バイク屋の備忘録

スクランブラーで東北ツーリングを楽しむ その2

バイクライフの在り方に転機

10数年前、ボンネビルが復刻して間もないころから、ボンネを駆って、阿弖流為と坂之上田村麻呂、前九年後三年の役など、東北の古代に関する色々な史跡を数年に渡り訪ね歩いた頃のことだが、鬼切部城跡を訪ねる道中で、リアサスがバタつき、曲がらないボンネを一生懸命走らせているツーリング仲間の後ろ姿を見たとき、排気量や車格、スペック等とは違う観点から、ボンヤリだがバイクライフについて考え始めたように思う。

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バイクの性能は飛躍的に向上し、技術力による速さとパワーに加え、ある程度思い通りにコントロールできたように思える、曲がり易さや扱いやすさを備えたバイクが多い。移動距離を延すツーリングは、単調な高速道を至れり尽くせりの装備が整ったバイクに跨って走れば簡単な事だが、それならバイクでなくても車の方が何かと便利である。変化に富んだ一般道を縦横無尽に走り繋ぎ、バイクの魅力を心行くまで楽しむのであれば、排気量、車格、装備、カタログスペックが云々と云うだけでは何か物足りない。

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それは、変化に富んだ一般道を縦横無尽に走り繋ぎ、日本の道をバイクならではの魅力で楽しむために、車格・装備・排気量など、数値やモノでは得るこ との出来ない、心地良さという体感性能について、意識しはじめたように思う。それ以来東北を走るたびに、何もないススキの原っぱだが、鬼切部城跡には、何 となく立ち寄る事がある。

その後、排気量、車格、装備、カタログスペックや外国製云々、ブランド云々に囚われることな く、バイ ク屋North Wing JCが取り扱っているバイクをベースに、心地良く走り続ける為のメンテナンスやモディファイを施して、バイク屋でありツーリングライダーとしての双方の目 線から、ツーリングなど実体験を数多く蓄積することが、素適なバイクライフの提案をするために、とても大切な事だと気づいた次第である。

スクランブラーにトラブル発生

ドシャ降りのなか、大館を目指して走っていると、Myスクランブラーが、ガス欠にも似た症状で突然スローダウンした。幸いにもR105と県道が交差した高架下で停まってしまったので、雨にぬれることも無く、診断することが出来た。ガソリンは、充分に入っているので、点火系統からチェックをしてみたら、プラグには火が飛んでいる。ラッキー!!ピックアップコイルではなさそう。

最初は、ついにIGコイルか?と思った。IGコイルは、もうかなり古くなっているので、万が一を想定して長距離ツーリングにはスペアを携行しているが、不発する感じも無く、ガス欠風だったので、もしや・・・ピックアップコイルだったら・・と、寒くなる思いだったが、火は飛んでいたので、再度セルを回すとエンジンが息を吹き返した。

再び走りだし、大館市街へ入る手前で、再び同じ症状が出て、スローダウン?やはり症状はガス欠に似ている。タンクキャップを開けて空気をタンクの中に取り入れると、再びスクランブラーのエンジンは息を吹き返した。その後は、同じ症状が発生することも無く、昨年同様に、霧深い樹海ラインを抜けて、無事に十和田へ到着できた。

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パンクも含みトラブルが発生すれば、それもツーリングのうちだから、それなりの対応で、凌げることは凌いで楽しみたいと思うが、電気系統のトラブルは、パーツ交換に頼るしか対応策がない場合が多く、如何ともしがたい。

昨年は集中豪雨の中をNC700Xは泳ぐように走ったが、HONDA製は信頼性も高く不安に思うことも無かった。トライアンフの場合、日本製のパーツを多用しているので、まだ安心できるが、ブランドメーカーであっても過去のブランドイメージとは程遠く、電装系をはじめトラブルが多く、信頼性、耐久性など疑問が残るメーカーも有るので、一考を要する。また、トラブルや不調には「こんなことも・・・」と、慣らされている感があるように思うが・・・。

十和田湖から岐阜への道すがら

恒例の十和田神社での祭礼へ向かう道中は必ず雨に合い、まるで禊を受けているように思うが、祭礼当日には雨が降らないから不思議だ。祭礼後の直会も終わり、此の祭礼に誘ってくださった、鹿角の知人に来年も参列する旨を伝えて、2時過ぎにレインウエアーを着ることも無く、十和田神社を後にした。

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十和田湖からR103を登り、峠付近を左折してフラットダートの林道を少し走り、展望台に立ち寄った。昨日は、雨と霧のため、よく見えなかった十和田湖を眼下に眺め、再び走り始めた。今日の宿泊地はどこになるだろう、走りながら適当に決めて走るのも、いつものメンバーと走るスタイルである。

