ホンダCB1100でツーリングを楽しむ
最新のクラシックスタイルCB1100で
山陽・山陰の一般道をメインに走る定番ルートの一つを今回はCB1100に乗って出掛けた。スクランブラーやボンネビルT100を更に楽しめる一台に仕上げる為に何度となく出かけた定番ルートで、余分なものを取り除いた最新のクラシックスタイルを持つHONDA CB1100を楽しむ事にした。
CB1100は35,000Kmの走行距離で、エンジンコンディションを整えた走りは全域で力強さとHONDAらしい滑らかさがあり、足回りはフロントサスのみNWJC御用達のWPプログレッシブタイプに換装してフロントの突き上げを抑え、増々軽快に心地好く楽しめる車両に仕上がっている。
普段のチョイ乗りツーリングでは使っているが、少し距離の出るツーリングではCB1100に乗る事は無く、クラシックスタイルのバイクでロングツーリングに出掛けるのは、やはりスクランブラーとボンネビルT100ばかりだったから距離を延して、走り続けてCB1100をもっと知り楽しみたいと思った。
何故今日までCB1100で長距離を楽しむ事をしなかったのか、我ながら不思議に思うが、何故だろうと振り返ってみると、ボンネビルやスクランブラーをCB1100と同様に安定感と安心感を持って速さより心地良さで走り続けてロングツーリングを楽しむのであれば細部に亘り手を入れる必要もあり、変化の過程を体感しながら仕上げて行く面白みが魅力だったからスクランブラーやボンネビルT100をツーリングで楽しむことが多かったと思う。
試乗車について思う事
試乗車はニューモデルの新車が一般的のようだが、慣らしも終わっていないような車両で其々のバイクの良さを知ってもらうことが出来るとは思えないが、所有欲を掻き立てるのであればそれでも良いのかもしれない。
NWJCでは試乗車として用意している車両は、時間を掛けて各部を見直して、心地よく楽しむ為にベストコンディションに仕上げた車両や、手を加える事でより楽しめる提案としてのコンプリートモデル等を用意している。また愛着のあるバイクを長く乗り続けるために必要な情報の提供も大切な事であると考えている。
勿論それらの提案は、バイク屋としてツーリングライダーとしての実体験により蓄積された経験からである。モノを売ることを最優先としてライダーとして実体験の無い話は、カタログや雑誌など様々な情報による疑似体験も含み「話の話」以外何物でもないと思う。
バイク屋の目線、ライダーの目線
ボンネビルT100やスクランブラー等は、乗り始めからCB1100の様にシックリとくるところを見つけ出すには時間も掛かったが、じっくりと時間を掛けてバイクとの一体感を見つけ出す面白さがあった。ライダーとしてメカニックとして蓄積したノウハウを活かしてNWJC独自のメンテナンスやモディファイを施すことにより、変化の過程を楽しむ事ができる魅力があったからスクランブラーやボンネビルT100などを優先して楽しんできたと思し、トータルバランスが整ってSTDとは別物と思えるほどの安定感と安心感で、走り続ける楽しさを引き出したことによる愛着もある。
丁寧なメンテナンスにより仕上げたCB1100と初回点検時の消耗品交換のみの車両では、ノンビリ散歩気分の走りからハイペースの走りまで一体感のある心地良さには雲泥の差があるのは明らかである。HONDAは組み立て精度が高い分だけ丁寧なメンテナンスを求められるが、どれだけのライダーがその丁寧なメンテナンスによる違いや心地よさを実体験しているだろう。
HONDAの車両は全般に優等生だからとよく言われるが、HONDAのバイクを優等生とするなら劣等生扱いされた他のバイクはコンディションを整える事もなく、紋切型の味があるとか、個性があるとか、何かに特化している様な苦し紛れの評価が多いようにも思うが、其々に持っている本来の面白さや魅力を引き出すことがバイク屋の仕事だと私は考えている。
クラシックスタイルの魅力
夏は暑く、冬は寒く、雨が降ればズブ濡れになり、バイクで快適などと云う事はどれほども無い。不快に思う所を改善することが快適であるようにも思うが、不快な所と心地よいと思う所を全て受け入れてこそバイク本来の面白さや楽しさがあると思うが、娯楽としてとらえると全てに快適さが優先されるようだ。
最新のバイクは快適さを求めて?あれこれと色々な装備が付いているが、CB1100やトライアンフ ボンネビルT100等の昔と何ら変わらないシンプルなスタイルはバイクらしいバイクだと思う。余分なものをすべて省いたシンプルさでバイクと対話することによりライダーに多くの情報をもたらしている。快、不快、心地良い等、思う事や感じる事、それら全てを受け入れるユトリがあってこそバイク本来の面白さを知ることが出来ると思う。
