バイク屋の備忘録

スクランブラーを楽しむ 能登編

お気に入りのスクランブラーは、更に熟成中

シリンダーヘッドから突き出た二本のエキゾーストパイプは、シリンダーに絡みつくように曲がり右後方へ真直ぐと伸びてキャブトンのサイレンサーに繫がっている。その姿は60年代を思い起こさせてお気に入りである。

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所有している1968年のCB450を時々楽しんでT100などと乗り比べてみると、スタイリングこそ余分なものを省いてクラシックな雰囲気だがスクランブラーやT100はやはり現代のバイクであることを実感する。

乗り味は若干だがクラシックなところもあり、出荷状態に近いノーマル状態では手軽にチョイ乗り的なツーリングなら何ら問題は無いが、心地好くロングツーリングを楽しむ為には何かを施す必要がある事も事実である。

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ライダーとしてスクランブラーを7年7ヶ月ほど楽しんで乗り続けているが、魅力や問題点など多くを知ることが出来た。バイク屋としての拘りとヒラメキからNWJC独自のメンテナンスやモディファイを施すことにより変化していく過程から多くのノウハウを蓄積することが出来てバイク屋として拘り続ける面白さも実感している。

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熟成中のスクランブラーは速さより心地良さで走り続けることが楽しめる素適なバイクに仕上がり増々お気に入りである。

スペックは数値であり、心地よさは人其々の感性で数値化できない

スクランブラーのエンジンは、270度クランク特有の鼓動感があり、各部を見直してトータルバランスを高める事により増々走り続ける事が楽しくなった。ツーリングで常用する速度域は、一般道では60Km前後から高速道では140Km前後まで心地よく走れる仕様としたが、最高速は必要ないと思う。

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ツーリングを楽しむには其々の車両が持つスペックはあまり重要な事ではないと考えている。むしろ先入観を持ってしまう為邪魔であると思う。スペックはあくまでも数値化されたデータでしか無く、心地良さを体感するにはあまり必要だとは思わないし、スペックや情報ではバイクは楽しめない、実体験があってこそ楽しみの始まりとなる。

其々が体感する心地よさは十人十色であるからスペックとは縁が無いし必要ではない。

クラシックスタイルの魅力

最近のバイクはロングツーリングも快適に楽しめるようあれこれと色々な装備が付いているが、ハイメカやデバイスは経験の浅いライダーの技量不足を補う為のモノであると勘違いすれば、適当な操作で曲って停まる安直な四輪感覚のバイクとなり、バイクとライダーが対話する関係が希薄になり人車一体の魅力に欠けるように思う。

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クラシックスタイルのバイクをファッションバイクと捉えている人たちも多いようだが、スクランブラー等は昔と何ら変わらず余分なものをすべて省いてシンプルだからこそ良くも悪くも解りやすく、バイクとライダーが対話できるバイク本来の魅力に溢れている。不快な所と心地よいと思う所を全て受け入れるユトリがあってこそバイク本来の面白さや楽しさを知ることが出来る。

スクランブラーで定番の能登へ

スクランブラーで能登へキャンプに出掛けた。毎年砺波平野の水田に水が入る頃BMW R100RTにタンデムで北陸から能登の風景を楽しみに出掛けるのが恒例となっているが、今年は天候不順と予定が合わず、お気に入りの風景を共に楽しむ事が出来なかったのは残念である。

収穫が終わった秋は春とは違う長閑さがあり、刈取りの終った田んぼを見るのも日本的でお気に入りの風景である。ツーリングを楽しむには気候も良く、収穫の秋はバイクに乗ってフラフラと出かける回数が最も多いように思う。そんな風景にクラシックスタイルのバイクはとてもよく似合うと思っている。

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刈取りの終った夕方の田んぼを眺めながら能登を目指す。

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誰もいない真っ暗なキャンプ場に到着、早速テントを張りボンヤリとロウソクの明かりとスクランブラーを眺めながらスクランブラーの乗り味や面白みについて振り返ってみた。

東雲(しののめ)

7年半前に乗り始めたスクランブラーは、長年乗り続けているボンネビルに比べて、ハンドルポジション、シートポジション、ステップとペダルの位置などとにかく長い距離を楽しめるとは思えなかったが、メンテナンスによりエンジンの鼓動感が心地良くなったことと、スタイルがお気に入りだったから心地よく走り続けることに拘り続けてスクランブラーをいつまでも楽しみたいと思ったのが始まりだった。

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ライディングポジションが悪く、効かないブレーキと不意にバタつく足回りで、速度が上がると曲がらない、止まらないバイクだったが、何故・・どうすれば・・・と問題点を消去法によりメンテナンスやモディファイを少しずつ加えて進化させながらその過程を楽しみ、ロングツーリングを楽しめる積載力も加えて速さより心地良さで走り続ける事を楽しめるスクランブラーへと進化させて、とても愛着を持っている。

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違和感

先日、ABSの付いたバイクに乗っている人からトライアンフT100に乗り換えてブレーキの違和感について問い合わせがあったが、文明が進化した分だけ人間が退化しているというか、ある環境に慣れてしまうとそれを当たり前としてしまう怖さを感じた。

能登は、距離的に近い事もあり特別な目的地を持たずフラフラと走り周ることが好きだ。ボラ漁のヤグラが建っている海沿いの見慣れた風景で、この季節にいつも思う事がある。それは江戸時代から続く伝統的な漁を紹介したヤグラの建っている海岸沿いには本来ススキが生えていた筈だが、侵略的外来種のセイタカアワダチソウが生えている。

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昔はどこでも見ることの出来たススキが侵略的外来種のセイタカアワダチソウに駆逐されて、毒々しい黄色に覆われ始めている風景は日本中どこでも目にするが、見慣れてくると違和感を抱くことも無くなるのが一般的のようだが、電気仕掛けのデバイス付バイクも同様に思う。

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余分なモノを取り除いたクラシックスタイルのバイクは、バイクとのコミュニケーションによる感覚的な事を優先して走らせているが、最新のバイクはスペックとかハイメカとかデバイスなど頭で理解することで、安直にバイクを四輪感覚で巧く乗れている様な錯覚をして無謀な走りをしている人を時々目にすることがある。電気仕掛けのデバイスにトラブルが発生する場合、機械式とは異なり何ら前触れも無く、まるで電球が切れる様に不意に発生する怖さを体験した事があるが、電気仕掛けのデバイス等に違和感を持つことは無いのだろうか。

長年バイクを楽しんできたベテランライダー達は、この点について違和感を持ち、信頼性に乏しい海外の電気仕掛けのデバイス付バイクを敬遠して、デバイスが装備されていないバイクに乗り換えたり、スクランブラーやT100、HONDA・CB1100などクラシックスタイルのバイクを楽しむ傾向にある様に思う。

いつものツーリング仲間の多くもハイメカや信頼性に乏しい電気仕掛けに違和感を持ち、旧型に乗り換えたり、スクランブラーやCB1100など、速さより心地好さで走り続けて楽しめるバイクライフを満喫している。

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