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縄文遺跡のある、大湯の環状列石に立ち寄り、駐車場で村田さんと二人で待つこと暫らく。田沢湖をかすめて、角館へ向かう道中、R341沿いから少し入った抱き返り渓谷に、後三年の役のとき源義家に由来する抱き返り神社がある。10数年前にボンネで訪れ、御婆さんに道を尋ねたら、ミラーを杖代わりに摑み、抱き返り神社について延々と話をされたが、言葉がよく解らず、難儀したことを思い出し、来年の7月に訪ねようかと・・・。

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原付から始まりGL1800を頂点として、緩やかな放物線を描くように、再び排気量や車格を下げながら、「あがり」のバイクと決めているカブ110を駆って、いつの日か、時間に追われながら走り廻った日々を振り返り、心行くまでバイクライフを満喫できればと思う。

スクランブラー NWJC2014仕様を駆る、いつものメンバーの声

モダンクラシック=ファッションバイクと思われがちなスクランブラーをツアラーと呼ばれているバイクと同様に走らせて楽しむ事は、かなり無理があるように思うのが一般的だが、決してそうではない。

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いつものメンバーは、NWJC独自のメンテナンスとモディファイを施したスクランブラーを駆って、高速道も含み一般道を走り繋いだ東北ツーリングでは、悪天候の中でも快感速度とでも云うのか、心地好いと感じる速度域で走り続けた。ライテクで巧く乗りこなす事より、上手く使いこなすことの楽しさを知っている彼らにとって、スクランブラーは愛着の在る最高のツアラーであるようだ。バイク屋T.K氏も、その実力を目の当たりにしたようだ。

村田&Kさんのコメント

2012年9月に、村田さんとKさんの二人はスクランブラーで北海道ツーリングを楽しんでいる。走り続ける楽しさは北海道を走った時とは別物で雲泥の差があった。その時の仕様は、WPサスなど主要パーツはバイク屋T.K氏のスクランブラーとほぼ同じだから、どんな乗り味なのか想像が出来るので、きっとお疲れだったと思います。2014仕様で距離が増すごとに実感したその違いは、満足感は在ったが、疲労感は無かったとのこと。

→バイクは健康療具『スクランブラーを愉しむ その2』

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Nakaさんのコメント

天候の悪いところもあったが、心地好さだけが際立っていたとのことで、岐阜に到着してもまだ走り続けていたかったと、ことのほかお気に入りのスクランブラー2014仕様は、今回のツーリングでも御満悦のよう。

→トライアンフ スクランブラーの備忘録『スクランブラー5台で周る東北ロングツーリング 前編』

バイク屋T.K氏のコメント

悪天候の中も気負うことなく、楽しんで走り続けるいつものメンバーを見て、スクランブラーの仕上がりには、殊の外驚きだった。また、いつものメンバーとの距離感のようなものについて、バイク屋目線で、NWJCのお客さんという感覚で接してしまい、バイク仲間という感覚で接することが出来なかったことが悔やまれるとのこと。でも、バイク屋としては色々と気づくことも多く大きな収穫もあった。今後は一人のライダーとして機会があれば、いつものメンバーと共にバイクライフを楽しみたいとのこと。

→店長のバイク日誌『スクランブラーで初めての東北ツーリング その1』

お気に入りのバイクを上手く使いこなすために

NWJCのテーマである、「速さより心地良さで走り続ける楽しさ」を実感して、愛着の持てる1台であることを各々が実感できた東北ツーリングだったと思う。それは、スクランブラーに限らず、お気に入りのバイクのコンディションを整えて、バイクと人の関係が、体の延長線であるかのように使える「お箸」にも似た関係をつくる事が求められると思う。

→バイク屋の備忘録『お箸とライディング』

コンディションの悪いバイクを人がライテク等を駆使して走り続けることは、始まりは興味本位で楽しいかもしれないが、刹那的であれば興味も薄れて行くだろう。ベースとなる車両のコンディションが悪ければ、機能パーツと云われるものを数多くボルトオンしたカスタムでも結果は同じだと思う。

気負いや衒いに囚われることなく、車格や排気量、ブランド等に惑わされることなく、お気に入りのバイクを駆って目的地へ向けての道中、バイクとのコミュニケーションを繰り返せば、そのバイクの長所や短所に気づき、メンテナンスやモディファイなどで短所を抑え長所を延せば、最高の相棒となっていくだろう。

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長年バイクを楽しむ人達のナマの声に耳を傾けることは、其々の楽しみ方を知る事でもあり、一人のバイク乗りとしては大いに参考になる事が多くある。

初心者からベテランまで、バイクに関して感覚的に違和感を覚えることについては、バイク屋でありツーリングライダーとしての双方の目線から汲みとる事が大切である。

「旧いから」とか「こんなもんですよ」という、曖昧な言葉に惑わされることなく、素適なバイクライフを満喫するためのお手伝いが出来ればと思う次第です。

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