クラシックスタイルのバイクをファッションバイクであると捉えている人たちも多いようだが、私はそのようには思わない。一般道でツーリングを楽しむうえでの話だが、スペックやハイメカ、ディバイスを頼りにした経験の浅いライダーに安心感を与えて不得手な事はバイクが対応するようなイメージのある最新のスポーツバイクに比べればスペック的には劣っているように思われるが、バイクからの情報の多さと一体感や操作を楽しむ面白味は、クラシックスタイルのほうが美味である。
お気に入りの定番ルートを走る
今回は台風が近づいている山口へ片道600Kmほどを一般道メインの定番ルートで走り、帰り道は台風の風雨と出くわした為、途中ルート変更して岡山県津山市で走るのを切り上げ一泊して台風をやり過ごした後を走って来たが、道は冠水したところもあり、舗装路は土砂で滑りやすく渋滞もあったが問題なく帰って来た。
能登や中国山地の山間で日本的な田園風景の中を走り、農作業をするトラクターなどを見ながら走るのも楽しみだ。そんな風景を眺めながらの時間はとても有意義に思えるが、今回は台風の影響で田園風景のある山間ルートを沢山走る事が出来なかったのは残念だった。
毎度のことだが、能登を始めお気に入りの定番ルートを何度も走る事により何となくその車両の事が分ってくるのは面白いし、走らせながら違和感に思う点についての対策が閃いたり、ツーリングを更に楽しむ為のモディファイをあれこれと考えたりと、バイク屋にとって色々な情報を実体験によって得る事は大切な事だ。
CB1100を走らせて思う事
世界の市場を席巻した元祖CB750は、4本のエキパイの後ろにオイルフィルターが出ベソの様に前に突き出ている空冷直列4気筒のエンジンレイアウトで、CB1100も同じHONDA伝統の空冷直列4気筒のデザインを受け継いでいる。車体はCB750Fに近くコンパクトサイズで取り回しも楽で好感が持てる。
バイクらしいクラシックスタイルは余分なものを省いているが、従来はライトSWがあった位置にハザードSWが標準装備されているのは高速などでの渋滞やパンクなど不意のトラブルには有効で安心感がある。
ブレーキにABSを装備しているところなどは最新のバイクと同じであるが、某メーカーのABSのように過剰に反応することも無く、舗装路に土砂の載った滑りやすい路面でもまったく違和感が無いところはNC700Xも同様で、HONDAのABSはライダーの感性が優先されているように思えるから好感が持てる。
エンジンはメンテナンスを施してSTDとしてのコンディションを維持しながらアタリがでているので全域でストレスなくHONDAらしい吹き上がりは全域で扱いやすく、走り始めると5速でOK・・・という感じで流せるところも良いし、ワインディングでもエンジンの安定したトルクと滑らかさが扱いやすさを際立たせて軽快に心地好く走れた。
Fサスは、少しペースが上がると荒れた路面などで不意に来る突き上げがあり、それを緩和するためにWPに変更したが、セッテイングにより前後サスのバランスは抜群に良く、接地感のある踏ん張りは安心感があり気負うことなく、CB1100で心地良く走り続けるロングツーリングには有効な機能パーツであることが確認できた。
シートは、足つきを優先して万人向きの仕様となっていてチョイ乗りの散歩程度なら問題はないが、長距離となるとヒザの曲りがきつくなるので、HONDAのカタログに載っている社外品のハイシートに変更してみたが・・・。
座面からステップまでの寸法はスクランブラーとほぼ同じでシックリとくるが、クラシックな雰囲気のデザインのみを優先したためか燃料タンクとの繋がり部分ではタンク巾よりシートの先端の幅の方が広く角張っているし、パイピングがシートの角の一番出っ張っているところにあり長時間走らせると不快である。新たにシートを購入して対策するより、STDのシートを加工した方が良かったのではと思う。
積載性に於いては、使い勝手の良いトップBOXを装着できるようリアーキャリアが別売されているが、後ろに長く延びるスタイルよりソロ用にリアーシートを有効に使えるツーリングキャリアを準備することにした。
CB1100は、HONDAならではの信頼感と安心感があり、速さより心地良さで走り続ける事を楽しめるツーリングとなった。亦、スクランブラーやボンネビルT100等も含み、余分なものを取り除いたクラシックスタイルは簡素であることの魅力を感じさせて、バイクの面白さを知る原点であると改めて思う。