーからエンジンコンディションをはじめ色々と質問を受けることが増えている。NWJC仕様と比較試乗を希望される方があるが、つかみどころのない違和感を覚えてのことのようである。その違和感を取り除けばどんな感じになるのか、それを知りたいと思うのはVTRを心地よく楽しみたいライダーとしてはごく自然なことである。

いつの時代も変わらないことだが、スペックや機能などを誇示することや存在感とかOtona Motoなどと曖昧な表現は、バイクの本質よりも所有欲などを煽るためのことなのか、如何にバイクを売るかよりも、如何バイク本来の良さや魅力を伝えて充実感を提供できるかが重要なことである。とバイク屋のバイク乗りとして常々そのように考えている。

其々のバイクライフ

永年に亘りバイクライフを楽しんできたベテランライダー達も、気軽に楽しんできたバイクに距離を感じて何となく乗ることが億劫になり、楽しんでいたお気に入りのビッグバイクに乗る機会が少なくなりつつあるようだ。

ライダーの平均年齢が53歳となり寄る年波には勝てない、と実感しているライダー諸兄も少なくないと思うが、バイクは一体感により操る楽しさが魅力だから、排気量や車格に囚われず純粋にバイクライフを楽しむためにダウンサイジングするベテランライダーが増えているのも事実である。

永年楽しんできたビッグバイクには愛着もあり手放すことはできないが、カブ110や250クラスへダウンサイジングして、ロングツーリングと云うよりは自由気ままな旅気分を楽しむライダーが増えているようだ。オッサンライダーもその一人である。

バイク屋のバイク乗りとして永年バイクライフを楽しんできたおっさんライダーも、体力や気力の衰えを感じることもあり、自動車道や高速道等でどこへでも楽々と移動することはできても、一般道を走りつないで複雑な線を描いて自由気ままに楽しむ事が億劫になり、気負わず楽しめなくなったならどんな素晴らしいバイクでも無用の長物に思えて価値観が変わり始めた。

GL1800 海岸沿い

それは、昨年の東北ツーリングへゴールドウイングをタンデムで走らせて、タンデムでも使い慣れたゴールドウイングとの距離を感じることが度々あり、バイクは車とは違い車重が400Kgを超える超大型バイクを心底楽しむには体力や気力の充実が求められるからゴールドウイング適齢期を過ぎたようだ。ゴールドウイングをフラットダートでも気負わず楽しめたのは遠い昔の事であった。

GL1800 タンデム

気負わず楽しめなくなったなら、どんな素晴らしいバイクでも無用の長物に思え価値観が変わり始めたことも悟り、好奇心より始まり1500から1800へと永年楽しんできたゴールドウイングだが昨年の東北ツーリングを最後に残念ながら乗ることを終えた。

その後、今年の3月にはボンネビルT100で西日本を走り、超大型のゴールドウイングから扱える車格と使いこなせる排気量のボンネビルへダウンサイジングして比較すると、体力や気力と経験相応であれば、何ら気負うことも億劫になることも無く、純粋にバイクを楽しむことの魅力を改めて実感して安堵した次第であり、今思えばバイク屋のバイク乗りとして小恥ずかしい限りであった。

定番ルート

永年楽しんできて旧型となったトライアンフの空冷ボンネビルやBMW/R100RT等のビッグバイクは、昨今のコンピュータ制御満載のバイクでは味わえない素朴な乗り味を楽しみ、カブ110コンプリートをはじめSL230TMやVTR等はスペック的な高性能や機能を求めることよりも、ダウンサイジングにより気負うことなく速さより心地よさで、チョイ乗りからロングツーリングまで自由気ままにいつまでも楽しみ続けたいと思う今日この頃である。

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