VTR-Fで行く北海道 その1
VTR-Fと2台のBigバイク
久々の北海道をカブ110NWJCコンプリートでブラブラと走る予定だったが、スラクストン900でツーリングを楽しんでいるY.S君から、日程を合わせて一緒に行きたいと要望があり、車種を変更することにした。
北海道は初めてのY.S君を伴って、カブ110NWJCコンプリートと一緒では、かなり窮屈な思いをさせるため、使用車両について色々迷った末、VTR-Fに変更した。
250で、北海道ツーリングを楽しむのは、3年前にCBR250Rを駆って北海道ツーリングを楽しんで以来となる。
HONDAのPGM FIを搭載したCBR250Rは、キャブ仕様の250とは別物で、250だからという過去の先入観では語る事の出来ない走りを楽しめた。最新のCBR250Rは、動力性能も日本の道路事情では非力に感じるところは無く、アクセルを大きく開け、ブレーキングにシフトチェンジなどの操作を繰り返し、走らせているという充実感は、ビッグバイク以上に楽しめる面がある事を知ったのである。
バイク屋NWJCが、提唱する『速さより心地良さで走り続ける楽しさ』は、一人のバイク乗りとして、CBR250Rで北海道を走り、車格や排気量、スペックだけでは語れない、面白さを実感したことから始まった。
今回は、30数年の実績を持つ、耐久性、信頼性抜群のHONDA 90度Vツイン250に、HONDA PGM FIを搭載したVTR-FをHONDA NC750X LD、トライアンフ スラクストン900のビッグバイク2台と共に走らせて、最新250クラスVTR-Fの実力を試して見たいと思った次第である。
トライアンフ スラクストン
スラクストンは、エンジンから足回りに至るまで各部を見直して、ボンネビル用ダール製パニアケースを装着出来るよう、マフラーのハネ角を変更するNWJCオリジナルのアタッチメントを装着して、キャンプツーリングも軽快に楽しめるNWJC2014仕様に仕上げたベストコンディションのスラクストン900は、Y.S君のお気に入りである。
HONDA NC750X LD
旧知のバイク屋T.K氏は、カブで一緒に北海道を走ることを企んでいたようだが、カブからVTR-Fに変更する旨を伝えて、またの機会に・・と伝えたが、色々と思うところも有り、試乗車のNC750Xローダウンに変更して、参加したいと連絡があった。
従来の情報収集のみが目的ならお断りしたいところだが、東北ツーリングへ、いつものメンバーと一緒に出かけて、ボルトオンパーツだけでは得ることの出来ない、スクランブラーNWJC2014仕様の軽快な走りを目の当たりにしたときから、バイク屋としてバイクに乗り、実体験をすることの重要性を痛感され、今回のツーリングを仕切り直しの第一歩にしたいようだ。
NWJCオリジナルの NCシリーズ専用ダールパニアケースKitの試作をNC750X LDに装着して、ライダーの目線からチェックすることを一つのテーマとしては、と提案することにした。NCは、他にも問題点があり詳細は伝えていないが、ライダーの目線で実体験することの大切さを伝えたいと思う。
VTR-Fを突貫でスポーツツアラー仕様に
今回のツーリングは、キャンプをする予定だから、VTR-Fでは、積載性にも問題があり、柔らかい足回りにキャンプ道具等を満載しては如何ともしがたく、キャンプ道具等の荷物を積み込んでは、とてもロングツーリングを楽しむ気にはなれない、悩みのタネがあった。
スクランブラー、T100、CB1100、エクスプローラー、NC700Xなど、選択肢は色々あったが、コンディションを整えたVTR-Fのエンジン特性は過去のVTRとは別物である。11,000rpmまで心地よく吹き上がり、全域で粘りのあるトルク感は、アクセルを大きく開けても、ノンビリ流して走っても、CBR250Rとは質の違う楽しさ面白さがあるから、ロングツーリングで走らせてみたくなる魅力を感じていた。
VTR-FのVツインエンジンの良さを活かすことのできる足回りと、積載状態でも安定感があり、ロングツーリングを心地よく楽しめるスポーツツアラー仕様に仕上げて、BIgバイク2台と走っても何ら遜色なく楽しめる、欲張り仕様に仕上げる作業に取り掛かった。
6月にはCB1100とタイガー800のビッグバイク2台と能登へ出かけて、その時から、VTR-Fのスポーツツアラー仕様を考えていたので、何をやればロングツーリングを楽しめる仕様にできるか、大雑把に見当はつけていた。
スタッフの明君とは、スポーツツアラー仕様にすることについて、大雑把な打ち合わせも随分前に終わり、いつでも作業に取り掛かれる保留状態だったから、その作業に取り掛かるタイミングをいまか〃と、心待ちにしていたが、北海道ツーリングが発端となって、やっと実施となった。この機会にその実力を試し、オッサンライダーのこれからのバイクライフを考えるうえで、参考にできればと思ったのも本音である。
だから、短期間でも悩むことなく、実体験をベースとしたNWJC独自のツアラー仕様に仕上げることが出来た。
