徳島県 A・Uさん / ボンネビル800 / 12,472Km
以前にWPフロントサスを通販で購入した当店へ、エンジンメンテナンスやボンネのコンディション等について相談がありました。
走行距離は12,500キロと走行距離はあまり延びていないが、調子が悪く、色々なところで相談されるも「10年以上経つ旧い車両では、こんなもんだからやむを得ない」と云われて諦めかけていたご様子。
特別な問題が無ければ調子は良くなる事をお伝えしてメンテナンスの依頼を受けました。
後日、徳島より来店されて岐阜で一泊され、翌日にはコンディションの整ったボンネビル800に乗って、徳島へツーリングを楽しみながら帰宅の途に就かれました。
A・Uさんお気に入りのメンテナンス前のボンネビル
お客様の要望
低回転域では力がなく、頻繁にエンストして半クラッチを多用することが多くて、乗りづらいボンネだが、クラシックなスタイリングがお気に入りなので、何とか気持ち良く走れるようにできれば・・・。
診断&メンテナンス
試乗してみると、低回転では力が無く、エンスト防止のためアイドリングが高めの設定となっていました。キャブレターの問題なのか、エンジン本体の基本的な問題なのかをチェックすることから始めました。
エンジンが冷えてから、まずはバルブクリアランスを測定してみると、8バルブ中3バルブが基準値外で1バルブが最大値、2バルブが最小値と、12,500Km程度の走行距離としては不自然な測定値が出ています。
カムカバーを外してクリアランス測定中
以前に調整が行われているようですが、最小値より狭いところもあり、全体に最小値に近づける設定をされていたようです。
IN | EX | ||
---|---|---|---|
基準値 | 0.15~0.20 | 0.25~0.30 | |
測定値 | No.1 | 0.13 0.20 | 0.25 0.25 |
No.2 | 0.22 0.16 | 0.27 0.23 |
NWJCではツーリング等でボンネビルT100・スクランブラーに長年乗り続けるなかで、ストリートからツーリング等において最も安定したエンジンコンディションを得る事ができるIN側EX側のクリアランスの値を、メンテナンスによる試行錯誤とライダーとしての実体験から得ています。
EXシム交換中
INシム交換中
2次エアーはキャンセルされた状態でキャブレターのセッティングも変わっていましたが、特に問題は無いようですので、キャブレターの同調を整えてエンジン調整は終了。
フロントスプリングはNWJCオリジナルのWPフロントスプリングに換装してあるので不意な突き上げは無くなり安定感は格段にUPしたが、ワインディングをハイペースで走るとフロントタイヤの接地感がなく不安定に感じることがある、とのことでしたからステムベアリングを強化タイプに変更しました。
ステムベアリング交換中
タイヤは前後とも摩耗していたので、ついでに交換してほしいとのことでしたので、標準装着のメッツラータイヤに前後とも交換しました。
エンジン調整、ステムベアリング交換そしてタイヤ交換も終わり、後はタンクとシートを取り付けて試運転を行えば作業終了です
お客様のインプレ
低回転域からでも力強く、発進が楽になり、アクセル開けるとどこからでも加速するようになりました。
ワインディングでもエンジンがもたつくことも無く、半クラッチを使うことも無くなり、ハンドリングはフロントの接地感が増して曲がりやすく、楽しめるようになりました。
メンテナンスMEMO
コンディションに違和感を持った場合、より良いコンディションに出来るのであれば、という思いからかマフラー交換に二次エアーのキャンセルとキャブレターのセッティング変更は、よく目にする手法です。
しかし、旋回性、安定感、等ライディングにも大きく影響して、それぞれの車両の特性をほぼ決定づけているのは、足回りはもちろんですが、エンジンのコンディションによるところが大です。
スタイリングやデザインに関連したアクセサリーパーツは、其々の好みにより大いに結構な事だと思います。
しかし、エンジン本体のコンディションを整えることも無く、機能パーツであるマフラーやサスペンションの他キャブレターやインジェクションのセッティングを変更しても、決してそのバイクの持つ本来の良さを手に入れることは出来ないのです。
新旧に関わらず基本に忠実なメンテナンスを施して調子を整えて、乗れば乗る程に愛着の湧いてくるバイクを得ることから、素適なバイクライフが始まるとNorth Wing JCでは考えています。