問題の足回りはNWJCご用達のWPで解決
ブレーキング時にフロントサスの沈み込みが大きく、強くニーグリップをして上体を支えていても、体重がハンドルにかかるほど姿勢変化が大きく、積載など考えられない柔らかい足回りは、如何ともしがたいものがあった。
試しにプリロードアジャスターを取り付けて、プリロードを掛けて実走したが、荒れた路面では突き上げが強くなるだけで、姿勢変化に大差は無かったので、予定通りWPプログレッシブスプリングに換装することにした。
WPプログレッシブスプリングのVTR-F用は、製品として販売されていないので、ノーマルのスプリングより硬めのスプリングを過去にテストした数種類の中から選び出すことにした。
スプリングを換装して試行錯誤するうちに、当然Fブレーキの効きに踏ん張り感が生まれ、姿勢変化も小さく、コーナーリングは積載状態でも心地よくアクセルを開けることが出来そうなコンディションとなった。あとは、ツーリングキャリアを装着して、キャンプ道具など積載状態にして前後サスのバランスを整える作業が終われば、足回りはほぼ完成に近い状態にまで出来上がって来た。
同時進行で進めていた、ツーリングキャリアの試作も出来上がり、積載状態にしてリアサスのプリロード調整を何度か繰り返し、前後バランスが良く、ワインディングでも安定感、接地感、軽快感のある仕様に出来上がり、一番の悩みを解消することが出来た。
荷物の積載方法は、安全のためにも最重要課題
ロングツーリングやキャンプツーリングを楽しむ装備は、排気量や車格に関係なく、積荷の量は同じであるから、其々の車両に見合った積荷の積載方法を充分に検討することは、極めて重要となる。
ツーリング用のバッグ等は、色々なメーカーから使い勝手の良さそうなものが販売されているが、それらを装着する車体側は、ツアラーモデル以外、精々荷かけフックがついている程度で、積荷をガッチリ固定できる車両は、少ない。というより、ロングツーリングやキャンプツーリングを楽しむための積載は考えていないのが実情だと思う。
リアキャリアは色々なメーカーから発売されているが、リアシートに荷物を積載する場合、柔らかいシートの上に積荷を固定することは難しい。上手く取り付けることが出来ても、コーナーリングではシートの端も柔らかいため、積荷が、右へ左へと安定しない状態で走る事になる。それでは心地良い走りを楽しむ事は出来ないし、危険である。
積載した荷物が車体に絡んで不幸な事故も起きているから、心地良い走りと、安全のためにも荷物の確実な固定は、特に重要な事である。特に小排気量のバイクはリアシートも小さく、積荷が不安定な状態で、積荷がシートやキャリアからズレて走っているバイクを見かけることも多く、大丈夫か・・・と、不安になる。
トップケースを取り付けている車両も良く見かけるが、タンデムをしないのであれば、リアシートに荷物を積載すれば、ハイペースでもハンドルがブレたりすることも無く、軽快に心地良い走りを得ることが出来ると思うのだが・・・。
積荷を確実に固定できる、NWJC独自のツーリングキャリアをVTR-F用に追加
バイク屋NWJCでは、ツーリングライダーとしての実体験から、NWJCオリジナルパーツとしてリアシートの座面を有効に使って確実に荷物を固定できる『ツーリングキャリア』をトライアンフやHONDA用に数種類取りそろえている。バイク屋NWJCの拘りと、ライダーとしての実体験から産まれた『ツーリングキャリア』は、ソロツーリングで心地良く走るための必須アイテムであるから、自信をもって勧めている。勿論タンデムもOKである。
今回のツーリングは、キャンプで2泊するため、テントをはじめキャンプ道具もツーリングバッグに詰め込んで、ハイペースで2台のBigバイクをリードして走ったが、ツーリングキャリアを装備したVTR-Fは、タイトコーナーが連続する峠道でもツーリングバッグがグラつくことは一度も無く、荒れた路面でも、積荷が影響することも無く、軽快で心地よい走りを損なうことはなかった。
ハンドルポジションとミラーの取り付け位置を変更
ハンドルポジションは、低く少し遠いように感じていたので、セットバックスペーサーを取り付けて少しアップライトなポジションに変更。上体が起き上がり視界も拡がり、走り続けることを楽しめるポジションを得ることが出来た。
VTR-Fのミラーは後方視界が悪いため、アダプターを装着して、荷物も邪魔にならず良好な後方視界を確保できた。
防風と防寒は、ロングツーリングには必須
オッサンライダーには、グリップヒーターはロングツーリング必須アイテムであるが、VTR用には純正アクセサリーとして、グリップヒーターは用意されていない。が、HONDA純正のスポーツグリップヒーターを使うことにした。
スクリーンやハーフカウルは、防風効果があり、疲労を軽減できるからスポーツツアラーには必須であるが、VTR-Fはハーフカウルが標準装着である。ようやく心地良くロングツーリングを楽しめる仕様が、出発1日前に出来上がった次第である。